「プロンプト」と聞くと、長い指示文や特別な書式を思い浮かべるかもしれません。
しかし、生成AIへの短い質問もプロンプトの一種です。
普段どおり自分のことばで質問できているのに、わざわざ基本を知る意味はどこにあるのでしょうか。
同じ質問でも、簡単に説明してほしい場合と、詳しく比較してほしい場合では、求めている回答は異なります。
生成AIには、回答の視点や詳しさ、形式、対話の進め方などを指定することもできます。
ただし、指示を詳しくすれば必ずよい回答になるわけではなく、短い質問で十分な場合もあります。
プロンプトの基本は、決まった型を暗記することではありません。
どのような聞き方があり、それぞれ何を変えられるのかを知っておくことにも意味があります。
プロンプトの意味や聞き方を工夫する理由、メリットとデメリットを踏まえ、普段の質問に使える指示の種類を短い例とともに紹介していきます。

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この記事の内容を、音声で聴きやすい形に再構成しています。 プロンプトの基本と、生成AIへの聞き方を調整する5つの指示について、移動中や作業中にも聴いていただけます。
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【1】プロンプトとは?普通の質問との関係と基本的な役割

生成AIに渡す情報と、指定していない前提がどのように扱われるのかを、身近な例から確認します。
プロンプトは生成AIに与える質問や指示、入力情報
プロンプト:生成AIに与える質問や指示、回答の材料となる情報のことです。
たとえば、「次の文章を短く要約して」と頼む場合、要約してほしい文章も一緒に入力します。
このとき、作業を伝える指示だけでなく、要約対象の文章もプロンプトに含まれます。
普通の質問もプロンプトの一種
「京都への行き方を教えて」という短い質問もプロンプトです。
特別な書式や長い指示文を用意する必要はありません。
また、「東京から新幹線で」「乗り換えを少なくして」など、必要に応じて条件を加えることもできます。
普段の質問も、条件を添えた依頼も、生成AIへの入力という点では同じプロンプトです。
プロンプトで伝える内容と、生成AIが補う前提
生成AIは、入力された文章や文脈を手がかりに回答を生成します。
そのため、目的や条件がすべて指定されていなくても回答できる場合があります。
これは、人に「資料を作ってください」と頼む場面に少し似ています。
誰に見せるのか、何に使うのかが伝わらなければ、相手は目的を推測して作業を進めることになります。
生成AIも、指定されていない前提を文脈から補って回答する場合があります。
ただし、その前提が利用者の意図と一致するとは限りません。
【2】なぜプロンプトの聞き方を工夫するのか

生成AIから回答が返ってきても、その内容が自分の用途に合っているとは限りません。
同じ質問でも、利用者によって求める回答は異なる
たとえば、「防災対策を教えて」と質問したとします。
一人暮らしの人と、小さな子どもがいる家庭では、必要な備えが違います。
家庭で実践するために知りたいのか、仕事で防災資料を作りたいのかによっても、欲しい情報は変わってきます。
目的や背景を伝えることで回答の方向性を調整できる
そこで、質問に目的や背景を添える方法があります。
先ほどの質問に「小さな子どもがいる家庭で、週末に準備できる防災対策を知りたい」と加えてみます。
すると、家庭の状況や準備できる時間を踏まえた回答を期待できます。
誰が使う情報なのか、何のために知りたいのかを伝えると、生成AIが回答を組み立てる際の手がかりが増えます。
ただし、背景を伝えても、必ず意図どおりの回答になるわけではありません。
条件の指定が回答の内容や幅に与える影響
目的や背景に加えて、回答に求める条件も指定できます。
たとえば、「持ち出し袋の準備に絞って」と伝えれば、回答で扱う話題を限定できます。
「300字以内で」と指定すれば、回答の長さを調整するよう求められますが、詳しい情報が省かれる場合もあります。
また、話題を限定すると、関連する選択肢が取り上げられないこともあります。
【3】プロンプトで指定できることの種類

生成AIへの指示は、してほしい作業を伝えるだけではありません。
回答の視点や形式、対話の進め方なども含め、何を指定するかによって次の五つに整理できます。
| 指定の種類 | 主な役割 |
|---|---|
| 作業の指定 | 何をしてほしいかを伝える |
| 視点の指定 | どの立場や観点から考えてほしいかを伝える |
| 背景・条件の指定 | 回答に必要な状況や制約を伝える |
