ロスリーダー商品戦略とは?実店舗・EC活用法と成功事例|メリット・デメリットも徹底解説

column_marke_Lleaderロスリーダー商品戦略 マーケティング

スーパーで「卵1パック98円」と書かれたチラシを見て、ついその店に行ったことはありませんか。ドラッグストアでティッシュや洗剤が格安で並んでいると、「どうせ使うから」とまとめ買いしてしまった経験もあるでしょう。買い物のあとに「今日は得をした」と感じたこと、きっとあるはずです。

実はあの安さには理由があります。単なる値引きではなく、**赤字覚悟の商品をきっかけにして来店を促し、他の商品で利益を生む仕組み──これが「ロスリーダー商品戦略」**です。

名前は専門的に聞こえますが、考え方はシンプルです。まず来てもらうこと。まずカートに入れてもらうこと。その最初の一歩を起点に、利益につながる流れを設計しているのです。

この記事では、ロスリーダー商品戦略の意味と仕組みをわかりやすく解説し、スーパーやドラッグストアでの実例、ECでの応用法、メリットとリスクを整理します。さらに、数値シミュレーションや失敗事例を交えながら「自分の事業に取り入れるべきかどうか」を考えられるように導きます。

ロスリーダー戦略は、大企業だけのものではありません。小さなお店や個人のネットショップでも工夫次第で活かせます。売上が伸び悩んでいるとき、新しい集客の武器になるかもしれません。

【1】ロスリーダー商品戦略とは(定義と基本)

column_marke_Lleader【1】ロスリーダー商品戦略とは

ロスリーダー商品戦略とは、「赤字でもいいから目玉商品でお客を呼び込み、他の商品で利益を確保する」という考え方に基づくマーケティング手法です。スーパーやドラッグストアでは昔から活用されてきましたが、いまはECサイトでも幅広く応用されています。

「安売り戦略」と同じに見えるかもしれません。けれど、その狙いはまったく違います。単に安さで勝負するのではなく、「来店のきっかけ」や「購入の入口」を作ることに重きを置いているのです。

1-1. ロスリーダー商品の意味と由来

「ロスリーダー(Loss Leader)」という言葉は、直訳すると「損失を先導する商品」。売れば売るほど赤字になる商品をあえて用意し、それを入口にして他の売上を導く役割を持ちます。

身近な例でいえばスーパーの卵や牛乳。広告チラシの大きな文字で「卵98円」と書かれていると、その店に足を運びたくなるはずです。実際には卵単体では利益が出ません。けれど、多くの人が「卵が安いなら他の商品も安いだろう」と思い込み、結果的に肉や野菜、調味料まで一緒に買ってしまうのです。

この仕組みは戦後のアメリカ小売業から広がり、日本でも高度経済成長期にスーパーや量販店が取り入れました。はじめは「ただの安売り」と誤解されることもありましたが、今では立派なマーケティング戦略として体系化されています。

1-2. 赤字でも成立する仕組みと狙い

赤字商品を売っても成り立つのは、消費者行動に特有の仕組みが働くからです。

  • 目玉商品を目的に来店した人が、ついでに他の商品も購入する(クロスセル効果)。
  • 来店やアクセスそのものが習慣になり、長期的なロイヤルティにつながる。
  • 他店との比較で「ここは安い店」という印象を強く持ってもらえる。

たとえば卵を98円で売って損をしても、そのついでに野菜や肉をまとめ買いしてもらえれば、全体では十分に利益が残ります。ECでも同じです。「あと1,000円で送料無料」と表示されると、多くの人が追加で商品をカートに入れてしまう。これもロスリーダーの発想です。

短期的な損を長期的な得につなげる。これがロスリーダー商品戦略の本質です。赤字の商品単体を切り取って見れば損に見えるけれど、顧客の行動全体を設計すれば黒字に転じる。そこにこそ、戦略としての面白さと難しさがあるのです。

【2】なぜ赤字商品で集客できるのか(心理・経済学的背景)

column_marke_Lleader【2】なぜ赤字商品で集客

ロスリーダー商品戦略は、単なる安売りではありません。人が「得をした」と感じる心理や、価格が行動を動かす仕組みを利用したものです。赤字商品があるだけで客足が伸びるのは、心理学と経済学の両面から説明できます。

