電気代の明細にある「再エネ賦課金」。
環境のために支払っている──多くの人は、そう思っています。
けれど実際には、そのお金の多くが一部の事業者や投資ファンドに流れています。
再生可能エネルギーを広げるための制度が、いまや“安定した投資ビジネス”として動いているのです。
この仕組みは、誰かの悪意でできたわけではありません。
問題は、「環境を支える制度」がいつの間にか「構造を支える制度」に変わってしまったことです。
環境の名を掲げながら、実態は“見えない税金”のように国民に負担を広げている。
この記事では、再エネ賦課金の仕組み・使い道・問題点をわかりやすく整理し、
「誰のための制度なのか」を見つめ直します。
環境を守るはずの制度が、なぜ人を疲弊させる構造になったのか。
その答えを、あなたの電気代の中から読み解きます。
- 【1】電気代の中にある「もう一つの税金」──再エネ賦課金とは何か
- 【2】再エネ賦課金の仕組み──誰が払って、誰が得をしているのか
- 【3】再エネ賦課金はどこに使われているのか──環境より「構造」を支えるお金の流れ
- 【4】再エネマネーの裏側──“環境の名を借りた利権構造”を読む
- 【5】実質“税金”なのに説明されない──再エネ賦課金が抱える最大の矛盾
- 【6】「見えない税金」比較──再エネ賦課金はいくら払っているのか?
- 【7】家計にのしかかる構造──節電しても減らない“避けられない負担”
- 【8】なぜ改善されないのか──制度を支える“誰も損をしない構造”
- 【9】これからどうすべきか──“環境負担”を“信頼投資”に変えるための道筋
- 【10】“環境”を守るために、制度を疑う勇気を──私たちが払っているものの意味
- 参照・参考サイト
【1】電気代の中にある「もう一つの税金」──再エネ賦課金とは何か

毎月の電気代。
明細の小さな欄に「再エネ賦課金」と書かれています。
環境のために払っている──多くの人はそう思っています。
けれど、そのお金は国を経由し、発電事業者や投資ファンドに渡ります。
もとは「再生可能エネルギーを広げる」ための仕組みでした。
しかし、10年以上経った今、制度の形は少し違う方向を向いています。
再エネ賦課金がどんな目的でつくられ、
なぜ“見えない税金”と呼ばれるようになったのかを整理します。
1-1. 電気代の明細にある「再エネ賦課金」、それは何のためにあるのか
再エネ賦課金は、電気を使うすべての人が負担する“環境費”です。
2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)によって、
電力会社は再エネ発電の電気を高値で買い取る義務を持ちました。
その差額を埋めるのが、この賦課金。
つまり、電気代に上乗せされた「準税金」です。
国が集め、国民全員が支える形で再エネ事業を動かしています。
1-2. 「環境のため」と言われてきたが、実は制度の目的はもっと複雑
導入当初の目的は明確でした。
「再エネを増やし、化石燃料に頼らない社会へ」。
けれど、固定価格が20年間保証される仕組みは、
次第に投資としての魅力を生み出しました。
リスクの少ない長期利回り。
そこに外資ファンドや大企業が参入し、
“環境支援”は“安定収益モデル”へと変わっていきます。
いまでは、環境よりも「仕組みを維持すること」自体が目的化しつつあります。
1-3. 仕組みと“使われ方”のギャップ
再エネ賦課金は、名目上は環境政策。
しかし実際は、家庭・企業・行政・投資が交差する巨大な循環構造です。
支払う人は、ほぼすべての国民。
受け取る人は、一部の事業者と投資主体。
誰も悪意はないのに、構造が不透明になる。
この“見えない税金”の仕組みとお金の流れを解きほぐしていきます。
【2】再エネ賦課金の仕組み──誰が払って、誰が得をしているのか

再エネ賦課金は、電気代に含まれる“環境のための費用”とされています。
