ドミノ・ピザ(以降ドミノ)の「お持ち帰り半額」終了。ニュースの見出しだけを見ると、なんだか大きな値上げのように感じられますよね。持ち帰りをよく使っていた人ほど、「これからは損になるのでは」と思うのは無理もありません。
ただ、今回の改定は「もとの商品価格が下がり、持ち帰り割が50%から30%に変わる」というセットの話です。
ピザ自体の値段が安くなるぶん、必ずしも「半額じゃなくなる=大値上げ」とは限らないのです。
半額という言葉が消えるインパクトは強いですが、その裏にあるのは、単純な値上げではない新たな「価格戦略」です。
なぜドミノは、あえて一番の看板だった“半額”を手放したのか。数字の変化を追いながら、その狙いを読み解いていきます。

【1】ドミノの半額終了は本当に値上げなのか

持ち帰り半額の終了は、普段から持ち帰りを利用していた人にとって、真っ先に「値上げ」の二文字が浮かぶニュースです。ただ、今回の価格改定は商品価格の値下げとも連動しているため、「半額が終わる=すべて改悪」とは言い切れません。
持ち帰り半額終了だけだと改悪に見える
これまでドミノにあった「持ち帰りなら半額」という仕組みは、パッと見てすぐ伝わる圧倒的なお得感がありました。それだけに、今回の変更はどうしてもマイナス面が目に飛び込んできます。
・割引率が「50%オフ」から「30%オフ」へ下がる
・「持ち帰り=ものすごく安い」という特別感が薄れる
・ニュースでは、宅配の値下げよりも「半額終了」ばかりが報じられる
これらを掛け合わせれば、持ち帰り派の人が「実質的な値上げじゃないか」と肩を落とすのはごくあたりまえのことです。
ドミノの価格改定では商品価格も変わる
一方で、見落とされがちなのが「宅配価格の値下げ」です。今回の改定では、持ち帰り割引の縮小と同時に、以下の変更が行われます。
・商品価格が平均600円値下げされる
・持ち帰り割が半額から30%オフになる
・結果として、宅配と持ち帰りの「価格差」がぎゅっと縮まる
持ち帰りの割引率だけにスポットを当てれば、たしかに値上げです。しかしピザ全体の価格表でみると、これまで開きすぎていた「宅配」と「持ち帰り」の価格バランスの調整、というのが実際のところです。
価格改定は値上げか値下げかだけでは見えない
だからこそ今回の改定は、「結局、値上げなの? 値下げなの?」というシンプルな問いに一言で答えるのが難しくなっています。
持ち帰り派にはお得感が減ったように映り、宅配派には安くなるチャンスが生まれる。さらに持ち帰りであっても、「安くなった基本価格からの30%オフ」で計算すると、商品によっては以前の半額と数十円しか変わらないケースすら出てきます。
ニュースの見出しだけでは、自分の注文が高くなるかまではわかりません。実際には、選ぶメニューやサイズ、持ち帰りか宅配かによってレジの合計額は変わります。注文する直前、割引率の数字よりも「最後に表示される金額」を眺めてみると、損なのか得なのかが見えやすくなります。
音声で聴く
この記事の内容を、Podcast形式の動画にもまとめました。ドミノ・ピザの持ち帰り半額終了を、単なる値上げではなく、宅配価格・持ち帰り割引・外部デリバリーとの関係から整理したい方はこちらから聴けます。
【2】ドミノの価格改定で変わる4つのこと

今回の改定は、どうしても「持ち帰りがいくらになるか」に目を奪われがちです。しかし実際には、価格の値下げ、持ち帰り割の変更、商品のリニューアル、そして「価格のわかりやすさ」の見直しという4つがワンセットになっています。全体のメニュー表がどう塗り替わるのか、ざっと押さえておきましょう。
宅配価格は平均600円値下げされる
今回の目玉ともいえるのが、価格の値下げです。
これまでドミノの宅配は、持ち帰りの「半額」があまりに強烈だったぶん、どうしても割高に見えてしまう弱点がありました。ベースの価格をぐっと下げることで、「宅配=高い」というハードルを下げ、公式の宅配を選んでもらいやすくする狙いがうかがえます。