2-1. 消費者心理:つい他の商品も買ってしまう理由

人は「得をした」と思うと、その感覚が他の購買にも波及します。心理学ではアンカリング効果やお得感バイアスと呼ばれます。

卵を100円で手に入れた瞬間、「今日はいい買い物をした」と気持ちが軽くなる。そのあと、肉や調味料を少し多めに買ってしまうことがあるでしょう。財布のひもが緩むのは一時的ですが、その一瞬が店舗全体の売上を押し上げます。

もう一つは「せっかく来たのだから」という心理です。人は行動にコストをかけたとき、その分を取り戻したくなります。スーパーまで足を運んで卵だけ買うのはもったいない。ドラッグストアで特売のティッシュだけ持ってレジに並ぶのも気が引ける。そう感じて追加購入する動きが自然に生まれるのです。

2-2. 価格インパクトと「来店動機」を生む仕組み

消費者はすべての価格を覚えているわけではありません。けれど、卵や牛乳、ティッシュ、ガソリンのように日常的に使うものは相場をよく知っています。だからこそ、それが相場より安いと「この店は安い」と強く印象に残るのです。

経済学で言えば、ロスリーダーに選ばれるのは価格弾力性の高い商品です。価格弾力性とは、値段が少し変わっただけで需要が大きく動くかどうかを示すもの。卵やティッシュはまさにその典型で、ほんの数十円の差で客足が一気に変わることもあります。

ECでもこの構造は同じです。「あと1,000円で送料無料」という表示が出ると、ユーザーは無意識に商品を追加してしまう。タイムセールやクーポンも「今得しないと損だ」という心理を刺激し、結果的に購入点数を増やします。

つまり赤字商品の存在は、単体で利益を削るのではなく**「利益を生む商品の売上を増やす仕掛け」**になっている。そこにこの戦略の強さがあります。

【3】実店舗での事例(スーパー・ドラッグストア・飲食)

column_marke_Lleader【3】実店舗での事例

ロスリーダー商品なんて言葉を聞くと難しそうですが、実は私たちの生活にすっかり入り込んでいます。スーパーのチラシ、ドラッグストアの棚、居酒屋のメニュー。思い返せば「あ、あれもそうだった」と気づくはずです。

3-1. スーパーの定番:卵や牛乳

週末のチラシに大きく「卵1パック98円」と出ていると、ついそのスーパーを選んでしまう。そんな経験ありませんか。卵や牛乳は毎日使うからこそ、数十円の差が大きく感じられるんです。安い卵をカゴに入れたついでに、肉や野菜もまとめて買う。気づけばレジの合計はいつも通りか、それ以上になっていたりします。

3-2. ドラッグストア:ティッシュや洗剤

ドラッグストアでは「ティッシュ5箱198円」「洗剤特価」といった定番があります。生活必需品だからこそ価格を覚えていて、安さがすぐ伝わる。けれど、そこで終わらないのがうまいところ。ティッシュだけを買って帰るのは少し気が引けるし、化粧品やお菓子まで手に取ってしまう。私自身「今日はティッシュだけ」と思って入ったのに、レジで2,000円を超えていたことがありました。

3-3. 飲食店や専門店でも

飲食店の「最初の生ビール100円」や「ランチドリンク100円」も同じ仕組みです。ドリンクは安くても、料理や追加注文で利益は十分に確保できる。書店がベストセラーを安く出して関連本につなげる、アパレル店がTシャツを値下げして新作のジャケットを売る。どれも赤字商品を入口にしている点では同じです。

要するに、私たちが「安い!」と喜んでいるその瞬間に、店側はすでに「その後の買い物」まで見据えている。知ってしまうと、次にレジでカゴを置くとき、ちょっと違う景色に見えるかもしれません。

【4】ECサイトでの活用法

column_marke_Lleader【4】ECサイト

ロスリーダー戦略は、リアル店舗だけの話ではありません。ネットショップやECサイトでも同じ仕組みが動いています。画面の向こうで「ついカートに入れてしまった」経験、あなたにもあるはずです。

4-1. 目玉商品の訴求

ECでは「人気ランキング1位」「期間限定セール」といった形で目玉商品が強調されます。商品単体で利益は薄くても、まずページを開いてもらう入口としての役割を果たすのです。Amazonのタイムセールや楽天のスーパーDEALはまさにその典型です。