けれど、そのお金がどんな経路を通って、誰の手に渡っているのか。
正確に理解している人は多くありません。
電気代の裏側には、国と企業と投資家をつなぐ一本のルートがあります。
この章では、その“お金の流れ”を最短距離で見ていきます。
2-1. 再エネ賦課金の基本構造:家庭→電力会社→国→発電事業者
流れはこうです。
- 家庭や企業が電気料金に上乗せして賦課金を支払う
- 電力会社がそれを国(経済産業省)の「再エネ特別会計」に送る
- 国がそのお金を、発電事業者に「買取費用」として支払う
つまり、私たちの電気代は国を経由し、特定の事業者に再配分される。
環境のために払ったつもりの費用が、制度の維持費に変わる構造です。
2-2. FIT制度(固定価格買取制度)のしくみと、当初の理想
2012年、再エネを増やすために導入されたのがFIT制度。
電力会社が再エネで発電された電気を、国の決めた高値で買い取る。
その高値分を、国民が“賦課金”として負担する仕組みです。
当初は「再エネ市場を育てるまでの支援」でした。
しかし固定価格が20年間保証される制度は、
次第に“安定投資”の仕組みへと変わっていきました。
2-3. “環境支援”のはずが“投資利回りビジネス”に変わった理由
リスクの少ない20年保証。
この条件は投資家にとって理想的でした。
外資系ファンドや大企業が参入し、
太陽光発電所の建設が“環境事業”ではなく“金融商品”のように扱われるようになります。
利益を得る構造ができあがる一方で、
その原資はすべて国民の電気代。
「支える人」と「得る人」の距離が、少しずつ広がっていきました。
2-4. 終わりが見えない制度疲労──補助金依存と費用の膨張
再エネ賦課金は、もともと“期間限定の支援”のはずでした。
けれど契約が20年間続くため、負担は減らずに積み重なっていきます。
2024年度の総額は約4兆円。
もはや国家予算の一部に近い規模です。
一度始まった支出を止めることは難しく、
制度そのものが「支えられる存在」になっています。
気づけば、環境を支える仕組みだったはずの制度が、
いまは国民に支えられる構造になっている。
誰も悪くないのに、止められない。
そんな“静かな負担”が、私たちの暮らしの裏で積み重なっています。
【3】再エネ賦課金はどこに使われているのか──環境より「構造」を支えるお金の流れ

私たちが払う再エネ賦課金。
そのお金は、国を経由して再エネ事業者に支払われます。
けれど、全額が「環境のため」に使われているわけではありません。
流れをたどると見えてくるのは、
再エネの普及よりも、制度と構造を支える仕組みです。
3-1. 再エネ賦課金の使い道を追う:家計から企業へ、国を経由する資金ルート
賦課金は、まず電力会社が集め、国の「再エネ特別会計」に入ります。
そこから発電事業者に“買取費用”として支払われる。
見た目は単純なルートですが、
その途中で委託費や管理費、設備更新費が積み重なります。
国を経由するたびに、お金は“目的外のコスト”を帯びていく。
その最終的な出口は、発電事業者や投資ファンドです。
家計から出たお金は、いつのまにか市場の資金循環の一部になっています。
3-2. “再エネ特別会計”の仕組みと、実際の配分の偏り
再エネ特別会計は、一般会計とは別枠で管理されています。
国会の審議を経ずに予算が動く、準・独立財源のようなものです。
この会計では、全体の約8割が太陽光発電関連に使われています。
風力や地熱、小水力など、地域密着型の発電はごく一部。
「再エネ」といっても、実際は特定分野に偏った支出になっているのです。
国民全体が負担しているのに、
その恩恵は一部の分野、一部の地域に集中している。
構造のいびつさは、ここからすでに始まっています。
分野別の支出構成
| 発電種別 | 割合(目安) | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 太陽光 | 約80% | 設備投資が大規模・外資参入が多い |