| 形式・対話の指定 | 回答の見せ方や、やり取りの方法を伝える |
| 例示による指定 | 見本を使って希望する仕上がりを伝える |
これは指示を理解するための分類であり、唯一の正しい分け方というではありません。
また、すべてを組み合わせる必要もありません。
要約や比較など、してほしい作業を指定する
作業の指定では、生成AIに何をしてほしいのかを伝えます。
たとえば、文章の要約、外国語の翻訳、情報の比較、アイデア出しなどがあります。
同じ文章を渡しても、要点をまとめるのか、問題点を分析するのかによって、求める作業は異なります。
立場や考え方など、回答の視点を指定する
生成AIに、特定の立場や観点から回答してもらう方法もあります。
たとえば、教師の視点なら学習者への説明、編集者の視点なら文章の伝わりやすさなど、注目してほしい部分を示せます。
ただし、役割を指定しても、生成AIが実際にその専門資格や経験を持つわけではありません。
回答の視点を方向づけるための指定です。
状況や制約を伝える背景情報・条件の指定
背景情報:生成AIが回答を考えるための状況や目的を伝える情報です。
誰に向けた説明なのか、どのような場面で使うのかといった情報が該当します。
一方、条件は、回答に求める範囲や制約を伝えるものです。
文字数の上限、扱う話題の範囲、避けてほしい内容などが該当します。
背景情報と条件は重なる場合もありますが、前者は回答を考える手がかり、後者は回答に求める制約という違いがあります。
回答の形式や対話の進め方を指定する
回答の内容だけでなく、情報の見せ方も指定できます。
たとえば、箇条書き、表形式、見出し付きの文章などです。
また、一度に回答してもらうのではなく、質問を交わしながら進めるよう指定することもできます。
回答形式は情報をどのような形で受け取るか、対話の進め方はどのような順序でやり取りするかを調整するものです。
回答例を示して仕上がりの方向を伝える
希望する仕上がりを言葉だけで伝えにくいときは、見本となる回答を示すこともできます。
例示:生成AIに望ましい回答の見本を渡し、表現や構成などの参考にしてもらうことです。
たとえば、商品紹介文を作る場合、希望する文体の短い見本を示すことで、言葉遣いや情報の並べ方を伝えられます。
ただし、見本は必須ではありません。
作業内容や条件を伝えるだけで十分な場合もあります。
【4】よくあるプロンプトの書き方と指示例
前章で整理した五つの指定要素は、普段の質問に短い言葉を加えるだけでも使えます。
具体的な書き方と、期待できる回答の変化を見てみましょう。
| 指定の種類 | 短い指示例 | 期待できる回答の変化 |
|---|---|---|
| 作業の指定 | 「AとBの違いを価格と使いやすさの観点で比較して」 | 指定した観点で違いが整理される |
| 視点の指定 | 「初めて利用する人の立場から懸念点を挙げて」 | 利用者側の懸念に注目した回答になる |
| 背景・条件の指定 | 「中学生向けなので、専門用語には短い説明を添えて」 | 対象読者に合わせた説明になる |
| 形式・対話の指定 | 「比較結果を表にして」 | 情報が表形式で整理される |
| 形式・対話の指定 | 「必要な情報が足りなければ、回答する前に質問してください」 | 不足情報を確認するやり取りを期待できる |
| 例示による指定 | 「次の文章と同じ文体で書いて」 | 見本に近い文体で回答するよう促せる |
これらは回答の変化を期待するための指示であり、必ずそのとおりになるとは限りません。
説明の難易度や詳しさを調整する指示例
生成AIの説明が難しいと感じた場合は、対象読者や専門用語の扱い方を指定できます。
たとえば、「難しく書かないで」と伝えるだけでも、説明を簡単にするよう求められます。
ただし、何をもって簡単とするかは曖昧です。
表の例では、「中学生向け」という対象読者に加えて、「専門用語には短い説明を添えて」という具体的な条件を示しています。
単に文章を簡単にするのではなく、どの部分をどう説明してほしいのかが伝わる書き方です。
説明の詳しさを変えたい場合も、文字数や扱ってほしい範囲を指定する方法があります。
情報を比較・整理してもらう指示例
複数の情報を比べたい場合は、比較する対象だけでなく、注目したい項目も伝えられます。
表の商品比較の例では、「AとBを比較して」という作業の指定に、「価格と使いやすさ」という観点を加えています。
商品について個別に説明してもらう場合とは異なり、共通の項目で違いを整理するよう求める書き方です。
また、比較ではなく要約を頼む場合も、何を中心にまとめてほしいのかを伝えられます。
別の視点や反例を求める指示例
サービスの企画案を検討するときは、初めて利用する人の立場から懸念点を挙げてもらう方法があります。
