喫煙していないのに肺がんになる人が増えている。
都市に暮らしていると、そんな現実が少しずつ目に入るようになってきました。喫煙率は大きく下がり、街中でも煙を見る機会は減りました。それでも肺がんの数字は思ったほど減っていかない。ここに、多くの人がうっすら抱える違和感があります。
都市では、PM2.5のような細かい粒子に触れる時間が長くなり、タバコを吸わない人でも負荷が積もることがあります。通勤のルート、屋外での運動の時間、部屋の窓を開けるタイミング。日々の小さな選び方で、吸う空気は静かに変わっていきます。
この記事では、「非喫煙者の肺がんリスク」「PM2.5と都市生活の関係」を、できるだけ生活目線で整理します。
【1】喫煙率が下がっても肺がんの曲線が素直に動かない理由をまず見ておく

街を歩くと、昔ほどタバコの煙に出会わなくなりました。喫煙所も減り、吸う人も着実に減っています。なのに肺がんの数字は思ったように下がらない。この違和感を、あなたもどこかで覚えたことがあるかもしれません。
まずは今の日本の数字をそっと見ておきます。喫煙率の落ち方と肺がんの推移。この二つを並べるだけで、抱えていたモヤモヤの輪郭が見えてきます。
1-1. 喫煙率は急減したのに肺がんは高止まりしたままという数字の事実
日本の喫煙率はこの20年で大きく下がりました。生活の実感とも重なる動きです。
成人喫煙率の推移
| 年 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 2001年 | 46.8% | 15.0% |
| 2022年 | 25.4% | 7.7% |
出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」
しかし肺がん死亡率は、喫煙率ほどには動いていません。
肺がん死亡率(年齢調整死亡率:人口10万対)
| 年 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 2000年 | 65.0 | 20.5 |
| 2022年 | 73.2 | 23.4 |
出典:厚生労働省「人口動態統計(年齢調整死亡率)」
喫煙率は急落したのに、肺がんは高止まり。この数字のズレが、本記事の出発点になっています。
1-2. 多くの人が抱える違和感の正体
喫煙する人が減ったなら肺がんも減るはずだ。
そう思うのは自然です。私自身も同じ感覚を持っていました。
ところが数字を見ると、その直感と現実がぴたりとは重ならない。喫煙の影響を前提にしながらも、喫煙だけでは説明しきれない部分が確かに残っています。まずはその引っかかりを共有しておきます。
1-3. 本記事の立場は、喫煙のリスクを押さえつつ説明が届かない部分を拾うこと
喫煙が肺がんの最大要因であることは変わりません。ただ、喫煙率が下がったからといって肺がんがすぐ減るわけではありません。
そこでこの記事では次の立場で読み解きます。
- 喫煙リスクを土台として押さえる
- 非喫煙者の肺がんが目立ち始めた背景を生活の視点で整理する
- 都市の空気、PM2.5、行動の積み重なりを構造的に捉える
【関連記事】
都市部で肺がんが減りきらない理由は、一つの要因だけでは説明しきれません。
背景の“数字のずれ”を整理した記事も合わせて読むと、構造が掴みやすくなります。
【2】PM2.5と肺のあいだで何が起きているのか

この章では、肺がんという病気が数字として動き始めるまでに大きな時間差があることを整理します。喫煙率の低下と肺がんの高止まりが噛み合わない背景には、この時間差が深く関わっています。さらに、かつての日本の空気環境やPM2.5の影響が、いまの統計に遅れて響いてきます。
2-1. 肺がんは結果がすぐに表に出ない
肺がんは進行がゆっくりで、細胞の傷が長い時間をかけて積み重なります。タバコ、排気ガス、PM2.5などの刺激が何年もかけて重なり、その結果が数字として表に出るのはずっと後です。
専門家の間では、潜伏期間が二十年以上に及ぶことがあると言われています。
いま目にしている統計は、現在の空気ではなく、1980〜2000年代にかけての生活環境を映しています。
喫煙率の下落と肺がんの高止まりが噛み合わない理由が、ここで少し見えてきます。
2-2. 日本の空気環境の履歴が、現在の数字をゆっくり動かしている
喫煙の影響だけでは説明しきれない背景として、過去の大気環境があります。2000年代初頭まで、都市部のPM2.5濃度は今より高い水準でした。排気ガス、工場の排出、海外から流れ込む越境汚染が重なり、微粒子への曝露は長期間続いてきました。
その影響を裏づける国内の研究があります。
PM2.5長期曝露と死亡リスク(JPHC Study)
| PM2.5濃度(μg/m³) | 全死亡リスク | 肺がん死亡リスク |
|---|---|---|
| 10未満 | 基準 | 基準 |
| 10〜15 | 1.07倍 | 1.16倍 |
| 15〜20 | 1.14倍 | 1.24倍 |
出典:国立がん研究センター「JPHC研究」環境要因解析
この濃度帯は、当時の都市部では珍しくありませんでした。高めのPM2.5に触れ続けた履歴が、現在の肺がん統計に遅れて反映されていると考えると、数字のズレは不自然ではありません。
2-3. 今日の空気が、未来の統計をゆっくり形づくる
肺がんの統計は、過去の生活環境の履歴を映します。
だから今の空気が改善されても、その効果が数字に現れるまでには時間がかかります。
日本ではディーゼル規制や排ガス基準の強化が進み、都市の空気は少しずつ良くなっています。ただ、粒子の成分や大きさによって健康影響が変わる可能性もあり、研究は続いています。
今日の空気は、二十年後、三十年後の統計をゆっくり動かしていきます。
いま見ている数字は、過去の空気の名残でもあると覚えておくと、喫煙率とのズレが納得しやすくなります。
【3】都市の空気はいつも同じではない

