Web課題分析の基本フレームワーク

kaizen04_Web課題分析の基本フレームワーク 現状把握

「アクセスはあるのに、成果につながらない…」

「いろいろ試しているのに、手応えがない…」

Web担当者の多くが、こんな壁に直面します。

けれど、その原因は“施策”ではなく、“課題の見方”にあるかもしれません。

表面的な数字だけを追っていても、根本の問題にはたどりつけません。
なぜなら、真の課題は「構造」の中に隠れているからです。

この記事では、Web改善の成果を左右する
「課題の捉え方」「構造の読み解き方」「分析→改善の優先順位づけ」までを体系的に解説します。

こんな方におすすめです:

  • データは見ているのに、何が悪いのか分からない
  • 改善策がいつも“勘頼み”になってしまう
  • チームで課題を共有して、納得感のある施策を打ちたい

記事で扱う内容は以下のとおりです:

  • 課題が見えない理由と“構造”の視点
  • 改善ステップと、フレームを使った分析手法
  • Why-Why分析、KPIツリー、ファネル分析など5つのフレーム
  • 成果が出ないBtoBサイトの実例と改善プロセス
  • チームに“伝わる資料化”のコツとテンプレート
  • 医療・製造など他業種に学ぶ「構造思考」の応用術

Web改善に必要なのは、「ツールの使い方」ではなく「構造の見方」です。

まずは施策に走る前に、「どこに課題があるのか」を一緒に言語化していきましょう。

【1】Web課題が“見えにくい理由”と分析のための3つの視点

kaizen04【1】Web課題が“見えにくい理由”

「改善しているのに成果が出ない」
Web担当者の多くが、このモヤモヤに悩まされています。

その原因は、“施策そのもの”ではなく、“課題の見方”にあるケースがほとんどです。

ツールは使っている。数字も追っている。
それでも「どこを直せばいいのか、確信が持てない」。

そんなときに必要なのが、「構造から課題を見る」という視点です。

この章では、課題が見えにくくなる理由と、課題を正しく捉えるための3つの視点を解説します。

1-1. 数字は「サイン」であって「答え」ではない

Googleアナリティクスやヒートマップを見て、「この数値は悪いの?良いの?」と迷った経験はありませんか?

たとえば離脱率が高い、CTAがクリックされない、滞在時間が短い。

どれも“重要なサイン”ではありますが、それ自体は原因ではありません。

離脱率が高いのは、コンテンツが期待外れだったからかもしれないし、
ファーストビューで情報を伝えきれていないのかもしれません。
あるいは、読み込みが遅いだけかもしれません。

数字は“結果”であって、“意味”は自分たちで読み解く必要があります。

「なぜこの数字になったのか?」
背景の構造を想像し、仮説を立てる力が求められます。

1-2. 課題が曖昧だと、施策は空回りする

「とりあえずSEO強化をしよう」「LPのデザインを変えてみよう」
こうした前向きな行動も、課題の定義が曖昧なままでは改善につながりません。

たとえばCV率が低い場合、真っ先に「フォームを見直そう」と考えるのは自然な流れです。

しかし、もし本当の原因が「訴求の弱さ」や「ユーザーとの期待値のズレ」にあったとしたら、
フォームを直しても、成果は変わりません。

大切なのは、どこを、なぜ直すのかを説明できる状態にしておくこと。
それが分析の出発点になります。

1-3. ページ単体ではなく、全体構造で見る

Web改善でやってしまいがちなのが、「ページ単体」「数値単位」での判断です。

けれど、成果を左右するのは1ページの“良し悪し”ではなく、サイト全体の構造設計です。

たとえば、アクセスはあるのにCVが出ない場合。
よく見ると、導線の順序がバラバラで、ユーザーが意図しないルートで離脱していた──ということがあります。

ファーストビューが美しくても、遷移先との文脈がズレていれば、ユーザーは「次に何をすればいいのか」分からなくなります。

1ページの問題に見えて、実は「構造上の配置ミス」だったというケースは少なくありません。

1-4. 課題を正しく捉える3つの視点

構造的に課題を見るには、次の3つの視点が必要です。

(1)数字の裏にある「ユーザー体験」を見る
数値は点でしかありません。
点と点をつなぎ、「ユーザーがどこから来て、どこで迷い、どこで止まったか」を想像する視点が欠かせません。