4-2. カート導線とクロスセル設計

カートに商品を入れると「この商品を買った人はこんな商品も見ています」と表示される。あるいは「一緒に購入されている商品」というセット提案が出る。これらはクロスセルを狙った導線です。私自身、USBメモリを買うつもりでページを開いたのに、気づいたら外付けHDDまで注文していたことがあります。

4-3. 送料無料条件や会員限定オファー

「あと1,000円で送料無料」という表示に押されて、カートに余計な商品を足したことはありませんか。送料を損したくない心理を突いた仕掛けで、これもロスリーダー戦略の一部です。さらに会員限定セールやポイント還元率アップなど、利益率の低い商品を入口に、長期的な囲い込みまでつなげています。

4-4. データ分析とパーソナライズ

ECの強みはデータにあります。どの商品を入口にすれば追加購入につながるか。どんな顧客層がロスリーダーに反応しやすいか。アクセスログや購買履歴をもとに、赤字商品を「投資」としてどこに配置すれば最も効果的かを設計できるのです。

クリックひとつの行動にも、店側の狙いが潜んでいる「送料無料ライン」「おすすめ商品」「期間限定」。こうした表示の裏に、リアル店舗と同じ発想が流れていることに気づくと、ネットショッピングの景色も少し違って見えてきます。

【5】ロスリーダー戦略のメリット

column_marke_Lleader【5】ロスリーダーのメリット

ロスリーダー戦略の強みは、ただの安売りで終わらないところにあります。集客、利益補填、顧客との関係づくりという三つの効果が重なり合って、全体の収益に貢献するのです。

5-1. 集客力を強化できる

人は「得をする情報」に敏感です。スーパーのチラシで卵が安いと聞けば足を運ぶ。ECサイトのタイムセールを見れば、まずはページを開いてしまう。ロスリーダーはその最初の一歩を引き出すための強力な武器になります。

特に競合が多い業界では、入口の商品で勝負が決まることもあります。「卵98円」の一行で人が動くのは、そのくらい入口の訴求力が大きいからです。

5-2. クロスセル・アップセルで利益補填

赤字商品の損失は、他の商品で補えます。卵を買いに来た人が肉や野菜も買っていく。ドラッグストアで特売ティッシュを手に取った人が、ついでに化粧品やサプリを追加する。そんな「ついで買い」の積み重ねが全体の利益を押し上げるのです。

ECでも同じです。「あと1,000円で送料無料」という表示に後押しされて、気づけばカートがいっぱいになっていた。読者の中にも、そんな経験があるかもしれません。

5-3. 顧客接点拡大とロイヤルティ向上

ロスリーダー商品は、顧客との最初の接点を増やす役割も果たします。一度「ここは安い」と印象づければ、次の買い物の候補に自然と入りやすくなる。さらに「得をした」という感覚は小さな満足体験になり、次の来店や再訪を後押しします。

もちろん、それだけで長期的なファンになるわけではありません。けれど「入り口をどう作るか」で、その後の関係性は大きく変わっていくのです。

【6】ロスリーダー戦略のデメリット

column_marke_Lleader【6】ロスリーダーのデメリット

便利で効果的に見えるロスリーダー戦略ですが、落とし穴もあります。安さで人を呼ぶ仕組みは強力な反面、利益やブランドに負担をかけやすいという側面があるのです。

6-1. 利益圧迫リスク

赤字商品を用意するということは、当然ながらその分の損失を抱えるということです。来店者が想定どおり「ついで買い」をしてくれなければ、単純に赤字が積み上がってしまう。
たとえば卵だけ買って帰る人が増えれば、戦略は逆効果になります。

6-2. ブランド毀損リスク

安さばかりを前面に出すと、「安い店」というイメージだけが定着してしまうことがあります。短期的には集客できても、長期的にブランド価値を下げる危険があるのです。
特に高級志向の商品やサービスを扱う場合は、この影響が大きくなるでしょう。

6-3. 目玉商品だけ買われる問題

スーパーで卵だけを買って帰る。ドラッグストアでティッシュだけを手に取ってレジに並ぶ。そんな光景は現実によくあります。
客数は増えるのに売上が伸びない。赤字商品が逆に「損失の拡大要因」になってしまうわけです。

ロスリーダー戦略は「やれば必ず効果がある」という万能薬ではありません。うまく設計しなければ、集客が利益につながらず、かえって経営を圧迫してしまう。ここを理解しているかどうかが、成功と失敗の分かれ目になります。