企画を作る側の視点では気づきにくい使いづらさや、説明不足を検討する手がかりになります。
また、考え方の弱点を探したい場合は、反対の立場からの意見や、当てはまらない例を求めることもできます。
ただし、生成AIが挙げた懸念点や反例が妥当とは限りません。
実際の判断に使う際には、内容を確認する必要があります。
回答形式や対話の進め方を変える指示例
表形式は複数の項目を並べて比較する場面に、番号付きの説明は作業の順序を確認する場面に使えます。
どちらも、回答で扱う内容ではなく、情報の見せ方を指定するものです。
一方、依頼内容がまだ明確でない場合は、回答する前に質問してもらうよう指定できます。
不足している情報を確認しながら、依頼を具体化したい場面で使える方法です。
希望する文章の仕上がりを伝えたいときには、見本を添える方法もあります。
表の例示による指定では、参考にしてほしい文章そのものを渡すことで、文体や構成の方向性を示しています。
回答形式、対話の進め方、見本の提示は、それぞれ異なる働きを持つ指定です。
一つの質問にすべてを加える必要はありません。
【5】プロンプトを工夫するメリットとデメリット

プロンプトを工夫することで、作業の手間を減らせる場合があります。
一方、指示を考える時間がかかりすぎることもあり、期待どおりの結果が得られるとは限りません。
意図に合う回答を得やすくなり、修正の手間を減らせる可能性
メリット:回答後の修正を減らせる可能性がある
たとえば、会議の議事録を要約する際に「決定事項と今後の対応を中心に」と伝えれば、必要な情報を含んだ要約を得やすくなります。
最初から目的を伝えることで、回答を受け取ってから内容を修正する手間を減らせる可能性があります。
デメリット:指示を工夫しても修正が必要な場合がある
目的や条件を詳しく伝えても、生成AIが意図どおりに回答するとは限りません。
希望する内容と異なれば、追加の指示や修正が必要になり、かえってやり取りが増える場合もあります。
繰り返す作業で役立つプロンプトの保存と再利用
メリット:同じ指示を一から考えずに済む
毎週の会議で同じ形式の議事録を作るなら、使用したプロンプトを保存しておく方法があります。
次回は会議の内容を入れ替えて使うことで、指示を毎回考える手間を減らせます。
デメリット:再利用する際にも条件の確認が必要になる
会議の目的や必要な項目が変わっていると、以前のプロンプトでは必要な情報が抜ける可能性があります。
保存した指示をそのまま使えるとは限らず、今回の作業に合っているかを確認する必要があります。
指示を考える手間と、条件を増やしすぎる影響
メリット:必要な情報に回答の範囲を絞れる
確認したい情報が明確な場合は、条件を指定することで不要な説明を減らせる可能性があります。
特に、扱う内容が決まっている作業では、必要な情報を探す手間の削減につながります。
デメリット:準備の負担が増え、回答の幅も狭まる場合がある
細かい条件を考えるには時間がかかり、簡単な質問ではかえって負担になることがあります。
また、アイデアを幅広く集めたい場面で条件を限定しすぎると、想定外の案が出にくくなる可能性があります。
回答を絞り込める利点が、目的によっては制約にもなるのです。
回答が希望に沿うことと、事実として正しいことは別
メリット:希望する形式に近い回答を得られる
たとえば、製品の価格や仕様を表にまとめるよう指定すれば、希望する形式で情報を整理してもらえる場合があります。
このように、プロンプトを工夫することで、回答の見せ方や構成を利用目的に近づけられます。
限界:希望どおりの回答でも正確性は保証されない
生成AIは、事実と異なる情報をもっともらしく出力することがあり、これをハルシネーションと呼びます。
プロンプトで回答の形式や構成を指定しても、比較表に記された価格や仕様が正しいとは限りません。
そのため、判断に使う情報については、公式資料などで事実を確認する必要があります。
【6】目的に応じて必要な指示を選ぶ考え方
プロンプトに何を指定するか迷ったときは、まず質問の目的を考えます。
次の表は、四つの場面に応じた聞き方の目安です。
| 場面 | 指示の選び方 | 優先すること |
|---|---|---|
| 単純な質問 | 短く質問する | 手軽に答えを得る |
| 求める回答が明確 | 必要な情報や条件を先に伝える | 希望する仕上がりに近づける |
| 考えを広げたい | 条件を絞りすぎず、複数の案を求める | 選択肢を増やす |
| 求める回答がまだ曖昧 | 回答を見ながら条件を追加する | 必要な情報を明らかにする |
単純な質問では、詳しい条件指定が不要な場合もある
たとえば、「インフレーションとは?」と意味を知りたいだけなら、そのまま質問しても構いません。