ただ、ひとつ気をつけたいのは「全品が一律で600円引きになるわけではない」という点です。実際の値下げ幅はメニューやサイズごとにバラつきがあるため、お気に入りのピザがいくらになったかは個別のチェックがいります。
持ち帰り割は半額から30%オフへ変わる
そして持ち帰り派にとって一番のニュースが、この割引率の変更です。
「半額」が終わり、これからは「30%オフ」になります。数字だけを見れば、間違いなくお得感はスケールダウンします。
ただ、先ほどの通り「もとの価格(定価)」そのものが下がっています。そのため、新しくなった定価からの30%オフで計算すると、お会計のトータルは選ぶピザによって見え方がかなり変わってきます。ここも「30%」という割合ではなく、最終的な支払い金額で見るのがポイントです。
チーズ増量など商品力も強化される
値段のいじり方だけでなく、ピザそのものにもテコ入れが入ります。
たとえば、チーズの増量。単に「割引を渋くした」と受け取られないよう、ピザを食べたときの満足度を底上げする工夫が盛り込まれています。価格のバランスを整えると同時に、ピザとしての価値もしっかり伝え直そうとする企業の意志が見えます。
クーポンや追加料金の複雑さも見直される
これまでの宅配ピザは、「結局いくら払えばいいのか」が直感的にわかりにくいジャンルでした。
「このクーポンを使えば○%オフだけど、生地を変えるとプラス○円で……」と計算しているうちに、注文する前にイメージしていた金額と、最後の決済画面で出る請求額が食い違って、首をひねった経験はないでしょうか。
今回の改定には、そうした注文時のややこしさを一掃し、パッと見で支払額がわかるようにする目的も含まれています。
価格の透明性は信頼回復の文脈でも見たい
お金を払うときの「納得感」は、単にピザが数百円安いかどうかと同じくらい、ユーザーの心理に響きます。
・割引されたあとの金額がパッとつかめるか
・追加料金の条件が、注文する前にすぐわかるか
・「わざわざ店舗へ取りに行く手間」に見合った安さになっているか
注文の最後に「えっ、なんか思ってたより高いな」と感じさせてしまうと、次からの注文は遠のきます。この“価格の風通しを良くする”というアプローチは、ドミノがユーザーの信頼を繋ぎ止めるための大切な一手です。
商品ごとの価格変動は個別確認が必要
ここまで見てきたように、今回の改定は「宅配と持ち帰りのバランスを調整した」ような変化です。そのため、自分が得をするか損をするかは、頼むメニューによって分かれます。
「値上げだ」という言葉だけで判断せず、自分がいつも頼むサイズ、好きな生地、手持ちのクーポンを打ち込んだあとの「トータル金額」を確認してみてください。
| 項目 | 変更点 | 読者が見るべきポイント |
| 価格 | 平均600円値下げ | 宅配で頼むと、以前より安くなる可能性がある |
| 持ち帰り割引 | 半額から30%オフへ | 割引率は減るが、実際の「差額」はメニュー次第 |
| 商品リニューアル | チーズ増量などを実施 | 値段だけでなく、ピザの満足度も底上げされている |
| クーポン・追加料金 | 仕組みをシンプルに | 注文の途中で「思っていた金額と違う」が起きにくいか |
| 価格の透明性 | わかりやすい料金表示へ | 最後の決済ボタンを、納得して押せるか |
(※出典:ドミノ・ピザ公式発表資料をもとに筆者作成)
【3】持ち帰り半額が生んだ大きな価格差
ドミノの「お持ち帰り半額」は、単におまけがつくような割引ではありませんでした。宅配と持ち帰りのあいだに、くっきりと価格の境界線を引くシステムだったのです。
だからこそ、その看板を下ろすというニュースは、金額以上に「お得な時代が終わってしまった」という強い喪失感をユーザーに与えています。
持ち帰り半額は宅配価格を基準にした割引だった