(2)部分最適より「全体最適」を優先する
1ページの改善ではなく、サイト全体の流れを最適化すること。
ユーザー体験を“ひと続きのストーリー”として捉える視野が成果につながります。

(3)感情のつまずきを探る
ユーザーは、どこで迷ったのか?どこで不安になったのか?
数値には表れない“心理的なひっかかり”を言語化することが、隠れたボトルネックの発見に直結します。

課題は数字だけでは見えません。
構造、文脈、体験の流れという3つのレイヤーを通じて、初めて本質が見えてきます。

【2】課題分析の3ステップ|“見えない問題”を構造で整理する方法

kaizen04【2】課題分析の3ステップ

「成果が出ないけど、どこが問題か分からない」
そんなとき、ついやってしまうのが“思いつきの改善”です。

でも実は、多くの改善が失敗する原因は、「分析の手順がない」ことにあります。

この章では、Web課題を構造的に整理し、優先順位を明確にするための3つの基本ステップを紹介します。

2-1. ステップ①:目的とゴールを言語化する(KGI/KPI)

まず最初にやるべきことは、「なぜ改善するのか?」という目的の明確化です。

目的が曖昧なままだと、施策も評価もすべてブレます。

✔ 目的設定のポイント:

  • 成果目標(KGI)を、数字で測れる形にする
     例:月30件の問い合わせ獲得、CV率を3%に改善
  • KGIを構成する中間指標(KPI)を分解する
     例:
     KGI=月30件のCV
     → KPI1:訪問者数
     → KPI2:LP閲覧率
     → KPI3:CTAクリック率
  • 「意味が通る一文」で共有できるようにする
     例:「ダウンロード数を月200件に増やすため、訴求と導線を改善する」

目的を明文化できれば、「今どこがボトルネックか?」を判断する軸が手に入ります。

2-2. ステップ②:ユーザー行動と数値を照合する

次にやるべきは、「ユーザーの行動」と「数値」をセットで観察することです。

このときのポイントは、ページ単位ではなく“行動の流れ”=体験ベースで見ること。

✔ チェックすべきポイント:

  • どの流入経路から来ているか?
  • どのページをどんな順番で見ているか?
  • どこで離脱しているか?
  • なぜ、そこで止まったと考えられるか?

✔ 例:

「LPの離脱率が高い」
→ ヒートマップを見ると、スクロールされていない
→ SNS流入とLPの内容にギャップがある?
→ タイトルやファーストビューの訴求がズレている?

このように、数値と行動の照合から仮説を立てることで、原因が“勘”から“論理”へと変わります。

2-3. ステップ③:課題を分類し、優先順位をつける

課題が見えてきたら、それを整理し、どこから手をつけるかを決めるステップです。

ここを飛ばすと、「全部やろうとして、何も進まない」状態に陥ります。

✔ 課題の分類(よくあるタイプ):

  • 技術系:表示速度、モバイル対応 など
  • UI/UX系:導線設計、ボタン位置、フォーム構成
  • コンテンツ系:コピー、訴求内容、見出し設計
  • 外的要因:競合変化、季節要素、広告効果の変動

✔ 優先度の判断軸:

  • コンバージョンへの影響度
  • 修正にかかるコストと工数
  • 他の施策の効果を左右するボトルネック性

優先順位がつけば、「今やるべきこと」が明確になり、チームの動きも一気に具体化します。

🔑 3ステップのまとめ

課題は「思いつくもの」ではなく、「構造で整理するもの」。

ステップやること意図
① 目的の言語化KGI/KPIを数字+言葉で定義成果判断の軸を明確にする
② 行動との照合数値とユーザー体験の流れをセットで見る詰まりポイントを定量+定性で特定する
③ 分類と優先化課題をグルーピングし、対応順を決める無駄な施策を避け、改善の軸を定める

