「アクセスはあるのに、成果につながらない…」
「いろいろ試しているのに、手応えがない…」
Web担当者の多くが、こんな壁に直面します。
けれど、その原因は“施策”ではなく、“課題の見方”にあるかもしれません。
表面的な数字だけを追っていても、根本の問題にはたどりつけません。
なぜなら、真の課題は「構造」の中に隠れているからです。
この記事では、Web改善の成果を左右する
「課題の捉え方」「構造の読み解き方」「分析→改善の優先順位づけ」までを体系的に解説します。
こんな方におすすめです:
- データは見ているのに、何が悪いのか分からない
- 改善策がいつも“勘頼み”になってしまう
- チームで課題を共有して、納得感のある施策を打ちたい
記事で扱う内容は以下のとおりです:
- 課題が見えない理由と“構造”の視点
- 改善ステップと、フレームを使った分析手法
- Why-Why分析、KPIツリー、ファネル分析など5つのフレーム
- 成果が出ないBtoBサイトの実例と改善プロセス
- チームに“伝わる資料化”のコツとテンプレート
- 医療・製造など他業種に学ぶ「構造思考」の応用術
Web改善に必要なのは、「ツールの使い方」ではなく「構造の見方」です。
まずは施策に走る前に、「どこに課題があるのか」を一緒に言語化していきましょう。
【1】Web課題が“見えにくい理由”と分析のための3つの視点

「改善しているのに成果が出ない」
Web担当者の多くが、このモヤモヤに悩まされています。
その原因は、“施策そのもの”ではなく、“課題の見方”にあるケースがほとんどです。
ツールは使っている。数字も追っている。
それでも「どこを直せばいいのか、確信が持てない」。
そんなときに必要なのが、「構造から課題を見る」という視点です。
この章では、課題が見えにくくなる理由と、課題を正しく捉えるための3つの視点を解説します。
1-1. 数字は「サイン」であって「答え」ではない
Googleアナリティクスやヒートマップを見て、「この数値は悪いの?良いの?」と迷った経験はありませんか?
たとえば離脱率が高い、CTAがクリックされない、滞在時間が短い。
どれも“重要なサイン”ではありますが、それ自体は原因ではありません。
離脱率が高いのは、コンテンツが期待外れだったからかもしれないし、
ファーストビューで情報を伝えきれていないのかもしれません。
あるいは、読み込みが遅いだけかもしれません。
数字は“結果”であって、“意味”は自分たちで読み解く必要があります。
「なぜこの数字になったのか?」
背景の構造を想像し、仮説を立てる力が求められます。
1-2. 課題が曖昧だと、施策は空回りする
「とりあえずSEO強化をしよう」「LPのデザインを変えてみよう」
こうした前向きな行動も、課題の定義が曖昧なままでは改善につながりません。
たとえばCV率が低い場合、真っ先に「フォームを見直そう」と考えるのは自然な流れです。
しかし、もし本当の原因が「訴求の弱さ」や「ユーザーとの期待値のズレ」にあったとしたら、
フォームを直しても、成果は変わりません。
大切なのは、どこを、なぜ直すのかを説明できる状態にしておくこと。
それが分析の出発点になります。
1-3. ページ単体ではなく、全体構造で見る
Web改善でやってしまいがちなのが、「ページ単体」「数値単位」での判断です。
けれど、成果を左右するのは1ページの“良し悪し”ではなく、サイト全体の構造設計です。
たとえば、アクセスはあるのにCVが出ない場合。
よく見ると、導線の順序がバラバラで、ユーザーが意図しないルートで離脱していた──ということがあります。
ファーストビューが美しくても、遷移先との文脈がズレていれば、ユーザーは「次に何をすればいいのか」分からなくなります。
1ページの問題に見えて、実は「構造上の配置ミス」だったというケースは少なくありません。
1-4. 課題を正しく捉える3つの視点
構造的に課題を見るには、次の3つの視点が必要です。
(1)数字の裏にある「ユーザー体験」を見る
数値は点でしかありません。
点と点をつなぎ、「ユーザーがどこから来て、どこで迷い、どこで止まったか」を想像する視点が欠かせません。
(2)部分最適より「全体最適」を優先する
1ページの改善ではなく、サイト全体の流れを最適化すること。
ユーザー体験を“ひと続きのストーリー”として捉える視野が成果につながります。
(3)感情のつまずきを探る
ユーザーは、どこで迷ったのか?どこで不安になったのか?