これまでの半額システムは、まず「高めの宅配価格」という基準があり、そこから一気に50%を引くという力技でした。
「お店まで取りにいけば、ガクンと安くなる」。そのコントラストがあまりに鮮烈だったため、ユーザーの中で「持ち帰りを選ぶ理由は、なによりも価格」という前提がすっかり出来上がっていたわけです。
「半額」という言葉の強すぎるマジック
「半額」という日本語には、電卓を叩くまでもなく人を納得させるパワーがあります。
ほかのチェーンと細かく見比べなくても、「半額なら間違いなく一番安いはずだ」と直感的に信じさせてしまう。それほど強い魔法がかかっていたからこそ、いざ「30%オフ」に数字が置き換わると、実際の差額以上に「すごく高くなった」という心理的なブレーキがかかります。
旧価格では宅配と持ち帰りの役割が極端だった
これまでの価格表を振り返ると、2つの注文方法の立ち位置はきれいに分断されていました。
・宅配:家まで来てくれて最高に便利。でも、ちょっと高い。
・持ち帰り:取りに行くのは面倒。でも、めちゃくちゃ安い。
「ちょっとの手間を差し出せば、劇的に得をする」という納得感が、持ち帰り客の足を店舗へと向かわせていた一番の原動力でした。
「1枚から半額」が日常のハードルを下げていた
もうひとつ見逃せないのが、この割引が「おひとりさま」や「普段の夕食」にフィットしていた点です。
まとめ買いの条件がないため、仕事帰りに「今日は疲れたから1枚買って帰ろう」が気軽にできる。ピザ=パーティーのもの、という昔ながらのイメージを壊し、ドミノを日常食のポジションに押し上げた功労者が、この持ち帰り半額でした。
30%オフへの変更は、見た目ほど差額が開かない
では、魔法が解けたあとの「実額」はどうなるのでしょうか。
ここでは、もとの価格が平均600円下がったと仮定して、これまでの半額と、新しい「定価からの30%オフ」をシミュレーションしてみます。
| 商品例 | 旧デリバリーM価格 | 旧持ち帰り半額 | 仮に600円値下げ後の30%オフ | 差額 |
| アメリカン | 2,180円 | 1,090円 | 1,106円 | +16円 |
| マルゲリータ | 2,580円 | 1,290円 | 1,386円 | +96円 |
| クワトロ・ハッピー | 3,080円 | 1,540円 | 1,736円 | +196円 |
| クワトロ・2ハッピー | 3,580円 | 1,790円 | 2,086円 | +296円 |
| クワトロ・ジャイアント | 3,680円 | 1,840円 | 2,156円 | +316円 |
| クワトロ・ミートマックス | 4,280円 | 2,140円 | 2,576円 | +436円 |
(※宅配価格が600円下がった場合のシミュレーション。実際の価格は商品・サイズにより異なります)
表をみてみると、ひとつの事実が浮かび上がってきます。
アメリカン(+16円)やマルゲリータ(+96円)といったお手頃なゾーンでは、半額終了という言葉のショックに反して、実際には数十円しか上がっていません。「50%が30%になった」という割合のインパクトに比べると、負担はそこまでの値上げになっていないことがわかります。
新価格は持ち帰り客の納得ラインを探っている
つまり今回の改定は、持ち帰り客を冷遇するためではなく、「彼らが離れないであろう、現実的な落としどころ」を探り当てにいった変化と言えます。
圧倒的なお得感という名の「魔法」は消えました。それでも、持ち帰りのほうが宅配より明らかに安い、という事実は変わりません。
これまで持ち帰り側に偏りすぎていたシーソーの傾きを、ユーザーの納得感を壊さない範囲で水平に戻そうとする。それがこのシミュレーションから見えてくる、新価格の輪郭です。
【4】外部デリバリーで価格の見え方が変わった