この3ステップを踏むだけでも、改善の精度とスピードは確実に上がります。

【3】改善の迷子を防ぐ|「ファネル×課題種別マトリクス」で全体を可視化する

kaizen04【3】改善の迷子を防ぐ

分析を進めると、多くの課題が見えてきます。
しかし、あれもこれもと施策に手を出してしまうと、方向性がブレたり、チーム内で話が噛み合わなくなったりしがちです。

そこで有効なのが、「課題を地図化する」視点。
Webサイト全体を俯瞰して、「どこに・どんな問題があるのか」を整理する方法として、“ファネル×課題種別マトリクス”が役立ちます。

3-1. 「どこで」「何が」問題かを構造で把握する

Webサイト上のユーザー行動は、基本的に以下のようなファネル構造(段階的プロセス)で捉えることができます。

フェーズユーザー行動目的
認知広告・SEO・SNSで存在を知る流入を増やす
興味複数ページを閲覧する関心を引き、回遊を促す
比較他社と比較・検討する情報の深掘りを促す
行動購入・問い合わせなどのCVに至る最終アクションへつなげる

このフェーズに対し、課題の「種類」を掛け合わせると、改善ポイントがより立体的に見えてきます。

課題タイプよくある課題例
集客流入が少ない/SEOが弱い/広告ターゲティングが不適切
情報設計導線がわかりにくい/ナビゲーションが混乱
コンテンツ訴求が弱い/コピーが刺さらない/期待値に合っていない
UI/UXフォームが使いづらい/CTAが目立たない
技術面表示速度が遅い/スマホ最適化が不十分

このように、「フェーズ × 課題種別」でマトリクスを構成すると、“課題の場所”と“種類”がクロスで把握できるようになります。

✔ 具体例:

  • 比較フェーズ × コンテンツ → 商品詳細ページの訴求が弱い
  • 行動フェーズ × UI/UX → フォームの構造が離脱を招いている

マトリクスによって、チーム全体で「今どこに集中すべきか?」が直感的に共有できるようになります。

3-2. マトリクスで“視点のズレ”を解消する

Webサイト改善では、関わる部門によって“見るポイント”が異なります。

  • マーケティング部 → 流入数、CTR、直帰率に注目
  • 制作チーム → ビジュアル、UI、読みやすさに注目
  • 営業チーム → CV数、問い合わせの質に注目

それぞれの視点は重要ですが、話し合いがかみ合わない原因にもなりがちです。

マトリクスを使えば、こうした視点のズレを共通構造の上に揃えることができるため、会話が建設的になります。

✔ 例:

  • 「LPの直帰率が高い」
     → 情報が抽象的すぎる
     → 「比較フェーズ × 情報設計」に課題がある

このように、共通言語として整理された課題なら、デザイナー・営業・マーケターが同じ地図の上で議論できます。

3-3. 「施策が点で終わらない」ための俯瞰ツールに

改善施策は、つい“手が届くところ”から着手しがちです。

けれど、全体の構造を見ないまま手をつけると、優先度を間違えて労力がムダになることもあります。

マトリクスを使えば、施策を以下のように整理できます。

  • 点の改善:単一ページの修正(例:CTAの文言変更)
  • 線の改善:導線やステップ全体の再設計(例:LP→フォーム導線の改善)
  • 面の改善:UX全体の再構築(例:ジャーニー全体の見直し)

とくにリソースが限られているチームこそ、「全体像の中で、何を優先するか?」を冷静に判断する視点が重要です。

✅ マトリクス導入のメリットまとめ

課題マトリクス導入で得られる効果
課題がバラバラに散らかるフェーズとタイプで“整理”できる
チーム内で話がかみ合わない共通構造・共通言語により“認識のズレ”を解消できる
施策の優先順位がつけられない“どこに・どんな問題があるか”を見える化し判断できる
改善が場当たり的になりがち点→線→面で“影響度と規模”を踏まえて計画できるようになる