数値には表れない“心理的なひっかかり”を言語化することが、隠れたボトルネックの発見に直結します。
課題は数字だけでは見えません。
構造、文脈、体験の流れという3つのレイヤーを通じて、初めて本質が見えてきます。
【2】課題分析の3ステップ|“見えない問題”を構造で整理する方法

「成果が出ないけど、どこが問題か分からない」
そんなとき、ついやってしまうのが“思いつきの改善”です。
でも実は、多くの改善が失敗する原因は、「分析の手順がない」ことにあります。
この章では、Web課題を構造的に整理し、優先順位を明確にするための3つの基本ステップを紹介します。
2-1. ステップ①:目的とゴールを言語化する(KGI/KPI)
まず最初にやるべきことは、「なぜ改善するのか?」という目的の明確化です。
目的が曖昧なままだと、施策も評価もすべてブレます。
✔ 目的設定のポイント:
- 成果目標(KGI)を、数字で測れる形にする
例:月30件の問い合わせ獲得、CV率を3%に改善 - KGIを構成する中間指標(KPI)を分解する
例:
KGI=月30件のCV
→ KPI1:訪問者数
→ KPI2:LP閲覧率
→ KPI3:CTAクリック率 - 「意味が通る一文」で共有できるようにする
例:「ダウンロード数を月200件に増やすため、訴求と導線を改善する」
目的を明文化できれば、「今どこがボトルネックか?」を判断する軸が手に入ります。
2-2. ステップ②:ユーザー行動と数値を照合する
次にやるべきは、「ユーザーの行動」と「数値」をセットで観察することです。
このときのポイントは、ページ単位ではなく“行動の流れ”=体験ベースで見ること。
✔ チェックすべきポイント:
- どの流入経路から来ているか?
- どのページをどんな順番で見ているか?
- どこで離脱しているか?
- なぜ、そこで止まったと考えられるか?
✔ 例:
「LPの離脱率が高い」
→ ヒートマップを見ると、スクロールされていない
→ SNS流入とLPの内容にギャップがある?
→ タイトルやファーストビューの訴求がズレている?
このように、数値と行動の照合から仮説を立てることで、原因が“勘”から“論理”へと変わります。
2-3. ステップ③:課題を分類し、優先順位をつける
課題が見えてきたら、それを整理し、どこから手をつけるかを決めるステップです。
ここを飛ばすと、「全部やろうとして、何も進まない」状態に陥ります。
✔ 課題の分類(よくあるタイプ):
- 技術系:表示速度、モバイル対応 など
- UI/UX系:導線設計、ボタン位置、フォーム構成
- コンテンツ系:コピー、訴求内容、見出し設計
- 外的要因:競合変化、季節要素、広告効果の変動
✔ 優先度の判断軸:
- コンバージョンへの影響度
- 修正にかかるコストと工数
- 他の施策の効果を左右するボトルネック性
優先順位がつけば、「今やるべきこと」が明確になり、チームの動きも一気に具体化します。
🔑 3ステップのまとめ
課題は「思いつくもの」ではなく、「構造で整理するもの」。
| ステップ | やること | 意図 |
|---|---|---|
| ① 目的の言語化 | KGI/KPIを数字+言葉で定義 | 成果判断の軸を明確にする |
| ② 行動との照合 | 数値とユーザー体験の流れをセットで見る | 詰まりポイントを定量+定性で特定する |
| ③ 分類と優先化 | 課題をグルーピングし、対応順を決める | 無駄な施策を避け、改善の軸を定める |
この3ステップを踏むだけでも、改善の精度とスピードは確実に上がります。
【3】改善の迷子を防ぐ|「ファネル×課題種別マトリクス」で全体を可視化する

分析を進めると、多くの課題が見えてきます。
しかし、あれもこれもと施策に手を出してしまうと、方向性がブレたり、チーム内で話が噛み合わなくなったりしがちです。
そこで有効なのが、「課題を地図化する」視点。
Webサイト全体を俯瞰して、「どこに・どんな問題があるのか」を整理する方法として、“ファネル×課題種別マトリクス”が役立ちます。