Uber Eatsなどが普及したことで、私たちはピザを頼むとき、ドミノの公式サイトだけを見て完結しなくなりました。アプリを開けば、ピザ本体の値段、配達の料金、各種手数料がバラバラに並んでいます。この「内訳が丸見えになる」という変化が、宅配ピザの価格競争をまったく別のものに変えてしまいました。
Uber Eatsでは「ピザ代」と「配達代」が分かれて見える
外部のデリバリーアプリで注文画面を進むと、お会計はこんなふうに分解されて表示されます。
・マルゲリータM:1,500円
・配達手数料:450円
・サービス料:150円
・合計:2,100円
こうして項目が分かれると、注文する側の頭の中では自動的に「ピザそのものは1,500円なんだな」「運んでもらうのに600円かかるのか」という仕分けが起きます。
もしドミノ公式の宅配価格が「配達料込みで2,100円」とだけ書かれていた場合、最終的な支払額はまったく同じなのに、受ける印象はガラリと変わるのです。
「お店と同じ価格」が比較のルールを書き換えた
さらに昨今のUber Eatsでは、アプリ上のメニュー価格を店頭のテイクアウト価格と同じにする「お店と同じ価格」という見せ方が広がっています。
これが普及したことで、ユーザーの比較軸は根底からひっくり返りました。
まずは「ピザ本体の安さ」で各チェーンを横並びに競わせ、そのあとで「ここに配達料を足しても、まだ公式より安いか?」を計算するようになったわけです。
競合の「店同価」シフトが公式サイトの枠を壊す
ピザハットなどのライバル企業がこの見せ方に追従すると、画面上でのシビアな比較競争が加速します。
スマホのなかで、各社の公式価格と、Uber上の「本体価格+運賃」がごちゃ混ぜになって並べられる。もはやドミノにとってのライバルは「他社の公式サイト」ではなく、「外部アプリ上に並ぶ、全飲食店の価格の足し算」になりました。
「コミコミ価格」と「本体+送料」の心理的なちがい
最終的に財布から出ていくお金が同じでも、レシートの見え方ひとつで人間の納得感は上下します。
・送料込みの価格:ピザそのものが「高い食べ物」に見えてしまう
・本体+送料の表記:ピザは安い。あとは「運ぶ手間代」を払うかどうかの判断になる
「自分が今、何に対してお金を払っているのか」がクリアなほうが、現代のユーザーは納得して決済ボタンを押してくれます。メニュー価格そのものだけでなく、この“見せ方の心理戦”が注文の行方を左右しています。
ドミノ公式の宅配は、かつてなく比べられている
こうして選択肢が手のひらに揃った結果、公式の宅配はかつてないほど厳しい目にさらされています。
| 注文する入り口 | 画面に表示される価格の正体 |
| ドミノ公式(宅配) | すべてが合算されたデリバリー価格 |
| ドミノ公式(持ち帰り) | 割引が引かれたあとのピザ単体価格 |
| 外部アプリ(Uber等) | ピザ本体 + 配達料 + 手数料 |
この3つをスマホで行ったり来たりしながら、ユーザーは「ドミノにするか」だけでなく、「ドミノを“どこから”買うか」を吟味しています。
「Uber対策」はあくまでひとつの仮説
ただ、ここで気を付けておきたいのは、今回の改定を「ドミノがUber Eatsに対抗した決定打だ」と決めつけるのは行き過ぎだという点です。
公式が発表しているのは、あくまで自社のブランド価値の見直しやメニューの改定です。外部アプリとのせめぎ合いは、現在のデリバリー市場の構造から逆算した「裏の施策の仮説」としてみておくくらいでいいです。
断定はできません。ただ、公式サイトの外側ですさまじい価格比較が行われている時代に、それに適応しようと価格表を組み替えた動きとして眺めると、この改定はものすごく腑に落ちるのです。
【5】公式宅配と持ち帰り+外部配達料を比べる
ここでもうひとつ検証しておきたいのが、「公式デリバリー」vs「持ち帰り価格+外部アプリの配達料」の勝負です。