マトリクスは、Web課題の整理だけでなく、チーム全体の意思決定を加速するための“俯瞰ツール”です。

【4】現場で本当に使える!課題分析フレームワーク5選

kaizen04【4】課題分析フレームワーク5選

Web改善では、「何となくこのへんが悪そう…」という感覚で動いてしまいがちです。

けれど、それでは課題の本質にたどりつけず、施策も空回りしやすくなります。

そんなときに頼りになるのが、“思考を構造化し、チームで共有できる”フレームワークです。

ここでは、現場で使える5つの定番フレームを、実践目線で紹介します。

4-1. Why-Why分析|“なぜ?”を繰り返して根本原因にたどり着く

特徴

「なぜ?」を5回程度繰り返し、表面的な問題の奥にある“本当の原因”を見つけるフレーム。

活用場面

  • 施策が空回りしている
  • そもそも何が問題か分からない
  • 言語化できない違和感がある

具体例

「フォーム離脱率が高い」という課題を掘り下げると…

なぜ? → 入力項目が多い  
なぜ? → 各部署の要望を全部盛り込んでいる
なぜ? → 優先順位の議論がされていない
なぜ? → UX視点の設計基準が社内にない
なぜ? → 組織に“ユーザー目線”の文化が根付いていない

→ 本質は「項目数」ではなく、「組織の意思決定構造」にあった。

導入のコツ

  • 抽象語(例:「なんとなく微妙」)が出たら“Why”のチャンス
  • 曖昧な要因を構造に変える力が養われる

4-2. ロジックツリー|課題を分解して“もれなく・ダブりなく”整理する

特徴

課題やテーマを枝分かれで分解し、全体像と改善ポイントを見える化する手法。

活用場面

  • 複雑な問題を構造的に整理したい
  • どこから手をつけるべきかが分からない

例:CVが伸びないときの分解ツリー(一部)

CVが伸びない
├─ 流入が少ない?
│ ├─ SEOが弱い?
│ └─ 広告の設定ミス?
├─ コンテンツが弱い?
│ ├─ ヘッドコピーが刺さらない?
│ └─ CTAと内容にギャップ?
├─ 導線が悪い?
│ ├─ ボタンの位置が分かりづらい?
│ └─ 回遊性が低い?

導入のコツ

  • MECE(漏れなく・重複なく)を意識
  • 分岐を細かくすると、そのまま改善タスク化できる

4-3. KPIツリー|数値を構造化して“詰まり”を定量で特定する

📝 詳細解説記事:
KPIツリーで課題を可視化する方法

特徴

KGI(最終目標)に対して、どのKPI(中間指標)がボトルネックかを視覚的に把握する分析図。

活用場面

  • 「数字は見ているけど改善できない」
  • 「どの数値が問題か分からない」

例:

KGI:月30件のCV
├─ KPI①:訪問数(10,000)
├─ KPI②:LP閲覧率(70%)
├─ KPI③:CTAクリック率(0.6%)
└─ KPI④:フォーム完了率(60%)

→ CTAクリック率が極端に低い=訴求力に問題か?

導入のコツ

  • KPIは「分かりやすさ」より「構造と因果関係」で定義
  • 改善会議の資料にそのまま使える

4-4. ジャーニーマップ|ユーザーの“感情の流れ”から課題を探る

📝 詳細解説記事:
ジャーニーマップの設計方法

特徴

ユーザーの行動・思考・感情を時間軸で整理し、心理的なボトルネックを浮かび上がらせる手法。

活用場面

  • 「なぜ途中でやめたのか」が分からない
  • UXやコピー改善に直結させたい

簡易フォーマット:

フェーズ行動思考感情接点
認知SNSで知る信頼できる?面白い?興味がわくSNS広告
興味LPにアクセス自分に必要?合ってる?ズレを感じるランディング
行動フォーム入力本当に申し込むべき?迷い・不安フォーム画面

→ 「興味フェーズでの訴求不足」が原因なら、LPコピーを再設計。

導入のコツ

  • 感情を想像するだけで、「なぜ離脱したのか」が明確になる
  • ペルソナとのズレにも気づける

4-5. ファネル分析|離脱ポイントを“数値で可視化”する

📝 詳細解説記事:
ファネル分析の実践法

特徴

ユーザー行動を段階的に分解し、各ステップの通過率・離脱率を定量で把握する分析法。

活用場面

  • 「どのフェーズで止まっているか?」を明確にしたい
  • データベースで施策優先度を決めたい

広告クリック:10,000  
→ LP閲覧:6,000(60%)
→ 詳細ページ:2,400(40%)
→ フォーム到達:1,200(50%)
→ 完了:720(60%)