3-1. 「どこで」「何が」問題かを構造で把握する
Webサイト上のユーザー行動は、基本的に以下のようなファネル構造(段階的プロセス)で捉えることができます。
| フェーズ | ユーザー行動 | 目的 |
|---|---|---|
| 認知 | 広告・SEO・SNSで存在を知る | 流入を増やす |
| 興味 | 複数ページを閲覧する | 関心を引き、回遊を促す |
| 比較 | 他社と比較・検討する | 情報の深掘りを促す |
| 行動 | 購入・問い合わせなどのCVに至る | 最終アクションへつなげる |
このフェーズに対し、課題の「種類」を掛け合わせると、改善ポイントがより立体的に見えてきます。
| 課題タイプ | よくある課題例 |
|---|---|
| 集客 | 流入が少ない/SEOが弱い/広告ターゲティングが不適切 |
| 情報設計 | 導線がわかりにくい/ナビゲーションが混乱 |
| コンテンツ | 訴求が弱い/コピーが刺さらない/期待値に合っていない |
| UI/UX | フォームが使いづらい/CTAが目立たない |
| 技術面 | 表示速度が遅い/スマホ最適化が不十分 |
このように、「フェーズ × 課題種別」でマトリクスを構成すると、“課題の場所”と“種類”がクロスで把握できるようになります。
✔ 具体例:
- 比較フェーズ × コンテンツ → 商品詳細ページの訴求が弱い
- 行動フェーズ × UI/UX → フォームの構造が離脱を招いている
マトリクスによって、チーム全体で「今どこに集中すべきか?」が直感的に共有できるようになります。
3-2. マトリクスで“視点のズレ”を解消する
Webサイト改善では、関わる部門によって“見るポイント”が異なります。
- マーケティング部 → 流入数、CTR、直帰率に注目
- 制作チーム → ビジュアル、UI、読みやすさに注目
- 営業チーム → CV数、問い合わせの質に注目
それぞれの視点は重要ですが、話し合いがかみ合わない原因にもなりがちです。
マトリクスを使えば、こうした視点のズレを共通構造の上に揃えることができるため、会話が建設的になります。
✔ 例:
- 「LPの直帰率が高い」
→ 情報が抽象的すぎる
→ 「比較フェーズ × 情報設計」に課題がある
このように、共通言語として整理された課題なら、デザイナー・営業・マーケターが同じ地図の上で議論できます。
3-3. 「施策が点で終わらない」ための俯瞰ツールに
改善施策は、つい“手が届くところ”から着手しがちです。
けれど、全体の構造を見ないまま手をつけると、優先度を間違えて労力がムダになることもあります。
マトリクスを使えば、施策を以下のように整理できます。
- 点の改善:単一ページの修正(例:CTAの文言変更)
- 線の改善:導線やステップ全体の再設計(例:LP→フォーム導線の改善)
- 面の改善:UX全体の再構築(例:ジャーニー全体の見直し)
とくにリソースが限られているチームこそ、「全体像の中で、何を優先するか?」を冷静に判断する視点が重要です。
✅ マトリクス導入のメリットまとめ
| 課題 | マトリクス導入で得られる効果 |
|---|---|
| 課題がバラバラに散らかる | フェーズとタイプで“整理”できる |
| チーム内で話がかみ合わない | 共通構造・共通言語により“認識のズレ”を解消できる |
| 施策の優先順位がつけられない | “どこに・どんな問題があるか”を見える化し判断できる |
| 改善が場当たり的になりがち | 点→線→面で“影響度と規模”を踏まえて計画できるようになる |
マトリクスは、Web課題の整理だけでなく、チーム全体の意思決定を加速するための“俯瞰ツール”です。
【4】現場で本当に使える!課題分析フレームワーク5選

Web改善では、「何となくこのへんが悪そう…」という感覚で動いてしまいがちです。
けれど、それでは課題の本質にたどりつけず、施策も空回りしやすくなります。
そんなときに頼りになるのが、“思考を構造化し、チームで共有できる”フレームワークです。