【7】失敗パターンと回避策

column_marke_Lleader【7】失敗パターン

ロスリーダー戦略は便利ですが、やり方を間違えると赤字だけが積み上がってしまいます。頭では「ついで買いで回収すればいい」と分かっていても、現場ではうまくいかないことが多いんです。

7-1. 目玉商品だけ買われて終わる

スーパーで卵だけを抱えてレジに並ぶ人、見たことありませんか。チラシを見て来店したのに、結局それだけで帰ってしまう。店としては一番避けたいパターンです。

どう防ぐか:卵を売場の奥に置いて、野菜や肉の前を必ず通るようにする。ドラッグストアなら、ティッシュの横に高単価の日用品を置く。ECなら「よく一緒に買われている商品」を自然に表示する。強引さは不要ですが、つい目に入る工夫は欠かせません。

7-2. 補填商品が目立たない

赤字商品にばかり注目が集まり、利益を生む商品に目が届かない。これもありがちな失敗です。セール会場だけ盛り上がって、通常商品は売れ残ってしまう。

どう防ぐか:補填商品をわざと目立たせること。スーパーなら「本日特価の卵→その横に肉と野菜セット」。ECならカート画面で「一緒に買うと送料無料に」と表示する。人が流れる道に利益商品を重ねるのが基本です。

7-3. 値引きが当たり前になる

安売りを繰り返すと、人はすぐ学習します。「この店はいつも安い」「定価で買うのは損」と思われてしまう。そうなると通常価格に戻した瞬間に売れなくなる。

どう防ぐか:値引きをイベント扱いにすること。毎週ではなく月1回、季節の節目だけ。普段は定価で売り、たまに安くする。そのほうが「今日はラッキー」と感じてもらえます。

要するに、ロスリーダー戦略は「安さの見せ方」より「その後の流れづくり」のほうが大事なんです。安さだけを武器にしてしまうと、消費者も慣れてしまうし、店の体力も削られる。ちょっとした配置や見せ方で、結果は大きく変わってきます。

【8】他戦略との比較

column_marke_Lleader【8】他戦略

ロスリーダー戦略は「ただ安く売る」だけに見えますが、実は似ているようで違う手法がいくつもあります。ここを整理しておかないと、戦略を選ぶときに混乱してしまいます。

8-1. EDLP(エブリデー・ロー・プライス)との違い

EDLPは「いつ来ても安いですよ」という売り方。たとえば業務スーパーやホームセンターのように、特定の商品だけでなく全体的に価格を下げているイメージです。
一方ロスリーダーは「一部の商品だけ極端に安く」見せる。だからこそ目玉商品としてインパクトがあり、「今日はここに行こう」と思わせやすいんです。

8-2. プロモーション型割引との違い

期間限定セールやクーポン配布は「買う理由」を短期的に作る仕組みです。これも来店効果はありますが、割引対象が広すぎると全体の利益を削りすぎてしまう。
ロスリーダー戦略は、対象をあえて絞り込む。卵やティッシュのように「誰もが知っている商品」に集中させることで、少ない赤字で大きな集客を狙えます。

8-3. 向く業種・不向きな業種

ロスリーダーが効果を発揮するのは、生活必需品や相場がわかりやすい商品を扱う業種です。スーパー、ドラッグストア、量販店などが典型ですね。
逆に、高級ブランドや一点物を扱う業種では逆効果。バッグや宝飾品を大幅値引きしてしまうと、ブランドの価値そのものを壊してしまいます。

まとめると、ロスリーダーは「安さ」そのものよりも“入口を作ること”に特化した戦略です。似ている割引手法と混同すると、狙いがぼやけてしまう。どのやり方が自分の事業に合うのかを見極めるのが大切になります。

【9】データで見るロスリーダー戦略(数値シミュレーション)

column_marke_Lleader【9】データで見る

ロスリーダー戦略は「赤字で人を呼び、全体で黒字に戻す」仕組みです。頭では理解できても、実際にどれくらいの差が出るのかは数字にしてみないと見えません。ここではスーパーとEC、それぞれの典型的なケースをシミュレーションします。

9-1. スーパーの卵販売シナリオ

卵1パックを原価120円、販売価格98円で設定。1パックごとに22円の赤字が出ます。

購入パターン内容損益
卵だけ購入卵100パック × -22円-2,200円
卵+ついで買い卵100パック + 他商品平均1,000円(利益率20%)他商品利益20,000円 – 卵赤字2,200円 = +17,800円