街を歩いていると、特に気にしていなくても「今日はなんだか空気が重いな」と感じる瞬間があるかもしれません。私も通勤の途中でふっと息が詰まるような感覚を覚えることがあります。
この章では、そうした“なんとなくの違い”がどこから来るのかを、環境側の条件にしぼって整理していきます。
3-1. 交通や工場、越境汚染が混ざり合う都市の空気
都市の空気は、一日の中で静かに表情を変えます。車の排ガス、タイヤの摩耗粉、近くの工場、そして海外から入ってくる粒子。それらが少しずつ混ざり、空気の質が時々で変わります。
あなたも、同じ通りを歩いているのに「今日は匂いが違う」と思ったことがあるかもしれません。濃度が急に跳ね上がっていなくても、混ざり方の違いで呼吸のしやすさが変わることがあります。
都市の空気は一見透明でも、背後では複数の条件が絶えず動いています。
3-2. 朝と夕方は空気が重くなりやすい
朝の通勤時間や夕方の帰宅ラッシュ。なんとなく息が深く入りにくい、そんな感覚を覚えたことがある人も多いでしょう。交通量が増えて空気が動きにくくなり、粒子が地表近くに残るためです。
私自身、朝の交差点で前の日の名残のような匂いを感じたことがあります。特別な装置がなくても、鼻や喉の反応で気づくことがあるものです。
大きく濃度が跳ねていなくても、こうした小さな滞留が、呼吸に影響を与えることがあります。
3-3. 家の向きや道路との距離で空気が変わる
住んでいる場所でも空気は変わります。道路に近い部屋の窓を開けたとき、微妙に重さを感じることはないでしょうか。風の向きで日によって入り込む粒子が変わり、同じ家の中でも部屋ごとに空気の質が違うことがあります。
高層階なら安全という印象もありますが、風の抜け方によっては上の階に粒子がたまりやすい日もあります。私もある年、引っ越した先でその違いをはっきり感じました。窓を開ける時間帯や方角で空気の肌ざわりが変わるのです。
一つひとつの差は小さくても、暮らし続けると積み重なり、呼吸の負担に静かに影響していきます。
【4】非喫煙者でも負荷が積もる、都市の日常の動き方