ここでは、現場で使える5つの定番フレームを、実践目線で紹介します。
4-1. Why-Why分析|“なぜ?”を繰り返して根本原因にたどり着く
特徴
「なぜ?」を5回程度繰り返し、表面的な問題の奥にある“本当の原因”を見つけるフレーム。
活用場面
- 施策が空回りしている
- そもそも何が問題か分からない
- 言語化できない違和感がある
具体例
「フォーム離脱率が高い」という課題を掘り下げると…
なぜ? → 入力項目が多い
なぜ? → 各部署の要望を全部盛り込んでいる
なぜ? → 優先順位の議論がされていない
なぜ? → UX視点の設計基準が社内にない
なぜ? → 組織に“ユーザー目線”の文化が根付いていない
→ 本質は「項目数」ではなく、「組織の意思決定構造」にあった。
導入のコツ
- 抽象語(例:「なんとなく微妙」)が出たら“Why”のチャンス
- 曖昧な要因を構造に変える力が養われる
4-2. ロジックツリー|課題を分解して“もれなく・ダブりなく”整理する
特徴
課題やテーマを枝分かれで分解し、全体像と改善ポイントを見える化する手法。
活用場面
- 複雑な問題を構造的に整理したい
- どこから手をつけるべきかが分からない
例:CVが伸びないときの分解ツリー(一部)
CVが伸びない
├─ 流入が少ない?
│ ├─ SEOが弱い?
│ └─ 広告の設定ミス?
├─ コンテンツが弱い?
│ ├─ ヘッドコピーが刺さらない?
│ └─ CTAと内容にギャップ?
├─ 導線が悪い?
│ ├─ ボタンの位置が分かりづらい?
│ └─ 回遊性が低い?
導入のコツ
- MECE(漏れなく・重複なく)を意識
- 分岐を細かくすると、そのまま改善タスク化できる
4-3. KPIツリー|数値を構造化して“詰まり”を定量で特定する
📝 詳細解説記事:
KPIツリーで課題を可視化する方法
特徴
KGI(最終目標)に対して、どのKPI(中間指標)がボトルネックかを視覚的に把握する分析図。
活用場面
- 「数字は見ているけど改善できない」
- 「どの数値が問題か分からない」
例:
KGI:月30件のCV
├─ KPI①:訪問数(10,000)
├─ KPI②:LP閲覧率(70%)
├─ KPI③:CTAクリック率(0.6%)
└─ KPI④:フォーム完了率(60%)
→ CTAクリック率が極端に低い=訴求力に問題か?
導入のコツ
- KPIは「分かりやすさ」より「構造と因果関係」で定義
- 改善会議の資料にそのまま使える
4-4. ジャーニーマップ|ユーザーの“感情の流れ”から課題を探る
📝 詳細解説記事:
ジャーニーマップの設計方法
特徴
ユーザーの行動・思考・感情を時間軸で整理し、心理的なボトルネックを浮かび上がらせる手法。
活用場面
- 「なぜ途中でやめたのか」が分からない
- UXやコピー改善に直結させたい
簡易フォーマット:
| フェーズ | 行動 | 思考 | 感情 | 接点 |
|---|---|---|---|---|
| 認知 | SNSで知る | 信頼できる?面白い? | 興味がわく | SNS広告 |
| 興味 | LPにアクセス | 自分に必要?合ってる? | ズレを感じる | ランディング |
| 行動 | フォーム入力 | 本当に申し込むべき? | 迷い・不安 | フォーム画面 |
→ 「興味フェーズでの訴求不足」が原因なら、LPコピーを再設計。
導入のコツ
- 感情を想像するだけで、「なぜ離脱したのか」が明確になる
- ペルソナとのズレにも気づける
4-5. ファネル分析|離脱ポイントを“数値で可視化”する
📝 詳細解説記事:
ファネル分析の実践法
特徴
ユーザー行動を段階的に分解し、各ステップの通過率・離脱率を定量で把握する分析法。
活用場面
- 「どのフェーズで止まっているか?」を明確にしたい
- データベースで施策優先度を決めたい
例
広告クリック:10,000
→ LP閲覧:6,000(60%)
→ 詳細ページ:2,400(40%)
→ フォーム到達:1,200(50%)
→ 完了:720(60%)