| 風力 | 約10% | 大規模化が進むが設置制約あり |
| 地熱・小水力 | 約5% | 地域密着型、採算性低い |
| バイオマス・その他 | 約5% | 安定電源だがコスト高 |
出典: 経済産業省「エネルギー対策特別会計(令和7年度PR資料)」ほか
3-3. メガソーラー・外資ファンド・商社が得をする構造
高利回りを約束するFIT制度により、
外資系ファンドや大手商社が参入しました。
土地を確保し、太陽光パネルを並べ、長期契約で安定収益を得る。
いまや再エネ事業は「地元の環境活動」ではなく、
金融モデルとしての産業に変わりつつあります。
その裏で、地元住民が得るのはわずかな賃料だけ。
環境の名の下に、“地元が支える全国事業”という構図ができています。
“環境の名の下に”という構図は、山の中でも起きています。
メガソーラーの開発と熊の出没が増える地域の関係を追うと、
この制度が抱える本質が、より鮮明に見えてきます。
→ メガソーラーと熊の出没から見る、人と自然の“断絶線”
3-4. 地域発電が伸びないのはなぜか──小規模再エネに届かない仕組み
地域の中小事業者が再エネに取り組もうとしても、
設備投資や接続コストが重くのしかかります。
大規模事業者が優先され、地産地消型の発電は採算が取れにくい。
補助のルールも複雑で、申請や審査には時間がかかる。
結果として、地域発電は制度の“外側”に置かれがちです。
本来なら、地域に電気が循環することが最も環境にやさしく、持続的なはずなのに。
現実には、制度がそれを難しくしている。
3-5. 実際のCO₂削減効果は?環境負担とのバランスを検証
では、これだけの費用でどれほど環境効果があったのか。
政府の統計によれば、再エネ比率は約20%台にとどまります。
一方で、CO₂排出量の減少率は鈍化傾向。
理由のひとつは、老朽化した設備や森林伐採による逆効果。
もうひとつは、再エネ電力の多くが昼間限定でしか使えないことです。
つまり、莫大なコストのわりに、
実際の環境改善は限定的。
「再エネ=善」という前提だけでは、構造は語れないのです。
私たちが払うお金が、
本当に“未来の環境”のために使われているのか。
それとも、制度を動かすための“維持費”になっているのか。
この問いが、いま最も静かに突きつけられています。
【4】再エネマネーの裏側──“環境の名を借りた利権構造”を読む

再エネ賦課金は、表向きは「環境を支える仕組み」。
けれど、流れを細かく見ていくと、
その構造は“環境名目の公共事業”に近づいています。
誰かが悪いわけではありません。
それでも、制度が複雑になればなるほど、
お金の流れは見えにくくなっていくのです。
4-1. 家計→国→事業者→投資ファンドへ流れる再エネマネー
電気代に上乗せされた再エネ賦課金は、
国を経由して発電事業者に渡ります。
事業者は設備投資費を回収し、利益を得る。
その利益の一部は、出資しているファンドや商社に分配される。
こうして、家計から出たお金が最終的には
投資収益という形で資本市場へ戻る。
再エネ賦課金は、環境支援であると同時に、
資本循環の“燃料”にもなっています。
再エネマネーの流れ(家計から市場まで)
| 段階 | 段階 | 主な動き・役割 | 実際に起きていること |
|---|---|---|---|
| ① 支払う | 家計・企業 | 電気代に上乗せして再エネ賦課金を支払う | “環境のための費用”として徴収される |
| ② 集める | 電力会社 → 国(経産省) | 「再エネ特別会計」に送金 | 実質的に税に近い形で国が管理 |
| ③ 配る | 国 → 発電事業者 | 再エネ電力の高値買取・補助金 | 大部分が太陽光関連に集中 |
| ④ 利益化 | 発電事業者 → 投資ファンド・商社 | 利回り配当・投資収益 | 外資・大手中心の安定収益モデル |