ここでは、人側の行動によって空気との距離がどう変わるのかを整理します。
タバコを吸わない人でも、日々の何気ない選び方でPM2.5に触れる回数が増えることがあります。自分では意識していなくても、呼吸が深くなる場面や外にいる時間帯の変化がゆっくり積み重なります。
あなた自身にも、心当たりがあるかもしれません。
4-1. ランニングや自転車通勤で呼吸が深くなる
健康のために走る日も、自転車で移動する日もあります。運動すると自然に呼吸が深くなり、普段より多くの空気を取り込むようになります。都市部だと、交通量の多い道を通るだけで吸い込む粒子の量が変わります。
走ること自体はとても良いことです。ただ、私も朝のランニングで「今日は少し空気が重いな」と感じた経験があります。道を一本変えるだけで呼吸のしやすさが違う日があるのです。
無理をする必要はなく、空気が濃くなりやすい時間帯やルートを少しだけ意識するだけで負荷は変わってきます。
4-2. テラス席や屋外イベントで感じる空気の変化
外で過ごす時間が増えると、気持ちは軽くなるのに空気の状態は日によって変わります。
カフェのテラス席、屋外フェス、フードイベント。開放的で楽しい場面ですが、車道に近かったり、ビル風が抜ける位置だったりすると、粒子が思った以上に集まりやすくなることがあります。
あなたも、テラス席で「今日は風が強いな」と感じた日があるかもしれません。その風向きが、たまたま粒子を運んでくる方向と重なっていたということがあります。
喫煙とは関係のない、環境による負荷です。
4-3. 外で過ごす時間が増えると呼吸の回数も増える
働き方が変わり、外にいる時間が増えた人は多いはずです。リモートで働きながら外で作業する日、通勤と打ち合わせが交互に入る日、昼休みに外で食べる日。
以前よりも呼吸の回数が単純に増えるため、粒子に触れる機会も増えていきます。
私も取材や子どもの送り迎えで外にいる時間が増え、季節や時間帯で空気の温度や匂いが変わるのをよく感じます。たったそれだけの違いでも、積み重なると呼吸の負荷に影響することがあります。
4-4. 体に良い習慣が別の負荷を生むこともある
早起きして軽く走る。よく歩く。外で気分転換する。
どれも健康的ですが、その行動が空気との距離を縮めることがあります。例えば早朝ランニングは爽やかな時間帯ですが、夜間に滞留した粒子がまだ抜けきっていない日もあります。
健康のための行動が、別の側面では小さな負荷になる。
都市では、こうした矛盾がときどき顔を出します。行動そのものをやめる必要はなく、空気のクセを少しだけ知っておくと選び方が変わっていきます。
【5】喫煙・受動喫煙・PM2.5は同じように肺に届くわけではない

肺がんの話題ではどうしても喫煙が中心に語られます。ただ、都市で暮らしていると、タバコとは別のかたちで負荷が積み重なることがあります。
ここでは、三つのリスクがどう肺に入るのか、その“入り方の違い”を整理します。
あなたの生活に心当たりがある部分もあるかもしれません。
5-1. タバコは短い時間で強い負荷、PM2.5は静かに積み重なる
タバコの煙は、短時間でも強い刺激になります。粒子が濃く、有害物質も多いため、肺に届く負荷が一気に高まります。受動喫煙も程度は違っても、濃い煙を吸い込む点では似ています。
これとは対照的に、PM2.5は一度の刺激が弱い分、触れる回数の多さが影響します。
たとえば、
- 通勤で道路沿いを歩く
- 朝の滞留した空気の中を走る
- 風の弱い日の街を移動する
こうした繰り返しが、ゆっくり積み重なります。
私自身も、深呼吸する場面が多い日ほど、空気の質の違いを感じやすくなることがありました。
5-2. 非喫煙者でも重なり方で負荷に差が生まれる
タバコを吸わない人でも、受動喫煙、交通由来の粒子、街に残った空気など、複数の要因が一日の中で重なることがあります。
例えば、
- ランニングの時間帯が通勤ラッシュと重なる
- 自宅の窓が道路に向いている
- テラス席で風が道路側から入る
こうした小さな条件が重なると、吸い込む量に違いが出ることがあります。
喫煙のように強い要因が一つあるわけではなく、小さな負荷が静かに折り重なるイメージです。
5-3. 場所によって混ざり方が違い、負荷の種類も変わる
同じ肺への影響でも、場面によって吸い込む粒子の種類は変わります。
屋内では受動喫煙が中心になり、屋外では交通や工場由来の粒子が混ざり、風向きによって遠くの地域の粒子が入り込む日もあります。
日常の移動や行動が変わるたびに、肺に入る成分が少しずつ変わっていきます。
都市の呼吸環境が複雑に見えるのは、この“混ざり方の違い”があるためです。
【6】空気にも“流れやすい場所”と“たまりやすい場所”がある