以前の「半額」時代は持ち帰りが圧倒的に安かったため、外部に高い配達手数料を払ってでも「持ち帰り代行」を頼むほうが公式より安くなる、というねじれ現象が起きていました。新価格では、この隙間がかなり埋まります。
旧価格では「持ち帰り+外部配達」のほうが安く見えやすかった
以前のシステムは持ち帰りの値引き幅が大きすぎたせいで、外部の配達コストを乗せても公式デリバリーの定価を下回る余地がありました。
言い換えると、ドミノが配送料を多く取りすぎていた、とも言えます。
たとえば、旧デリバリー価格2,580円のマルゲリータM(持ち帰り半額で1,290円)を例にしてみます。
ここに外部アプリの配達料が1,200円かかったとしても、合計は2,490円。なんと公式に運んでもらうより、外部に「おつかい」を頼んだほうがまだ90円安く見えてしまっていたのです。
新価格では、外部デリバリーを使う優位性が薄まる
これが新価格(デリバリー1,980円 / 持ち帰り30%オフで1,386円)に変わると、景色が一変します。
持ち帰り価格(1,386円)に外部アプリの配達料を足したとき、
・配達料が500円なら:合計1,886円(外部アプリ経由がお得)
・配達料が800円なら:合計2,186円(公式デリバリーがお得)
旧価格のころは「配達料が1,000円を超えても外部アプリのほうが安い」というメニューがざらにありましたが、新価格ではその損得の「分岐点」がぐっと下に引き下げられます。
公式宅配との分岐点は「外部の配達料」で決まる
では、外部アプリの配達料が「いくら未満なら」公式デリバリーより安くすむのでしょうか。
ここでもデリバリー価格が平均600円下がったと仮定して、旧価格と新価格の「損得の分かれ目」を並べてみます。
| 商品 Mサイズ | 旧モデル:外部配達料がここ未満なら「外部経由」が安い | 新モデル:外部配達料がここ未満なら「外部経由」が安い |
| アメリカン | 1,090円未満 | 474円未満 |
| マルゲリータ | 1,290円未満 | 594円未満 |
| クワトロ・ハッピー | 1,540円未満 | 744円未満 |
| クワトロ・2ハッピー | 1,790円未満 | 894円未満 |
| クワトロ・ジャイアント | 1,840円未満 | 924円未満 |
| クワトロ・ミートマックス | 2,140円未満 | 1,104円未満 |
(※デリバリー価格が600円下がった場合の試算)
数字を見比べると一目瞭然ですね。
以前は「配達料に1,000円払っても外部アプリがお得」だったゾーンが、新価格ではおおかた「500〜800円台」で公式デリバリーに逆転されます。このハードルが下がったぶん、ユーザーはわざわざ外部アプリを経由せず、素直に公式デリバリーを選びやすくなります。
ただし、公式で支払い登録をしてない場合は、多少高くても外部アプリに流れることもありえます。
手数料は条件で変動する。見るべきは「傾き」
ただ、実際にアプリを日常づかいしている方ならご存知の通り、外部デリバリーの最終支払額は固定されていません。
・雨の日やピークタイムは手数料が跳ね上がる
・お店からの距離で配達料が変わる
・「2枚以上頼むと送料が分散されて1枚あたりが安くなる」といった現象が起きる
そのため、1円単位の厳密な最安値をここで出し切ることは不可能です。
ただ、私たちがざっくり頭に入れておけばいいのは、「外部アプリ経由でお得になるボーダーラインが、今回の改定でかなり厳しくなった」という事実です。以前のように「とりあえずUberでドミノの持ち帰りを代行させれば得」という裏ワザは、もう通用しにくくなっています。
【6】ドミノの価格改定は「注文経路の再設計」ではないか

ここまで紐解いてくると、今回の改定が「持ち帰りの値上げ」という狭い話でおさまらないことが見えてきます。 ドミノが本当にやりたかったのは、公式デリバリー、持ち帰り、そして外部アプリという3つの入り口の交通整理。つまり、「ユーザーにどのルートから買ってもらうか」の再設計です。