| ⑤ 残る | 地方・家計 | 雇用や地代の一部利益のみ | 地域にはわずかな経済効果、家計には負担 |
出典:経済産業省「エネルギー対策特別会計(令和7年度PR資料)」/会計検査院「再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について(平成25年度)」/関西電力・丸紅電気・東京電力 各社公表資料より筆者作成
4-2. 政府、業界、地方行政が絡む“静かな利権ネットワーク”
制度を動かすのは国。
実務を担うのは電力会社と商社。
許認可や地域調整は地方行政。
この三者が絡む構造は、誰も直接の加害者ではない形で利権化します。
行政は「地域貢献」として土地を貸し、
企業は「環境投資」として設備を建てる。
そして国は「再エネ推進」として資金を流す。
それぞれに正当な目的がある。
だからこそ、誰もこの構造を止められない。
利害が一致する“静かなネットワーク”が制度を支えています。
4-3. 誰も悪意を持っていないのに、不透明になる仕組み
制度の設計者も、運用者も、受益者も、
それぞれの立場で「正しいこと」をしている。
ただ、仕組みが重なり合うほどに、
お金の最終的な行き先が分からなくなっていきます。
再エネ特別会計、下請け、協力会社、地元調整金
透明に見えるはずのものが、
層を重ねるごとに“誰も全体を把握できない構造”になるのです。
4-4. 「環境産業」が「環境名目の公共事業」に変わるとき
補助金と契約が絡み合うと、
再エネは“環境事業”から“公共事業”のような姿に変わります。
目的は環境保全のはずが、
実際には雇用・開発・投資を動かす経済システム。
環境の看板を掲げながら、
中身は経済対策としての産業構造になっていく。
こうして「環境を守るためのお金」は、
いつのまにか「制度を守るためのお金」にすり替わっていきます。
誰もが“良いことをしている”と思っている。
それでも、構造全体を見れば、
私たちは静かに環境ではなく制度そのものを支えているのかもしれません。
【5】実質“税金”なのに説明されない──再エネ賦課金が抱える最大の矛盾

毎月の電気代。
その中にある「再エネ賦課金」は、税金ではないと言われます。
けれど、誰も逃れられず、使い道も自分では選べない。
それでも“料金の一部”と呼ばれている。
名前だけが、税金ではないんです。
5-1. 形式上は「料金」、実態は「徴収」
再エネ賦課金は、電気を使う全員から自動的に集められます。
拒否はできません。
国を通して再エネ事業者に渡る。
形だけ見れば、確かに「料金」。
けれど、選択できない支払いはすでに“徴収”です。
払う人は全国民。
受け取る側は限られた事業者。
それは、もう税と呼ぶしかありません。
5-2. 「特別会計」という名の見えない箱
集められたお金は「再エネ特別会計」に入ります。
国会を通らず、経産省内で運用される仕組みです。
税金ではないから、説明も審議も不要。
けれど金額は兆単位。
支出の内訳を見ようとしても、
そこにあるのは「目的の概要」だけ。
どこに流れ、誰が受け取ったのか。
国民には確かめようがありません。
静かに積み上がる“不可視の財源”。
それが、再エネ賦課金のもう一つの顔です。
5-3. 「環境のため」という言葉の影
環境を守る。
その言葉は正しく、美しい。
でも、正しすぎる言葉は、
ときに制度の免罪符になります。
「環境のためだから仕方ない」
その一言で、検証も見直しも止まってしまう。
誰も異を唱えない。
けれど、その沈黙の裏で、
支払いは続き、構造は強固になっていく。
この仕組みを、誰がいつ説明しただろう。
どこまでが環境のためで、どこからが制度のためなのか。
私たちは知らないまま払い続けている。
再エネ賦課金は、もはや「環境費」ではない。
それは、説明されない税金。
信頼の名を借りて集められ、
透明さのないまま積み上がっていくお金。
【6】「見えない税金」比較──再エネ賦課金はいくら払っているのか?