→ 詳細ページで6割が離脱 → ページ構成・導線に問題の可能性
導入のコツ
- 数字の“減衰ポイント”=ユーザーの“つまずき”
- 感覚ではなく「定量的根拠」で改善優先度を決められる
✅ フレーム別 ざっくり選び方ガイド
| フレーム | 得意な分析領域 | こんな時に使う |
|---|---|---|
| Why-Why分析 | 原因の深掘り | 問題の本質が分からない、言語化できないとき |
| ロジックツリー | 構造の整理・網羅性 | 要因が複数絡んでおり、全体を可視化したいとき |
| KPIツリー | 数値の構造把握 | 数字はあるが、ボトルネックが見えていないとき |
| ジャーニーマップ | UX・感情の可視化 | 離脱理由が“心理面”にありそうなとき |
| ファネル分析 | 離脱の定量分析 | 各ステップの“詰まり”を数値で把握したいとき |
【5】ケーススタディ:成果が出ないBtoBサイトをフレームで読み解く

「アクセスはあるのに、コンバージョンが増えない」
これはWebサイト改善において、最もよくある悩みです。
とくにBtoB領域では、原因が複雑に絡み合い、「どこから手をつけていいか分からない」状態に陥りがちです。
この章では、典型的なケースを想定し、前章で紹介したフレームワークをどのように連携・活用するかを実践的に解説します。
使用するフレームは以下の3つです:
- KPIツリー
- ファネル分析
- Why-Why分析
5-1. 想定ケース:アクセスはあるがCVが増えないBtoBサイト
クライアント状況(仮想)
- サービス:BtoB向けITソリューションを提供
- 集客施策:SEO+リスティング広告により月1万PVを獲得
- 目的:資料請求フォームからのリード獲得
- 問題:CV数は月10件未満。手応えが感じられない
初期ヒアリングで出た仮説
- 「デザインが古いからでは?」
- 「CTAボタンの文言が弱いのかも」
- 「ページが長すぎて読まれていないのでは?」
→ どれも一理ありそうだが、“どれが本質的な原因か”は不明。
ここから3つのフレームを順に使って分析を進めていきます。
5-2. ステップ① KPIツリーで“詰まりポイント”を構造的に特定する
まずは、コンバージョンまでの数値構造をKPIツリーで分解してみます。
KGI:月30件の資料請求を獲得
├─ KPI①:訪問数(10,000/月)
├─ KPI②:LP閲覧率(70%)
├─ KPI③:CTAクリック率(0.6%)
└─ KPI④:フォーム完了率(60%)
この分析から分かること:
- 訪問数とLP閲覧率は想定通り → 集客と興味フェーズは問題なし
- CTAクリック率が極端に低い(0.6%) → 行動前の説得力に課題がある
5-3. ステップ② ファネル分析で“つまずきの位置”を数値で可視化する
次に、ユーザーの行動フローをファネルで段階的に見ていきます。
| ステップ | 通過ユーザー数 | 通過率 |
|---|---|---|
| LP訪問 | 7,000人 | 100% |
| 中盤までスクロール | 3,200人 | 約46% |
| CTAボタンをクリック | 420人 | 約6% |
| フォーム入力を完了 | 252人 | 約60%(CTAから) |
このファネルから見えてくること:
- LPの冒頭で大きく離脱(半数以上が中盤前に離脱)
- CTAの設置位置より前でユーザーの関心が失われている
- フォーム完了率自体は高い → UIや入力体験は問題なし
→ 問題は「クリック前に“行動する理由”が伝わっていない」ことにありそうです。
5-4. ステップ③ Why-Why分析で“クリックされない理由”を深掘りする
ここからは、見えてきたボトルネック(CTAが押されない理由)を、Why-Whyで掘り下げていきます。
なぜCTAがクリックされない?
→ 訴求内容が弱く、ユーザーが必要性を感じない
なぜ訴求が弱い?
→ メインコピーが抽象的で、解決する課題が伝わっていない
なぜコピーが抽象的?