→ 詳細ページで6割が離脱 → ページ構成・導線に問題の可能性

導入のコツ

  • 数字の“減衰ポイント”=ユーザーの“つまずき”
  • 感覚ではなく「定量的根拠」で改善優先度を決められる

✅ フレーム別 ざっくり選び方ガイド

フレーム得意な分析領域こんな時に使う
Why-Why分析原因の深掘り問題の本質が分からない、言語化できないとき
ロジックツリー構造の整理・網羅性要因が複数絡んでおり、全体を可視化したいとき
KPIツリー数値の構造把握数字はあるが、ボトルネックが見えていないとき
ジャーニーマップUX・感情の可視化離脱理由が“心理面”にありそうなとき
ファネル分析離脱の定量分析各ステップの“詰まり”を数値で把握したいとき

【5】ケーススタディ:成果が出ないBtoBサイトをフレームで読み解く

kaizen04【5】ケーススタディ

「アクセスはあるのに、コンバージョンが増えない」

これはWebサイト改善において、最もよくある悩みです。
とくにBtoB領域では、原因が複雑に絡み合い、「どこから手をつけていいか分からない」状態に陥りがちです。

この章では、典型的なケースを想定し、前章で紹介したフレームワークをどのように連携・活用するかを実践的に解説します。

使用するフレームは以下の3つです:

  • KPIツリー
  • ファネル分析
  • Why-Why分析

5-1. 想定ケース:アクセスはあるがCVが増えないBtoBサイト

クライアント状況(仮想)

  • サービス:BtoB向けITソリューションを提供
  • 集客施策:SEO+リスティング広告により月1万PVを獲得
  • 目的:資料請求フォームからのリード獲得
  • 問題:CV数は月10件未満。手応えが感じられない

初期ヒアリングで出た仮説

  • 「デザインが古いからでは?」
  • 「CTAボタンの文言が弱いのかも」
  • 「ページが長すぎて読まれていないのでは?」

→ どれも一理ありそうだが、“どれが本質的な原因か”は不明。

ここから3つのフレームを順に使って分析を進めていきます。


5-2. ステップ① KPIツリーで“詰まりポイント”を構造的に特定する

まずは、コンバージョンまでの数値構造をKPIツリーで分解してみます。

KGI:月30件の資料請求を獲得
├─ KPI①:訪問数(10,000/月)
├─ KPI②:LP閲覧率(70%)
├─ KPI③:CTAクリック率(0.6%)
└─ KPI④:フォーム完了率(60%)

この分析から分かること:

  • 訪問数とLP閲覧率は想定通り → 集客と興味フェーズは問題なし
  • CTAクリック率が極端に低い(0.6%) → 行動前の説得力に課題がある

5-3. ステップ② ファネル分析で“つまずきの位置”を数値で可視化する

次に、ユーザーの行動フローをファネルで段階的に見ていきます。

ステップ通過ユーザー数通過率
LP訪問7,000人100%
中盤までスクロール3,200人約46%
CTAボタンをクリック420人約6%
フォーム入力を完了252人約60%(CTAから)

このファネルから見えてくること:

  • LPの冒頭で大きく離脱(半数以上が中盤前に離脱)
  • CTAの設置位置より前でユーザーの関心が失われている
  • フォーム完了率自体は高い → UIや入力体験は問題なし