毎月の電気代。
その中にある「再エネ賦課金」は、小さな数字に見えます。
けれど、家計全体で見ると、
それはもう“見えない税金”のひとつです。
6-1. 一般家庭が払っている金額を試算すると
標準的な家庭(年間電力使用量4,000kWh)で計算すると、
再エネ賦課金の負担は年間およそ1万5,000円前後。
月にすればコーヒー数杯ほど。
でも全国では違います。
世帯数で掛け合わせれば、
総額4兆円を超える負担。
これは、子ども1人あたり3万円を超える規模です。
小さな金額が、集まると国家予算に近づく。
それが「賦課金」という形の静かな徴収です。
6-2. 消費税・ガソリン税・電源開発促進税との比較
消費税は税率が明示され、
ガソリン税もリッターごとに表示される。
誰が、何に払っているかが分かります。
けれど再エネ賦課金は、
電気代の中に溶け込み、
明細の片隅に小さく記されるだけ。
徴収は税並み、説明は料金並み。
この中途半端な位置が、
制度をわかりにくくしています。
主要な国民負担の比較
| 名称 | 支払い方法 | 負担の透明性 | 国会審議 | 使い道の説明 |
|---|---|---|---|---|
| 消費税 | 商品・サービス購入時 | 高い | あり | 明示される |
| ガソリン税 | リッターごとに課税 | 高い | あり | 用途特定あり |
| 再エネ賦課金 | 電気料金に上乗せ | 低い | なし | 概要のみ |
出典: 財務省「税制概要(令和6年度)」、経済産業省「再エネ特別会計」資料より筆者作成
6-3. 税金ではないのに“公共コスト”として扱われる現実
政府の統計では、再エネ賦課金は「税外収入」として整理されています。
しかし、公共事業やエネルギー政策の資金として使われる。
つまり実質は、税金に準ずる公共コストです。
問題は、誰がどれだけ負担しているかを、誰もきちんと説明していないこと。
「電気を使う人=国民全員」が対象なのに、その全貌が共有されていません。
6-4. 透明性のない「第二の消費税」としての再エネ賦課金
いま、私たちは気づかないまま
もう一つの“全国共通負担”を背負っています。
消費税のように議論されず、所得税のように累進もなく、
ただ毎月、自動で引き落とされていく。
払うのは全員、
恩恵を受けるのは一部。
その構造が続く限り、制度は“正しい顔をした不公平”になります。
私たちは、いつの間にかもう一つの税を支えている。
名前も、説明も、国会での議論もない税。
それが「再エネ賦課金」という仕組みです。
【7】家計にのしかかる構造──節電しても減らない“避けられない負担”

電気を節約しても、電気代は下がらない。
その理由の一つが、再エネ賦課金です。
努力しても減らせない。
削ることも、避けることもできない。
それが、この制度の厄介なところです。
7-1. 電気代上昇と再エネ賦課金が重なる“ダブルパンチ”
近年、電気代は燃料高騰で上がり続けています。
そこに再エネ賦課金が重なれば、負担は加速する。
2025年度の標準家庭の電気代は、
10年前よりおよそ2割以上高くなりました。
節電しても請求額が下がらないのは、
使用量よりも“制度的コスト”が増えているからです。
努力が報われない構造。
それが、家計を静かに圧迫しています。
7-2. 努力では減らせない「固定的支出」としての現実
再エネ賦課金は、電気を使う限り必ず発生します。
節電をしても、契約を変えても、逃げ場はない。
だから多くの家庭では、
「節約しても変わらない出費」として諦められています。
その無力感が、
制度への信頼を少しずつ削り取っていく。
仕組みが暮らしを支配する瞬間です。
7-3. 高所得層ほど得をし、低所得層ほど負担する“逆再分配構造”
再エネ事業に投資できるのは、
資金と土地を持つ企業や富裕層です。
一方で、賦課金の負担は所得に関係なく均一。
結果として、
高所得層が投資で利益を得て、
低所得層が電気代で支える構図が生まれています。
環境を支えるはずの制度が、
社会の格差を静かに広げている。
誰も意図していないのに、
「支える人」と「支えられる人」が分かれてしまうのです。
7-4. 「環境を支えるはずのお金」が暮らしを圧迫している
本来、再エネは未来のための投資でした。