「持ち帰り値上げ」ではなく「選ばせ方の変更」
半額という看板が外れるため、持ち帰り客からすれば間違いなく値上げにみえます。
ただ、割引そのものは「30%オフ」としてしっかり残ります。そのうえで商品価格を下げたわけですから、2つのルートの価格差はこれまでよりずっと縮まりました。 これは持ち帰りの魅力を削ぎ落としたというより、「持ち帰りにばかり偏りすぎていたお得感を、デリバリー側へ少し引き戻した」と捉えるのが自然です。
公式発表にある「安売りブランドからの脱却」
ドミノの公式発表でも、単なる価格改定ではなく「ブランドのリニューアル」という言葉が強調されていました。
「とにかく安さで選ばれるピザ屋」から、ピザの美味しさや注文のしやすさも含めて「トータルで選ばれるブランド」へ変わりたい。その大きな文脈のなかに、今回の“半額終了”も組み込まれています。
自社の宅配網は、価格差が開きすぎると機能しない
ドミノにとって最大の強みであり、同時に重たい固定費でもあるのが「自前の配達バイクとドライバー」です。
せっかく自社で宅配網を維持しているのに、「取りに行けば半額だから」とか「Uberに頼んだほうが安いから」と、デリバリーが敬遠されてしまっては宝の持ち腐れになります。 自社のインフラは、公式デリバリーで注文が入って初めて利益を生むシステム。デリバリーの価格を下げて持ち帰りとの差を縮めた背景には、この自社網を正しく稼働させたいという切実な事情が透けて見えます。
外部デリバリー時代への適応
スマホひとつでUber Eatsや出前館が呼べる今、ユーザーはかつてないほどシビアに「購入ルート」を天秤にかけています。
公式の宅配にするか、自分で取りに行くか、外部アプリに代行させるか。選択肢が並んだとき、一番の決め手になるのはやはり「価格差」です。 公式には明言されていませんが、この比較されやすい外部デリバリー時代に自社の価格表を最適化させた結果が、今回の新モデルなのだと考えられます。
値段の上下より「どこから頼むか」に注目したい
ドミノの持ち帰り半額終了。それは「値上げか、値下げか」という一次元的な物差しでは測れない、かなり難易度の高い大改革です。
持ち帰り客を決定的に怒らせて手放してしまわない「30%オフ」という絶妙なラインを残しつつ、公式デリバリーの敷居を下げる。 筆者個人の見立てとしては、ドミノは相当にヒリヒリする勝負に出たなと感じます。外部デリバリー全盛の時代に、自社の注文ルートの主導権を取り戻す。この視点を持ってニュースを眺め直すと、ドミノが打った「半額終了」という一手の重みが、まったく違って見えてくるはずです。
まとめ
ドミノの「お持ち帰り半額」終了。持ち帰りを愛用していた人からすれば、パッと見は間違いなく値上げです。
ただ、ここまで紐解いてきたように、今回の改定は「割引率の縮小」と「ベースとなるピザ価格の値下げ」がワンセットになっています。
たとえば、定価2,000円だったピザが1,400円に下がった場合、
・旧モデル:2,000円の半額 = 1,000円
・新モデル:1,400円の30%オフ = 980円
このように、「50%が30%になった」という数字のショックに反して、実際には手出しの値段がほとんど変わらない、あるいは安くなるメニューすら存在します。 一方で、公式デリバリーはわかりやすく安くなるため、わざわざ外部アプリに高い運賃を払って持ち帰りを代行させるメリットは薄れました。
お会計のトータルは、選ぶメニューやクーポン、配達の条件によってコロコロ変わります。「値上げだ」というニュースの文字だけで判断せず、注文画面の最後にポツンと表示される合計金額を確認してみてください。
今回のドミノの決断は、単なる持ち帰りの値上げではありません。スマホの中に公式、持ち帰り、外部アプリが並ぶ時代に、自社の注文ルートの主導権を握り直そうとした、かなり大胆なビジネスの再設計です。