→ 問題は「クリック前に“行動する理由”が伝わっていない」ことにありそうです。


5-4. ステップ③ Why-Why分析で“クリックされない理由”を深掘りする

ここからは、見えてきたボトルネック(CTAが押されない理由)を、Why-Whyで掘り下げていきます。

なぜCTAがクリックされない?  
→ 訴求内容が弱く、ユーザーが必要性を感じない

なぜ訴求が弱い?
→ メインコピーが抽象的で、解決する課題が伝わっていない

なぜコピーが抽象的?
→ ペルソナ設計が曖昧で、誰に何を伝えるかが不明確

なぜペルソナ設計が曖昧?
→ 社内視点で作ったコンテンツがベースになっている

なぜ社内視点に偏った?
→ 初期段階でユーザー調査や仮説検証がなされていなかった

本質的な原因は、「誰に何を伝えるのか」が不明瞭なまま作られたLP構成にありました。


5-5. 分析から導いた改善アクションと優先順位

3つのフレームを使って、課題を構造的に可視化できたところで、実際の改善アクションを整理してみましょう。

改善施策課題タイプ優先度
ペルソナ再設計(課題・ニーズの明確化)コンテンツ★★★★★
ファーストビューの訴求文見直し情報設計★★★★☆
CTAの再設計(文言・位置・タイミング)UI/UX★★★☆☆
フォームの簡略化(ステップ・項目調整)技術/UX★★☆☆☆

→ 特に「誰に向けて、どんな価値を伝えるか」を明確にする改善が最優先。
→ 数値と構造に基づいた仮説なので、チームでも納得を得やすく、施策に落とし込みやすい状態です。


🔁 使用したフレームとその役割まとめ

フレーム使いどころ目的
KPIツリー数値構造の分解詰まりのポイントを把握
ファネル分析各フェーズの離脱率を定量で可視化どこで止まっているかを特定
Why-Why分析ボトルネックの深掘りと本質の特定課題を構造的に言語化する

【6】分析を“チームの行動”につなげる|伝わる共有と資料化の工夫

kaizen04【6】伝わる共有と資料化の工夫

どれだけ鋭く課題を分析できても、
それがチームに「伝わらなければ」、改善は動き出しません。

現場でありがちなのが、担当者の頭の中では課題が整理できていても、
他メンバーには“結論だけ”しか共有されておらず、納得感が得られないパターンです。

この章では、構造的に分析した結果を「チーム全体が動ける状態」に変える3つの工夫を紹介します。

6-1. 分析が“個人の頭の中”で止まると、改善は進まない

Web改善が止まる典型パターン:

  • 担当者の頭の中では、すでに構造が整理できている
  • けれど、会議では「とりあえずLPを直しましょう」とだけ伝わる
  • なぜその施策なのか、他のメンバーは根拠が分からない

結果として、「ふわっとした施策」「協力体制が薄い」「中途半端で終わる」が繰り返されます。

課題は、“見つける”だけでなく、“共有できる状態”にしないと意味がないのです。

6-2. フレームは“共通言語”になる

Why-Why分析、KPIツリー、ファネル分析──
これらのフレームは、思考を整理する道具であると同時に、チーム間の“翻訳装置”にもなります。

✔ 例

  • 「なんとなくLPの内容が弱い」 → 抽象的で伝わらない
  • 「KPIツリー上、LP→フォーム遷移率が0.6%と低く、行動フェーズの詰まりが明確」 → 説得力がある

このように、構造+根拠のセットで話せば、職種が違うメンバーとも共通認識が取れるようになります。

6-3. “伝わる資料”にするための3つのポイント

チーム共有に使う資料は、「見た瞬間に構造が分かる」ことが大前提。
以下の3つを意識するだけで、伝わり方が劇的に変わります。

📌 ① 全体構造を1枚で見せる(KPIツリーやファネル図)

  • サイト全体の流れと、詰まりポイントがひと目で分かる
  • 口頭での説明が不要になるくらい“図で伝える”

📌 ② 課題→仮説→改善案をワンセットにする(ロジックツリー型)

  • 「何が問題か」だけでなく、「なぜそうなったか」「どう直すか」までを一気に示す
  • 判断材料が揃っているため、合意形成が早い

📌 ③ 仮説の背景情報は別紙で補足する

  • GAのデータ、ヒートマップ、ペルソナ設定など
  • 直接の資料に入れず、後で確認できるようリンクまたは別シートで添付

✅ 資料構成テンプレート(GoogleスライドやNotionでの活用に最適)