けれど、その費用が今を生きる人の生活を削っている。
子どもの学費、食費、光熱費。
家計簿の中にある“見えない固定費”として、
再エネ賦課金は静かに居座り続けています。
支払うことが悪ではない。
ただ、そのお金が本当に未来につながっているのか。
そう問う権利は、誰にでもあるはずです。
節約しても変わらない出費。
誰も止められない制度。
それでも私たちは払い続けているんです。
【8】なぜ改善されないのか──制度を支える“誰も損をしない構造”

再エネ賦課金の問題は、もう何年も前から指摘されています。
それでも制度はほとんど変わっていません。
なぜか。
理由は単純で、そして厄介です。
この仕組みでは、誰も明確には損をしないからです。
8-1. 政府・電力業界・地方行政がつくる三角関係
制度の中心にいるのは、国・企業・自治体。
国は「環境政策を進める」という成果を得る。
企業は「安定収益」を得る。
自治体は「地域振興と雇用」を得る。
それぞれが、正しい理由で動いています。
だからこそ、この三角関係は崩れにくい。
善意が結びついた構造ほど、強固になるのです。
8-2. “再エネ=善”のイメージが批判を封じる
再エネを批判することは、
環境に逆らうことのように受け取られがちです。
けれど問題は、再エネそのものではなく、
それを支える制度の形です。
「環境のため」という言葉が、
制度の不透明さを覆い隠している。
結果として、誰も声を上げづらい空気が生まれています。
8-3. 利権と制度が結びつくと、なぜ構造が動かなくなるのか
制度の中でお金が回り始めると、
それを止めること自体がリスクになります。
国は雇用を守りたい。
企業は契約を維持したい。
自治体は地域の収入を失いたくない。
それぞれが少しずつ“続ける理由”を持ってしまう。
気づけば、制度そのものが自走する仕組みになっています。
もはや誰かが動かすものではなく、
動かすことをやめられない仕組みになっているのです。
8-4. 制度疲労を超えるには「透明化」と「責任の所在」が必要
この構造を変えるには、
新しい補助金や新制度では足りません。
必要なのは、誰がどこまで責任を持つかを明確にすること。
そしてもうひとつ。
お金の流れを見える形にすること。
「どこから来て、どこへ行ったのか」
それを誰でも確かめられる状態をつくることが、
信頼を取り戻す最初の一歩です。
再エネ賦課金の問題は、誰かの悪意では生まれていません。
むしろ、善意の積み重ねが制度を固くしている。
それでも、変えなければならない。
環境を守るためではなく、
制度を信じられる社会にするために。
【9】これからどうすべきか──“環境負担”を“信頼投資”に変えるための道筋

制度を壊したいわけじゃない。
ただ、いまのままでは信じ続けるのが難しい。
ここまで読んでそう感じた人は、多いと思います。
再エネ賦課金を立て直すには、
新しい仕組みを作ることよりも、
「信頼できる形に戻す」ことが大事です。
9-1. FITからFIPへ──守る制度から、育てる制度へ
かつての固定価格買取制度(FIT)は、再エネを育てるための“温室”でした。
けれど、もう苗は育ちました。
これから必要なのは、風に当てながら自立させる仕組み。
市場で競い、技術で評価されるFIP(プレミアム制度)に移す。
それは「支える」から「育てる」への転換です。
お金ではなく、仕組みで伸ばす時期に来ています。
9-2. 見えることが、信じられること
人は、見えないものを信じ続けることができません。
再エネ特別会計も同じです。
誰がどこに、いくら払っているのか。
それが見えれば、納得も生まれる。
“信じてください”ではなく、
“見てください”に変える。
それが、信頼の第一歩です。
9-3. 「支える人」と「支えられる人」をつくらない
負担は、静かに分かれています。
支えられる人と、支える人。
本来、環境はそのどちらのものでもないのに。
だからこそ、
家庭・企業・行政が同じテーブルで
「どこまで支えるのか」を決め直すことが必要です。
公平とは、平等ではありません。
納得できる形で分け合うことです。
9-4. 環境よりも、まず“信頼”を取り戻す
環境は、信頼の上にしか成り立ちません。
制度が信じられなければ、
どんな理想も続かない。
再エネ政策は、