→ ペルソナ設計が曖昧で、誰に何を伝えるかが不明確
なぜペルソナ設計が曖昧?
→ 社内視点で作ったコンテンツがベースになっている
なぜ社内視点に偏った?
→ 初期段階でユーザー調査や仮説検証がなされていなかった
本質的な原因は、「誰に何を伝えるのか」が不明瞭なまま作られたLP構成にありました。
5-5. 分析から導いた改善アクションと優先順位
3つのフレームを使って、課題を構造的に可視化できたところで、実際の改善アクションを整理してみましょう。
| 改善施策 | 課題タイプ | 優先度 |
|---|---|---|
| ペルソナ再設計(課題・ニーズの明確化) | コンテンツ | ★★★★★ |
| ファーストビューの訴求文見直し | 情報設計 | ★★★★☆ |
| CTAの再設計(文言・位置・タイミング) | UI/UX | ★★★☆☆ |
| フォームの簡略化(ステップ・項目調整) | 技術/UX | ★★☆☆☆ |
→ 特に「誰に向けて、どんな価値を伝えるか」を明確にする改善が最優先。
→ 数値と構造に基づいた仮説なので、チームでも納得を得やすく、施策に落とし込みやすい状態です。
🔁 使用したフレームとその役割まとめ
| フレーム | 使いどころ | 目的 |
|---|---|---|
| KPIツリー | 数値構造の分解 | 詰まりのポイントを把握 |
| ファネル分析 | 各フェーズの離脱率を定量で可視化 | どこで止まっているかを特定 |
| Why-Why分析 | ボトルネックの深掘りと本質の特定 | 課題を構造的に言語化する |
【6】分析を“チームの行動”につなげる|伝わる共有と資料化の工夫

どれだけ鋭く課題を分析できても、
それがチームに「伝わらなければ」、改善は動き出しません。
現場でありがちなのが、担当者の頭の中では課題が整理できていても、
他メンバーには“結論だけ”しか共有されておらず、納得感が得られないパターンです。
この章では、構造的に分析した結果を「チーム全体が動ける状態」に変える3つの工夫を紹介します。
6-1. 分析が“個人の頭の中”で止まると、改善は進まない
Web改善が止まる典型パターン:
- 担当者の頭の中では、すでに構造が整理できている
- けれど、会議では「とりあえずLPを直しましょう」とだけ伝わる
- なぜその施策なのか、他のメンバーは根拠が分からない
結果として、「ふわっとした施策」「協力体制が薄い」「中途半端で終わる」が繰り返されます。
課題は、“見つける”だけでなく、“共有できる状態”にしないと意味がないのです。
6-2. フレームは“共通言語”になる
Why-Why分析、KPIツリー、ファネル分析──
これらのフレームは、思考を整理する道具であると同時に、チーム間の“翻訳装置”にもなります。
✔ 例
- 「なんとなくLPの内容が弱い」 → 抽象的で伝わらない
- 「KPIツリー上、LP→フォーム遷移率が0.6%と低く、行動フェーズの詰まりが明確」 → 説得力がある
このように、構造+根拠のセットで話せば、職種が違うメンバーとも共通認識が取れるようになります。
6-3. “伝わる資料”にするための3つのポイント
チーム共有に使う資料は、「見た瞬間に構造が分かる」ことが大前提。
以下の3つを意識するだけで、伝わり方が劇的に変わります。
📌 ① 全体構造を1枚で見せる(KPIツリーやファネル図)
- サイト全体の流れと、詰まりポイントがひと目で分かる
- 口頭での説明が不要になるくらい“図で伝える”
📌 ② 課題→仮説→改善案をワンセットにする(ロジックツリー型)
- 「何が問題か」だけでなく、「なぜそうなったか」「どう直すか」までを一気に示す
- 判断材料が揃っているため、合意形成が早い
📌 ③ 仮説の背景情報は別紙で補足する
- GAのデータ、ヒートマップ、ペルソナ設定など
- 直接の資料に入れず、後で確認できるようリンクまたは別シートで添付
✅ 資料構成テンプレート(GoogleスライドやNotionでの活用に最適)
1ページ目:プロジェクト名/目的/日付
2ページ目:KPIツリーまたはファネル図(全体構造)
3ページ目:課題一覧と改善案(優先度順)
4ページ目:分析根拠(Why-Whyやヒートマップ結果など)
5ページ目:仮説条件/ペルソナ/数値の定義(補足)
→ この構成にすれば、後から別のメンバーが見ても「何を、なぜ、どう変えるのか」が理解できます。
🗝 分析は“考えを言語化・可視化して残す作業”
「分析=考察すること」と思われがちですが、
本質は“他者が理解・再現できる形に落とし込むこと”です。
- なぜその課題を選んだのか?