1ページ目:プロジェクト名/目的/日付
2ページ目:KPIツリーまたはファネル図(全体構造)
3ページ目:課題一覧と改善案(優先度順)
4ページ目:分析根拠(Why-Whyやヒートマップ結果など)
5ページ目:仮説条件/ペルソナ/数値の定義(補足)

→ この構成にすれば、後から別のメンバーが見ても「何を、なぜ、どう変えるのか」が理解できます。

🗝 分析は“考えを言語化・可視化して残す作業”

「分析=考察すること」と思われがちですが、
本質は“他者が理解・再現できる形に落とし込むこと”です。

  • なぜその課題を選んだのか?
  • なぜそれを優先すべきなのか?
  • どんな根拠でその施策を提案するのか?

それが言葉と図で共有されていれば、チームは自然と動き始めます。

属人的にならない分析こそ、再現性ある改善の第一歩です。

【7】他業種から学ぶ「構造的分析」のヒント

kaizen04【7】構造的分析のヒント

Web改善というと、「GAやヒートマップ」「SEOやUI」など、どうしても専門的・ツール的な印象を持ちがちです。

けれど本質的な“課題を構造で捉える力”は、実はどんな業種でも使われている汎用スキルです。

この章では、製造・医療・教育といった異分野における分析の考え方を紹介し、
Web改善にどう活かせるかを整理します。

7-1. 製造業|「現象と原因を切り分ける」異常検知の視点

製造業では、小さな異常や不良を見逃さないために、
“現象”と“原因”をきちんと分けて考える習慣が徹底されています。

製造現場の思考プロセス

  • 何が起きたか(=現象)
  • なぜ起きたか(=原因)
  • どう防げるか(=対策)

Webでの応用例

たとえば「直帰率が高い」という状況に対して:

  • 現象:直帰率80%という数値
  • 原因候補:導線が弱い?表示が遅い?期待値と中身が違う?
  • 対策:ヒートマップで離脱箇所を確認 → 表現改善や導線調整を実施

“数値=現象”に飛びつかず、冷静に切り分ける思考が改善の精度を上げます。

7-2. 医療・教育|段階的に仮説を立てて検証する

医師や教師の現場では、症状や成績などの“表れ”から、
背後にある複数の可能性を洗い出し、段階的に仮説を絞っていくのが基本です。

共通する考え方

  • 今見えているのは“結果”であって“原因”ではない
  • 原因は1つではなく、複数の前段階にまたがる可能性がある
  • 仮説を持ち、検証しながら絞り込む

Webでの応用

「フォーム離脱が多い」からといって、すぐにUI改善に走るのではなく:

  • ユーザーはなぜここまで来たのか?
  • モチベーションは?他ページでの体験は?
  • 離脱前に“不安”や“迷い”がなかったか?

ユーザーの前工程や心理的流れを診ることで、思い込みを外せます。

7-3. 共通する「武器」は、“構造の見える化”

業界は違っても、成果を出している現場には、ある共通点があります。

それは、「思考を図やフレームで構造化して見える化している」こと。

各業界の見える化ツール:

  • 製造:QC7つ道具、異常検知チャート
  • 医療:診療プロトコル、検査フロー
  • 教育:評価ルーブリック、授業設計シート

Webで使える“構造の地図”:

  • KPIツリー:数値の因果関係を分解
  • ジャーニーマップ:ユーザー心理を時間軸で整理
  • ファネル分析:離脱箇所を定量で特定
  • ロジックツリー:課題構造の整理
  • Why-Why分析:本質的原因を深掘り

ツールの違いはあっても、「思考を構造でとらえ、可視化して他者と共有する」ことが共通の武器です。

✅ 視点を広げると、分析の“深さ”が変わる

ツールや施策に行き詰まったときこそ、「視点の取り方」を変えてみてください。

他業種の思考法をヒントにすることで、
自分の分析に“深さ”と“構造”が加わり、改善の見え方が大きく変わります。

【8】まとめ|課題が見えれば、Web改善は動き出す

kaizen04【8】まとめ

Webサイトの改善で、いちばん避けたいのは
「とりあえず施策を打ってみる」ことです。

成果が出ないときに必要なのは、
“手数”ではなく、“見方の変化”。

数字を見るだけでは、本質は見えてきません。
改善のカギは、課題を“構造”で捉えることにあります。

この記事でお伝えしたこと(要点まとめ)