“環境を守る仕組み”ではなく、
“社会の信頼を支える仕組み”であるべきです。
私たちが本当に守りたいのは、
森でも、風車でもなく、
「信じられる社会」そのものかもしれません。
制度を疑うことは、壊すことではない。
もう一度、まっとうに機能させようとすることです。
環境を思う気持ちも、
家計を守りたい気持ちも、
どちらも同じ場所から生まれている。
だから、どちらかを犠牲にしなくていい。
その仕組みをつくるのが、これからの課題です。
【10】“環境”を守るために、制度を疑う勇気を──私たちが払っているものの意味
毎月の電気代に小さく書かれた「再エネ賦課金」。
それは、環境のための負担のようでいて、
制度をどう信じるかを問う“静かなメッセージ”でもあります。
この仕組みは、はじめは正しかった。
けれど、いつの間にか目的よりも仕組みが主語になった。
環境を守る力が、制度を守る力にすり替わっていった。
本当に守るべきは、
森や風車よりも、信じられる仕組みそのもの。
お金の流れが見え、責任が明確で、
誰もが納得できる制度であれば、人は迷わず支えるはずです。
電気代の数百円は、ただの負担ではない。
それは「未来をどう支えるか」という、私たち一人ひとりの選択です。
編集後記
この記事を書こうと思ったのは、
電気代の明細にある「再エネ賦課金」という数百円を見たときでした。
環境のために払っているはずなのに、
どこか釈然としなかった。
調べるうちに気づいたのは、
問題はお金の額ではなく、“見えなさ”にあるということ。
誰が得て、誰が支えているのかが分からない仕組みは、
どんな理念も弱らせてしまう。
制度を疑うのは、壊すためではないです。
信じたいからこそ確かめること。
その視点を、これからも大切にしていきたいと思います。
編集方針
- 再エネ賦課金を「環境のため」とだけ捉えず、制度としての実態と構造的課題を可視化する。
- “批判”ではなく、制度疲労と信頼の欠如を構造的に指摘する。
- 「第二の税金」としての側面を、生活者の視点とデータの両面から検証する。
- 政策・事業・家計の三層構造を整理し、誰が負担し誰が利益を得ているかを明確化する。
- “環境=善”という固定観念に流されず、公正・透明・納得の仕組み設計を提案する。
- 専門的な内容を、専門用語に依存せず誰でも理解できる言葉で伝える。
- 読後に「批判」ではなく「再設計の必要性」を感じてもらうことを目指す。
参照・参考サイト
- 再エネ賦課金とは?仕組み・計算方法や単価の推移を解説 – 関西電力
https://sol.kepco.jp/useful/taiyoko/w/saienefukakin/ - 3 検査の状況|再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について – 会計検査院
https://report.jbaudit.go.jp/org/h25/ZUIJI6/2013-h25-Z6021-0.htm - 令和7年度 経済産業省予算のPR資料一覧:エネルギー対策特別会計
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/pr/energy.html - 再エネ賦課金の仕組み・計算方法やメリット・デメリットを徹底解説 – 丸紅電気
https://denki.marubeni.co.jp/column/renewable_energy_charge/ - 再エネ賦課金とは?その目的と使いみちとは – エコプラネットネットワーク
https://www.ecopu.net/306/ - 電気料金の「再エネ賦課金」とは?役割や仕組みをわかりやすく解説 – CDエナジー
https://www.cdedirect.co.jp/media/c1-electricity/c12-e-howto/3409/ - 賦課金等について|再生可能エネルギーの固定価格買取制度 – 東京電力
https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/institution/impost.html



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