都市の空気は、どこでも均一ではありません。同じ街の中でも、歩く場所を少し変えるだけで息のしやすさが違うことがあります。
私も取材で街を歩くと、曲がり角ひとつで空気の温度が変わるように感じることがあります。
この章では、地形や建物の配置が空気の流れをどう変えるのかを、無理のない範囲で整理します。専門的な言葉は使わず、生活に近い感覚でまとめました。
6-1. ビルの谷間や川沿いは粒子が残りやすい
高いビルが並ぶ場所では、風がまっすぐ抜けず、地表近くの空気がとどまりやすくなります。粒子が逃げにくいので、朝や夕方の交通量が多い時間帯は空気の重さを感じる人もいるはずです。
川沿いも同じです。低い地形がくぼみのように働き、粒子が流れ込みやすくなります。
散歩コースで「川に近づくと少し湿った匂いが混ざる」と感じたことがあるなら、その差が空気の流れにも影響しているのかもしれません。
6-2. 高層階でも濃くなる日がある
高層階は空気がきれいという印象があるかもしれません。けれど、気温や風の条件によっては、上の階のほうが濃くなる日もあります。
冷たい空気が下に、暖かい空気が上にとどまる逆転層という現象が起きると、粒子が上へ抜けずその高さにたまってしまうことがあります。
私も出張で滞在した高層ホテルで、朝いちばんの空気が思ったより重いと感じたことがありました。高さで安全が決まるわけではないということを実感した場面です。
6-3. 歩く場所や窓の向きだけで空気が変わる
道路の左右で空気が違うと感じた経験はありませんか。風向きや建物の並び方で粒子がどちら側に寄るかが変わります。
同じ道でも反対側の歩道に移るだけで、匂いや重さが少し和らぐことがあります。
家でも同じです。窓の向き、開ける時間帯、風の入り方。小さな条件で空気が変わります。
一つひとつは小さくても、毎日の積み重ねで呼吸に影響することがあります。
【7】これからの都市と空気はどう変わるのか

ここまで、都市の空気が「いま、私たちの呼吸にどう関わっているか」を見てきました。
この章では、未来の空気がどう変わり、それがいつかの肺がん統計にどう響くのかを、生活の延長線で整理します。
急に専門的な話へ飛ぶのではなく、読者が迷わないように最初に少しだけ橋渡しをしておきます。
都市の空気は、今日の生活環境だけで決まりません。街のつくり方、交通政策、車の種類──その積み重ねが、10年先・20年先の呼吸に静かに影響します。
あなたの暮らしにも、どこかで関わってくる話かもしれません。
7-1. EVが増えても粒子はすぐには減らない
電気自動車が増えると排ガスは確かに減ります。
ただ、PM2.5は排ガスだけで生まれるわけではなく、ブレーキやタイヤの摩耗によっても発生します。車が走る限り、粒子の一部はどうしても残ります。
私もEVタクシーに乗ったときに「排ガスの匂いは少ないのに、道路沿いの空気は重い日がある」と感じたことがあります。
車種が変わっても、交通量や道路の混みやすさが変わらなければ、空気が濃くなる時間帯は残ることがあります。
7-2. 海外の交通規制は効果があるが偏りも生まれやすい
ロンドンの中心部では、車両の進入を制限する取り組みが行われています。粒子は確かに減り、街の空気も少し軽くなりました。一方で、周辺の道路に交通が流れ、そちらの空気が重くなった例もあります。
都市全体を一度に変えるのは難しく、場所によって改善のスピードが違うのが現実です。この偏りは、日本の都市でも起こり得ます。
7-3. 日本の都市で変わりやすい部分と動きづらい部分
日本では、老朽化したバスやトラックの入れ替えが進み、排ガス対策も強化されてきました。ここは比較的変わりやすい部分です。
ただ、道路の幅や建物の密集度が高い街では、風が抜けにくく、粒子が滞留しやすい日がどうしても生まれます。構造そのものが影響しているため、短期では変わりにくい部分です。
私も都心から川沿いの街へ移動したとき、空気の軽さが変わるのを感じました。環境そのものの違いが、呼吸のしやすさにも表れます。
7-4. これからは街のつくり方が呼吸を左右する
長い目で見ると、車の種類だけでは都市の空気は大きく変わりません。
建物の高さ、道路の幅、緑の配置、風の通り道。街そのものの設計が、空気の流れを決めていきます。
住む場所や働く場所を選ぶときに、少しだけ空気の流れに目を向ける未来が来るかもしれません。
大げさな話ではなく、暮らしの延長線にある「都市の呼吸」を知っておくことで、選び方が穏やかに変わっていきます。
【8】今日から少しだけできる、PM2.5との距離のとり方