- なぜそれを優先すべきなのか?
- どんな根拠でその施策を提案するのか?
それが言葉と図で共有されていれば、チームは自然と動き始めます。
属人的にならない分析こそ、再現性ある改善の第一歩です。
【7】他業種から学ぶ「構造的分析」のヒント

Web改善というと、「GAやヒートマップ」「SEOやUI」など、どうしても専門的・ツール的な印象を持ちがちです。
けれど本質的な“課題を構造で捉える力”は、実はどんな業種でも使われている汎用スキルです。
この章では、製造・医療・教育といった異分野における分析の考え方を紹介し、
Web改善にどう活かせるかを整理します。
7-1. 製造業|「現象と原因を切り分ける」異常検知の視点
製造業では、小さな異常や不良を見逃さないために、
“現象”と“原因”をきちんと分けて考える習慣が徹底されています。
製造現場の思考プロセス
- 何が起きたか(=現象)
- なぜ起きたか(=原因)
- どう防げるか(=対策)
Webでの応用例
たとえば「直帰率が高い」という状況に対して:
- 現象:直帰率80%という数値
- 原因候補:導線が弱い?表示が遅い?期待値と中身が違う?
- 対策:ヒートマップで離脱箇所を確認 → 表現改善や導線調整を実施
→ “数値=現象”に飛びつかず、冷静に切り分ける思考が改善の精度を上げます。
7-2. 医療・教育|段階的に仮説を立てて検証する
医師や教師の現場では、症状や成績などの“表れ”から、
背後にある複数の可能性を洗い出し、段階的に仮説を絞っていくのが基本です。
共通する考え方
- 今見えているのは“結果”であって“原因”ではない
- 原因は1つではなく、複数の前段階にまたがる可能性がある
- 仮説を持ち、検証しながら絞り込む
Webでの応用
「フォーム離脱が多い」からといって、すぐにUI改善に走るのではなく:
- ユーザーはなぜここまで来たのか?
- モチベーションは?他ページでの体験は?
- 離脱前に“不安”や“迷い”がなかったか?
→ ユーザーの前工程や心理的流れを診ることで、思い込みを外せます。
7-3. 共通する「武器」は、“構造の見える化”
業界は違っても、成果を出している現場には、ある共通点があります。
それは、「思考を図やフレームで構造化して見える化している」こと。
各業界の見える化ツール:
- 製造:QC7つ道具、異常検知チャート
- 医療:診療プロトコル、検査フロー
- 教育:評価ルーブリック、授業設計シート
Webで使える“構造の地図”:
- KPIツリー:数値の因果関係を分解
- ジャーニーマップ:ユーザー心理を時間軸で整理
- ファネル分析:離脱箇所を定量で特定
- ロジックツリー:課題構造の整理
- Why-Why分析:本質的原因を深掘り
→ ツールの違いはあっても、「思考を構造でとらえ、可視化して他者と共有する」ことが共通の武器です。
✅ 視点を広げると、分析の“深さ”が変わる
ツールや施策に行き詰まったときこそ、「視点の取り方」を変えてみてください。
他業種の思考法をヒントにすることで、
自分の分析に“深さ”と“構造”が加わり、改善の見え方が大きく変わります。
【8】まとめ|課題が見えれば、Web改善は動き出す

Webサイトの改善で、いちばん避けたいのは
「とりあえず施策を打ってみる」ことです。
成果が出ないときに必要なのは、
“手数”ではなく、“見方の変化”。
数字を見るだけでは、本質は見えてきません。
改善のカギは、課題を“構造”で捉えることにあります。
この記事でお伝えしたこと(要点まとめ)
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| なぜ課題が見えないのか | 数字は「現象」であって「原因」ではない。背景構造の理解が必要 |
| 分析の基本ステップ | ①目的の明確化 → ②ユーザー行動との照合 → ③課題の分類と優先付け |
| フレームの使い方 | Why-Why/KPIツリー/ファネルなどで課題を構造的に可視化・共有する |
| チームでの共有の工夫 | 図や仮説・根拠をセットで資料化し、共通言語に落とし込む |
| 他業種の視点からの応用 | 製造・医療・教育にも共通する「構造思考」でWeb改善を深める |
🧭ここから始める「最初の1歩」アクション