視点内容
なぜ課題が見えないのか数字は「現象」であって「原因」ではない。背景構造の理解が必要
分析の基本ステップ①目的の明確化 → ②ユーザー行動との照合 → ③課題の分類と優先付け
フレームの使い方Why-Why/KPIツリー/ファネルなどで課題を構造的に可視化・共有する
チームでの共有の工夫図や仮説・根拠をセットで資料化し、共通言語に落とし込む
他業種の視点からの応用製造・医療・教育にも共通する「構造思考」でWeb改善を深める

🧭ここから始める「最初の1歩」アクション

読んだだけで終わらせず、ぜひ“手を動かす”ところまで進めてください。

明日からできる、3つの具体アクションをご提案します。

  • KPIツリーを手書きで描いてみる
     → 成果の構造を“見える化”してみる
  • 気になるページでWhy-Why分析をしてみる
     → 「なぜCVしないのか?」を5回掘り下げるだけでも思考が整理される
  • ファネル×課題種別マトリクスを使って課題を地図化する
     → 「点」ではなく「全体の流れ」の中で課題を把握できる

最後に:Web改善は“見る力”で変わる

Webサイトの成果を左右するのは、アクセス数やビジュアルよりも、
「課題をどう捉えるか」という視点です。

  • 思いつきではなく、構造から見極める
  • ツールではなく、思考の順序を持つ
  • 分析を、属人的ではなく共有可能なプロセスにする

この3つを意識するだけで、改善の質は確実に変わります。

施策に走る前に、まずは「構造を見る力」を育てる。
そこから、本当の改善が始まります。

編集後記

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

私自身、これまで多くのWeb改善の現場に立ち会ってきました。
クライアントとの会話でも、社内のプロジェクトでも、最初に必ずぶつかるのは「何から手をつければいいか分からない」という声です。

施策は山ほどある。ツールも揃っている。
なのに、動いても成果につながらない——
その理由は、“やり方”の問題ではなく、「見方の順番」がなかっただけなのかもしれません。

思考を構造化して言語化する。
仮説をチームで共有する。
それだけで、改善は一気に前に進みます。

この記事で紹介したフレームワークやマトリクスは、完璧に使いこなす必要はありません。
まずは一つ、ピンときたものから手を動かしてみてください。

KPIツリーを描いてみる。
マトリクスに自社サイトをあてはめてみる。
それだけでも、あなたのチームが“どこに立っていて、どこへ進むべきか”が見えてきます。

Web改善に迷わないために、あなた自身の“地図”を持つ。
この記事がその第一歩となれたなら、何より嬉しく思います。

参考・参照サイト一覧

この記事は、筆者の現場経験と、信頼性の高い一次情報をもとに構成しています。
Web改善において重要な「構造的思考」や「分析フレーム」の理解を深めるうえで、以下の資料・リンクを参考にしました。

📘 公的機関・業界団体・企業オウンドメディア


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これらの資料は、ツールに頼らず「構造で考える力」を高めるためのベースとして活用できます。
分析の精度を高めたいとき、社内で説得力ある改善案を共有したいときに、ぜひご活用ください。

執筆者:飛蝗
SEO対策やウェブサイトの改善に取り組む一方で、社会や経済、環境、そしてマーケティングにまつわるコラムも日々書いています。どんなテーマであっても、私が一貫して大事にしているのは、目の前の現象ではなく、その背後にある「構造」を見つめることです。 数字が動いたとき、そこには必ず誰かの行動が隠れています。市場の変化が起きる前には、静かに価値観がシフトしているものです。社会問題や環境に関するニュースも、実は長い時間をかけた因果の連なりの中にあります。 私は、その静かな流れを読み取り、言葉に置き換えることで、「今、なぜこれが起きているのか」を考えるきっかけとなる場所をつくりたいと思っています。 SEOライティングやサイト改善についてのご相談は、X(@nengoro_com)までお気軽にどうぞ。
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