都市の空気を一気に変えるのは難しいですが、日常の小さな選び方なら今日から変えられます。
この章では、複雑な対策を並べるのではなく、最初に結論を三つだけ示しておきます。
- 換気のタイミングを整える
- 外で吸う空気の選び方を変える
- 室内の粒子を増やさない
この三つだけでも、呼吸の負荷が静かに変わっていきます。あなたの生活でも無理なく続けられる範囲の話にしぼって書いていきます。
8-1. 換気のタイミングを少し見直す
朝や夕方は交通量が増え、粒子が地表にたまりやすくなります。
窓を開ける習慣があるなら、朝の rush が落ち着いた頃や夜の遅い時間に少しずらすだけで、入り込む粒子が変わることがあります。
私も料理のあとに窓を開ける時間をずらしただけで、部屋の空気の軽さが少し変わった日がありました。
風向きの違いだけでも肌ざわりが変わるので、今日は重いなと思う日は無理に換気しないのも一つの選び方です。
8-2. 外に出る時間帯や場所の選び方で負荷が変わる
乾燥して風の弱い日は、粒子が滞留しやすくなります。
逆に風が強い日は粒子が流れ、空気が軽くなることがあります。天気アプリのPM2.5予測を軽く見るだけで、散歩やランニングの時間を調整しやすくなります。
あなたも、走ってみたら「今日は息が入りやすい」と感じた日があるかもしれません。その感覚が、空気の状態をとらえていることがあります。
8-3. 室内で細かい粒子をなるべく増やさない
室内の粒子は、意外と日常の行動で増えます。揚げ物を強火で一気に調理すると一時的に粒子が増えることがあり、暖房の使い方でも空気が重くなることがあります。
換気扇をしっかり回したり、調理後に少しだけ窓を開けると空気が落ち着きます。
空気清浄機を使う場合は、部屋の中央に近い位置に置くほうが効果が安定します。毎日意識する必要はなく、気になったときに整えるくらいで十分です。
8-4. 生活を大きく変えなくても続けられる工夫
負担になる対策は続きません。
歩く道を一本だけ変える、空気が重い時間帯を避ける、運動する時間を少しだけ前後させる。
それだけでも呼吸のしやすさは静かに変わっていきます。
私もランニングコースを変えただけで、喉の違和感が少ない日が増えました。大きな努力はいりません。生活の輪郭を変えずにできる範囲で十分です。
【9】喫煙だけでは語りきれない理由を、最後にそっとまとめておく
ここまで読み進めてくださったあなたなら、喫煙率の低下と肺がんの数字がうまく噛み合わない理由が少し見えてきたかもしれません。
9-1. 肺がんは“いまの生活”ではなく“過去の環境”が映る
肺がんは進行がゆっくりで、数字が動き始めるまでに長い時間がかかります。
そのため、今日の空気よりも、20年前の空気の影響がいまの統計に反映されることがあります。
喫煙率が下がっても数字がすぐに動かないのは、この時間差があるからです。
9-2. 都市では複数の小さな負荷が静かに折り重なる
PM2.5、交通量、時間帯、室内の空気。
どれも単体では大きな負荷ではなくても、都市で暮らすと少しずつ重なります。
タバコの有無だけでは説明しきれない背景があり、非喫煙者の肺がんが目立って見える理由も、こうした静かな積み重ねにあると感じます。
あなたにも、思い当たる生活の癖があったかもしれません。
9-3. 今日できる小さな選び方で、呼吸の負担は軽くなる
空気そのものを変えるのは時間がかかります。
けれど、
- 空気が濃くなる時間帯を避ける
- 歩く道を一本ずらす
- 換気のタイミングを少し変える
こうした小さな選び方だけでも、呼吸の負担はゆるやかに変わっていきます。
大げさな対策をしなくても、生活の輪郭を変えない範囲で続けられます。
編集後記
書き終えるまでのあいだ、ふとした拍子に自分の呼吸へ意識が向くことが何度かありました。外を歩いたときの重さや、家で窓を開けた瞬間の匂いの違い。普段なら流してしまう小さな変化が、今回は少しだけ敏感に感じられました。
都市の空気は思うようには変わりませんが、暮らしの中で選べることは意外とあります。窓を開けるタイミングをずらしたり、歩く道を変えたり。ささやかな工夫でも、呼吸が楽になる日が増えるかもしれません。
あなたの毎日の中でも、無理のない範囲で役立ててもらえたらうれしいです。
編集方針
・喫煙率の低下と肺がんの動きのズレを再定義。
・タバコ以外の環境要因が現実に存在することを明確に。
・都市生活者が抱く不安を構造的な理解へ導くことを目的とする。
・科学的根拠と生活実感の両面から本質を捉える姿勢を重視。
・今日から取れる小さな行動を、専門性に基づいて提示。
参照・参考サイト
- 大気汚染(PM2.5)に起因するがんの割合|国立がん研究センター https://epi.ncc.go.jp/paf/evaluation/9156.html
- 大気汚染(PM2.5)と死亡との関連について|国立がん研究センター https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8912.html
- 微小粒子状物質による長期曝露影響調査報告書(環境省)
https://www.env.go.jp/air/report/h20-09/main.pdf



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