よくある質問
Q. ドミノの持ち帰り半額終了は、結局値上げですか?
割引率だけを見れば「50%から30%」になるため値上げです。ただ、ピザ本体の価格も同時に下がるため、選ぶメニューによっては以前と数百円しか変わらない、あるいは安くなる場合もあります。
Q. 持ち帰りの値段はどう計算されるのですか?
値下げされた「新しい定価」から30%引きになります。たとえば、定価が2,000円から1,400円に下がったピザなら、[1,400円 × 0.7 = 980円]となり、旧半額(1,000円)より安くなります。
Q. デリバリーの価格は本当に安くなるのですか?
公式発表では、対象のMサイズで「平均約600円の値下げ」とされています。ただし全品が一律で600円引きになるわけではないため、実際の価格はメニューごとの確認が必要です。
Q. 持ち帰りとデリバリーは、どちらが安くなりやすいですか?
基本的には、30%引きが効く「持ち帰り」のほうが安いです。ただ、以前の半額時代ほど大きな価格差ではなくなっています。
Q. なぜドミノは、一番の売りだった「半額」をやめたのでしょうか?
単なる値上げではなく、「デリバリーと持ち帰りの価格差を整えるため」と見るのが自然です。持ち帰りの安さを残しつつ、公式デリバリーを頼むハードルを下げる狙いがあります。
Q. Uber Eatsなどの外部アプリと関係がありますか?
直接の対策とは断定できません。ただ、ピザ代と送料が分けて表示される外部アプリと比べられやすい今の時代に、自社の価格表を適応させた動きと捉えると、非常につじつまが合います。
編集後記
今回の記事を書こうと思い立ったのは、ネットニュースの見出しを目にしたときの「ん?」という小さな違和感がきっかけでした。
文字づらだけをなぞれば、誰がどう見ても「ドミノが持ち帰りを値上げした」という話です。私自身、最初はそう思いました。 けれど、新旧の価格表を並べてみると、どうも単なる値上げには見えない。むしろ、持ち帰り客が「これならまだ許せるか」と踏みとどまるギリギリの線を、探り当てにいったような、企業の生々しい体温を感じたのです。
価格改定というのは数字の話ですが、その裏側には必ず「人間の動かし方」の設計図があります。
「高くなった」「安くなった」と一通り騒いだあと、ほんの少しだけ視線を上げて『なんで彼らは、あえてこの数字にしたんだろう?』と考えてみる。そうすると、見慣れた日常のニュースが、ちょっとだけスリリングなビジネス小説のように読めてくる気がしています。
参照・参考サイト
株式会社ドミノ・ピザ ジャパン「ドミノ・ピザ ブランドリニューアル発表会」実施
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000520.000029053.html
ドミノ・ピザ「お持ち帰り半額」
https://www.dominos.jp/hangaku
株式会社ドミノ・ピザ ジャパン 2020年6月15日(月)より新サービス「お持ち帰り半額™」開始
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000102.000029053.html
Uber Eats「Uber Eats、アプリ上の商品価格を『お店と同じ価格』に」
https://www.uber.com/jp/ja/newsroom/eats-in-store-price-launch/
Uber ヘルプ「Uber Eatsでの注文にかかる手数料一覧」
https://help.uber.com/ja-JP/ubereats/restaurants/article/uber-eats%E3%81%A7%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%96%87%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%E6%89%8B%E6%95%B0%E6%96%99%E4%B8%80%E8%A6%A7?nodeId=98748050-3fac-410b-8003-bcc12dc3e0ee
消費者庁「株式会社ドミノ・ピザジャパンに対する景品表示法に基づく措置命令について」
https://www.caa.go.jp/notice/entry/033782/


コメント