読んだだけで終わらせず、ぜひ“手を動かす”ところまで進めてください。
明日からできる、3つの具体アクションをご提案します。
- KPIツリーを手書きで描いてみる
→ 成果の構造を“見える化”してみる - 気になるページでWhy-Why分析をしてみる
→ 「なぜCVしないのか?」を5回掘り下げるだけでも思考が整理される - ファネル×課題種別マトリクスを使って課題を地図化する
→ 「点」ではなく「全体の流れ」の中で課題を把握できる
最後に:Web改善は“見る力”で変わる
Webサイトの成果を左右するのは、アクセス数やビジュアルよりも、
「課題をどう捉えるか」という視点です。
- 思いつきではなく、構造から見極める
- ツールではなく、思考の順序を持つ
- 分析を、属人的ではなく共有可能なプロセスにする
この3つを意識するだけで、改善の質は確実に変わります。
施策に走る前に、まずは「構造を見る力」を育てる。
そこから、本当の改善が始まります。
編集後記
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
私自身、これまで多くのWeb改善の現場に立ち会ってきました。
クライアントとの会話でも、社内のプロジェクトでも、最初に必ずぶつかるのは「何から手をつければいいか分からない」という声です。
施策は山ほどある。ツールも揃っている。
なのに、動いても成果につながらない——
その理由は、“やり方”の問題ではなく、「見方の順番」がなかっただけなのかもしれません。
思考を構造化して言語化する。
仮説をチームで共有する。
それだけで、改善は一気に前に進みます。
この記事で紹介したフレームワークやマトリクスは、完璧に使いこなす必要はありません。
まずは一つ、ピンときたものから手を動かしてみてください。
KPIツリーを描いてみる。
マトリクスに自社サイトをあてはめてみる。
それだけでも、あなたのチームが“どこに立っていて、どこへ進むべきか”が見えてきます。
Web改善に迷わないために、あなた自身の“地図”を持つ。
この記事がその第一歩となれたなら、何より嬉しく思います。
参考・参照サイト一覧
この記事は、筆者の現場経験と、信頼性の高い一次情報をもとに構成しています。
Web改善において重要な「構造的思考」や「分析フレーム」の理解を深めるうえで、以下の資料・リンクを参考にしました。
📘 公的機関・業界団体・企業オウンドメディア
- 経済産業『ものづくり白書』(PDF)
製造業における工程改善・異常検知の構造分析が、Web改善に応用可能
https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2024/pdf/gaiyo.pdf - 厚生労働省『医療分野の情報化の推進について』
医療における段階的仮説検証のプロセスは、ユーザー行動の把握にも応用可能
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html - トヨタ自動車|トヨタ生産方式(TPS)公式サイト
Why-Why分析の原点であり、論理的問題解決の代表例
https://global.toyota/jp/company/vision-and-philosophy/production-system/ - DMI『そのカスタマージャーニーでいいんですか?』
UX設計に不可欠なジャーニーマップの全体像
https://dmi.jaa.or.jp/general-browse/view/2376 - Google アナリティクス(GA4)公式ヘルプ
ファネル設定・ユーザー行動の計測に欠かせないツール
https://support.google.com/analytics/answer/9304153?hl=ja
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これらの資料は、ツールに頼らず「構造で考える力」を高めるためのベースとして活用できます。
分析の精度を高めたいとき、社内で説得力ある改善案を共有したいときに、ぜひご活用ください。


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