最初から対象読者や文字数などを細かく指定すると、質問を考える手間が増えます。
短い質問で目的を果たせるなら、複雑なプロンプトを用意する必要はありません。
求める回答が明確な場合は、必要な条件を選んで伝える
社内向けの案内文を作る場合、対象者、開催日時、伝えたい事項などは、完成する文章に必要な情報です。
これらが不足すると、生成AIが内容を推測する可能性があります。
一方、文章の長さや文体は、用途によっては最初から指定しなくても構いません。
完成した文章に欠かせない情報と、後から調整できる部分を分けて考えると、指示を必要以上に長くせずに済みます。
選択肢を増やしたい場合は、対話で考えを広げる
アイデアや選択肢を増やしたい場合は、最初から回答の範囲を限定しない方法があります。
たとえば、新しいサービスの使い道を考えるなら、「異なる使い方を幅広く提案して」と頼むことができます。
この段階では、どの案を採用するか決めるよりも、さまざまな可能性を知ることが目的です。
候補が出てから、関心のある案について実現方法や懸念点を質問すれば、検討する対象を絞れます。
必要な情報が曖昧な場合は、対話で質問を具体化する
一方、何をどこまで知りたいのか、質問する時点では自分でも判断できないことがあります。
たとえば、生成AIの説明を読んで初めて、専門用語が理解できていないと気づく場合です。
そのときは、「その用語を具体例で説明して」と追加できます。
説明が広すぎると感じた場合も、回答を見てから知りたい部分を絞れます。
選択肢を増やす対話とは異なり、ここでは回答を読んで気づいた疑問を次の質問につなげます。
最初から必要な条件をすべて把握している必要はありません。
まとめ:プロンプトは目的に合わせて必要な指示を選ぶ
プロンプトの基本を知る意味は、決まった型を覚えることよりも、生成AIへの聞き方を自分で選べるようになることにあります。
次に生成AIへ質問するときは、まず「何をしてほしいのか」「回答に欠かせない条件はあるか」を考えてみてください。
短い質問で十分なら、そのまま聞いて構いません。
目的が明確なら必要な条件を加え、考えを広げたいときは回答の範囲を決めすぎない方法もあります。
また、最初の質問を完成形にする必要はありません。
回答を読んで足りない情報が見つかったら、必要な指示を追加したり、条件を変えたりできます。
ただし、希望どおりの回答が得られても、内容が事実として正しいとは限りません。
判断に使う情報は、公式資料などで別途確認する必要があります。
まずは普段の質問に、目的に合った指示を一つ加えるところから試してみてください。
その指示によって回答がどう変わるのかを確かめることも、プロンプトの基本を生かす方法です。
編集後記
「プロンプト」という言葉、少しめんどくさそうって感じていました。
普段なら何気なくしている質問なのに、名前が付くだけで「ちゃんとした書き方があるのかな」と身構えてしまいそうです。
何を聞きたいのか考えるのはいいけれど、「どう書けば正解なのか」ばかり気にして、かえって質問しづらくなるのは少しもったいない気がします。
専門的な言葉を知ったことで、それまで身近だったものが遠く感じられることもあります。
私自身、何かを説明するときには、そんな距離をできるだけ作らないようにしたいと思っています。
参照・参考サイト
OpenAI Academy・ChatGPT を始める
https://openai.com/ja-JP/academy/getting-started/
Google for Developers・大規模言語モデルの概要
https://developers.google.com/machine-learning/crash-course/llm?hl=ja
OpenAI Help Center・AI モデル向けの良いプロンプトを作成するには?
https://help.openai.com/ja-jp/articles/4936848-how-do-i-create-a-good-prompt-for-an-ai-model
Google AI for Developers・プロンプト設計戦略
https://ai.google.dev/gemini-api/docs/prompting-strategies?hl=ja
OpenAI Help Center・ChatGPT は真実を伝えますか?
https://help.openai.com/ja-jp/articles/8313428-does-chatgpt-tell-the-truth


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