卵単体では赤字でも、ついで買いが起これば大幅に黒字に転じることがわかります。

9-2. ECでの送料無料シナリオ

人気商品A(原価1,000円)を900円で販売。送料無料ラインを3,000円に設定した場合。

購入パターン内容損益
Aだけ購入A1個 → -100円-100円
A+追加購入A900円 + 他商品3,100円(利益率25%)他商品利益775円 – 赤字100円 = +675円

「あと少しで送料無料」という表示が、利益確保の導線として機能しているのが数字で見えます。

【10】顧客体験デザインとの結びつけ

column_marke_Lleader【10】顧客体験デザイン

ロスリーダー商品戦略は「赤字で人を集める」仕組みで終わりません。真の勝負は、そのあとに顧客がどう感じ、どんな行動を繰り返すかにあります。数字の損益だけでなく、体験として“また来たい”と思わせる導線を作れるかどうかがカギになります。

10-1. 「得をした体験」がロイヤルティを育てる

卵を安く買えたときの小さな満足感。初回限定価格で人気商品を手に入れたときのうれしさ。こうした体験は強い記憶として残ります。

心理学では「ピーク・エンドの法則」と呼ばれ、買い物全体の評価はピーク(得をした瞬間)と最後の印象(レジや配送の快適さ)で決まるとされています。つまり、ロスリーダー商品は“得をしたピーク”を作る役割を担い、その後の接客やサービスが“心地よいエンド”を補完するという構造です。

10-2. 短期集客からリピーター化へ

赤字商品で人を集めても、その場限りなら損失が積み重なるだけ。リピーター化への仕組みを重ねてこそ戦略になります。

たとえば

  • 会員登録に誘導する:「初回特価は会員限定」とすれば顧客データが手に入る
  • 次回利用を意識させる:購入直後にクーポンを配布、レビュー投稿でポイントを付与
  • 属性ごとに入口を変える:子育て層にはおむつ、美容層にはコスメ。ターゲット別に赤字商品を設定する
  • 最後の印象を磨く:配送スピードや梱包の丁寧さで「また使いたい」と思わせる

こうした仕掛けが積み重なると、「安いから来た」人が「信頼できるから続ける」人に変わっていきます。

体験設計のチェックリスト

実際に取り入れるときは、次の問いを自分の事業に当てはめてみてください。

  • 赤字商品は「来店動機」として本当に適切か
  • 購入後の“次の行動”をきちんと設計しているか
  • 押しつけ感のない自然な導線になっているか
  • ブランドイメージを損なわずに「得をした感覚」を残せているか
  • データを活かし、改善のサイクルを回せているか

数字の裏側にある体験をどうデザインするか。そこを意識すると、ロスリーダー戦略は単なる安売りから「長く選ばれる仕組み」へと変わっていきます。

【11】成功させる導入ステップ

column_marke_Lleader【11】導入ステップ

ロスリーダー商品戦略は、思いつきで始めると一気に資金を削る危険があります。けれど、ステップを踏んで準備すれば、赤字商品は強力な集客装置に変わります。ここでは実務で使える三つの流れを整理します。

ステップ1. 商品選定:集客性と利益補填の両輪

最初に決めるのは「何を赤字にするか」です。
ロスリーダーに向くのは誰もが定期的に買う必需品。そして、他の商品と一緒に買われやすいものです。スーパーなら卵や牛乳、ECなら日用品や低価格アクセサリーなどがよくある典型例です。
同時に「赤字を取り戻す商品」も選んでおきます。例えばセット販売の上位モデルや、利益率の高い消耗品。ここを見極めて導線に組み込むことが前提になります。

ステップ2. 収益シミュレーションとリスク管理

次に必要なのは数字です。
「1個あたりの赤字額」「クロスセル商品の購入率」「平均客単価」を組み合わせて損益を試算します。さらに、最悪シナリオとして「目玉商品だけが買われた場合」の赤字も計算しておきます。
このときに出る損失が販促費として許容できるかどうか。キャッシュフローが崩れないかどうか。ここを確認しておくことで、赤字が暴走する事態を防げます。

ステップ3. 顧客体験設計:リピーター化の仕掛け

最後に整えるのは「顧客を定着させる仕組み」です。
購入直後に次回割引クーポンを渡す。会員登録で送料無料を付与する。レビュー投稿でポイントを還元する。こうした小さな仕掛けを積み重ねれば、「安いから来た人」が「また来たい人」に変わっていきます。

実務チェックリスト

導入前に最低限チェックしたいポイントは次の通りです。

  • 赤字商品は来店動機になる必需品か
  • 利益補填商品を導線に組み込めているか
  • 収益シミュレーションを行い、最悪ケースも想定しているか
  • キャッシュフローに耐えられる損失ラインを設定しているか
  • リピーター化につなげる仕掛けを用意しているか

数字と体験の両面を押さえたとき、赤字商品は「単なる安売り」ではなく「利益を生む装置」に変わっていきます。

【12】まとめ:戦略を活かすために考えるべきこと

ロスリーダー商品戦略は、赤字をあえて仕込んでお客を呼ぶ方法です。派手に集客できる一方で、準備を欠けば「ただの安売り」で終わってしまいます。

押さえるべきは三つ。

  1. 赤字商品だけで終わらず、利益につながる導線を組むこと。
  2. 数字で最悪ケースを試算し、資金がもつかを確かめておくこと。
  3. 「得をした」という体験をリピーター化に結びつけること。

この三つが揃って初めて、ロスリーダー戦略は武器になります。

スーパーなら卵や牛乳で来店を促す。ECならカート導線や送料無料条件を工夫する。それぞれの現場に合った形で設計すれば、短期の集客と長期の利益が両立する。

結局のところ、この戦略は「赤字を呼び水に黒字を育てる仕組み」なんです。そこまで描けるかどうかが、成功の分かれ道になるはずです。

編集後記

ロスリーダー戦略を整理していて感じたのは、「安く売れば人は集まる」という単純さの裏に、思った以上に繊細な設計が潜んでいるということです。
安さは入口にすぎません。その後にどう行動してもらうか、どうやって続けてもらうか。ここを考えない限り、赤字はただ赤字で終わってしまう。

私自身、中小企業や個人の事業に関わる中で「値引きしても利益が残らない」「一度来てくれたのに続かない」という声を何度も聞いてきました。数字だけではなく、買った人の体験や気持ちまで設計しなければならないと痛感してきました。

この記事が、読んでくださった方の「自分の店ならどう活かせるか」を考えるきっかけになればうれしいです。現場の一つひとつの判断に少しでも役立ててもらえたら、書いた甲斐があると思っています。

編集方針

  • 定義と仕組みの正確な理解を優先。
  • 実店舗とECの両軸で活用法を提示することを優先。
  • メリットとデメリットの比較を優先。
  • 国内事例を盛り込み、自分事化できる内容を優先。
  • 数値シミュレーションと顧客体験の結合を優先。
  • 成功事例と失敗パターンの両面提示を優先。

参照・参考サイト

ロスリーダーとは? 飲食店における戦略的な活用法
https://fooddies.tokyo/loss-leader/

ロスリーダーとは?意味、使い方、メリットデメリットを事例で紹介
https://visionwork.co.jp/business/ra/4835.html

「赤字商品」が利益のカギになる戦略がある【損して得とれ】
https://note.com/bus_model_note/n/n08b1530190f6

「赤字覚悟の目玉商品」で利益を伸ばす!ロスリーダー戦略の実践例
https://kensan.pro/

ロスリーダー【loss leader】 | ブランディング ナレッジベース SINCE.
https://since2020.jp/knowledgebase/words/136/

ロスリーダー (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC

J-marketing.net「マーケティング用語集 ロスリーダー」
https://www.jmrlsi.co.jp/knowledge/yougo/my03/my0309.html

執筆者:飛蝗
SEO対策やウェブサイトの改善に取り組む一方で、社会や経済、環境、そしてマーケティングにまつわるコラムも日々書いています。どんなテーマであっても、私が一貫して大事にしているのは、目の前の現象ではなく、その背後にある「構造」を見つめることです。 数字が動いたとき、そこには必ず誰かの行動が隠れています。市場の変化が起きる前には、静かに価値観がシフトしているものです。社会問題や環境に関するニュースも、実は長い時間をかけた因果の連なりの中にあります。 私は、その静かな流れを読み取り、言葉に置き換えることで、「今、なぜこれが起きているのか」を考えるきっかけとなる場所をつくりたいと思っています。 SEOライティングやサイト改善についてのご相談は、X(@nengoro_com)までお気軽にどうぞ。
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