生成AI時代のオリジナリティ|人間が作る原型とAIの役割分担

Creative_AI-originarity_MV 創作と思考

生成AIで考え抜いたキャラクターを作っても、ほかのAI生成物と並べたとき、どこか似て見えることがあります。

筆者自身、媒体の思想から設計したキャラクターや、人間側で連想を重ねたキャラクターを生成AIで形にしてきました。

一方で、人間のイラストレーターがふと思いついて作ったキャラクターと3体を並べると、見た目の「残り方」に違いを感じました。

そこで浮かんだのが、コンセプトの独自性と、視覚的な造形の独自性は同じなのかという疑問です。

生成AIにも新規性のある表現は生み出せるため、「AIにはオリジナリティがなく、人間にはある」と単純には分けられません。

では、AIと人間の違いはどこに現れるのか。

制作経緯の異なる3体を手掛かりに、研究や専門情報も参照しながら考えていきます。

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この記事の内容を、音声で聴きやすい形に再構成しています。 生成AI時代のオリジナリティを、人間が作る「原型」とAIによる展開の役割分担、 そして個性をどこに残すかという視点から、移動中や作業中にも聴いていただけます。

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【1】AI生成物が増えるほど、人間が作る個性的なキャラは差別化になり得る

生成AIによって、キャラクターを形にするまでの負担は大きく下がりました。

作れるものが増えた一方で、「どう作るか」よりも「どう認知してもらうか」が気になる場面も増えています。

生成AIで高品質な画像やキャラクターを大量に作れるようになった

生成AIを使えば、設定やイメージを伝えながら、複数のキャラクター案を短時間で試せます。

完成度の高い画像を作ること自体も、以前ほど難しくありません。

そのぶん、きれいに仕上がっているだけでは、ほかとの違いがあまりないこともあります。

AI生成物は違っていても、どこか似て見えることがある

AI生成キャラクターは、一体ずつ見ればそれぞれ違います。

それでもSNSやWebで続けて見ていると、筆者は「違うのに、どこか似て見える」と感じることがあります。

気になったのは、造形に違いがあるかどうかではありません。

その違いが、見た人の記憶に残るかどうかです。

人間発の個性的なキャラは、識別される存在になり得る

そこで、人間の発想から生まれたキャラクターの中には、生成物が増える環境で差別化の手掛かりになるものもあるのではないかと考えました。

もちろん、人間が作れば自動的に個性的になるわけではありません。

それでも、見た瞬間に「このキャラクターだ」と分かる形には、別の価値があります。

3体のキャラクター比較が、この仮説の出発点になった

この疑問のきっかけは、制作方法の異なる3体のキャラクターを並べたことでした。

2体は、人間側でコンセプトを考え、生成AIで造形したキャラクターです。

もう1体は、イラストレーターのひらめきから生まれました。

3体を見比べたとき、「発想の独自性と、見た目の独自性は同じなのか」という疑問が残りました。

【2】3体のキャラクターで見えた、個性の生まれ方の違い

3体は、完成した見た目だけでなく、発想の始まり方と、造形を決めた過程も異なります。

nengoroの双眼鏡キャラは、媒体思想から逆算して作った

左のキャラクターは、当サイト「nengoro」の考え方から設計しました。

「物事を俯瞰し、背景まで見る」という媒体の思想から、世界で一番高くまで飛ぶ鳥=マダラハゲワシをモチーフに選び、観察を表す双眼鏡を持たせ擬人化しています。

先に意味や役割を決め、その条件に合う姿を生成AIで形にしたキャラクターです。

ペンギンキャラは、AIっぽさを避けるため人間の連想を重ねた

右のペンギンは、最初から「よくあるAIキャラクターに見せたくない」という意識で作った副業サイトのメインキャラクターです。

「副業をすいすい進める」からペンギンを連想し、さらに「副業=jobs」からSteve Jobsへと発想をつなげています。(ただの親父ギャグです)

言葉や概念を人間側で組み合わせ、その発想を生成AIに造形させました。

人間発キャラは、イラストレーターのひらめきから生まれた

中央のキャラクターは、イラストレーターがふと思いついたアイデアから生まれました。

女の子にペットとして飼われている「ゆるキャラ」という設定はありますが、媒体の思想や言葉遊びから形を逆算したわけではありません。

発想も、その姿をどうするかという判断も、人間側のひらめきから始まっています。

3体を並べると、造形の「残り方」に違いを感じた

制作過程を並べると、3体の違いは次のようになります。

キャラクター発想の起点制作方法人間が担った部分筆者が感じた造形上の特徴
nengoro媒体の思想生成AIコンセプト設計意味との対応が明確
ペンギン言葉と連想生成AI発想の組み合わせ独自性を意図して設計
人間発キャラひらめきイラストレーター発想と造形型に分類しにくく感じる

AI生成の2体にも、人間側の発想は強く入っています。

それでも3体を並べると、筆者には人間発キャラクターだけが、意味から説明しきれない形で印象に残りました。

鳥と双眼鏡、ペンギンと服装のように要素へ分けて説明できる2体とは、少し違って見えたのです。

【3】独自のコンセプトでも、見た目まで独自とは限らない

3体を比べて気づいたのは、発想が独自であることと、その独自性が見た目にまで残ることは別だという点です。

AIキャラ2体にも、人間側の独自な発想は十分に入っている

2体のAI生成キャラクターは、発想から生成AIに任せたものではありません。

nengoroのキャラクターは媒体の思想から逆算し、ペンギンは複数の言葉や連想を人間側で組み合わせています。

どちらも、コンセプトそのものには人間の意図が強く入っています。

AIで生成したというだけで、発想までありきたりだったとは言えません。

それでも生成された造形には、既知の要素として理解できる部分が残った

一方、完成した2体を見ると、筆者には見た目を比較的説明しやすく感じました。

nengoroなら鳥と双眼鏡、ペンギンならペンギンそのものや服装というように、形を構成する要素へ分けて捉えられます。

既知の要素を使っていること自体が問題なのではありません。

気になったのは、コンセプトには独自性があっても、見た目まで同じ強さでほかと区別できるとは限らないことでした。

人間発キャラには、意味から逆算しにくい造形が残っていた

対して、人間発キャラクターは、筆者には同じように分解して説明しにくく見えました。

特定の思想や言葉から逆算して、「この意味だからこの形」と決めたキャラクターではありません。

そのぶん、なぜこの形なのかを言葉だけでは説明しきれない部分があります。

筆者が3体を並べたときに引っかかったのは、この説明しにくさでした。

ただし、これはあくまで今回の3体を見比べた筆者の観察です。

人間が作れば、AI生成より個性的な造形になるという話ではありません。

コンセプトの独自性と造形の独自性は、分けて考える

この違いは、コンセプトの独自性と造形の独自性を分けると捉えやすくなります。

コンセプトの独自性:発想、意味づけ、設定に、その作品固有の考え方があることです。

造形の独自性:完成した形そのものに、ほかと見分けられる特徴があることです。

コンセプトが独自でも、見た目には既視感が残ることがあります。

反対に、複雑な意味づけがなくても、形そのものが強く記憶に残る場合もあります。

AIと人間の違いを考えるときは、「どちらのほうが独創的か」だけでなく、独自性が発想にあるのか、完成した形にあるのかを分けて見る必要があります。

【4】AIと人間のオリジナリティは「新しさ」だけでは比べられない

ここまでの3体だけを見て、「人間のほうが創造的で、生成AIはそうではない」と結論づけることはできません。

生成AIにも、新規性のある表現を生み出せることが研究で示されています。

一方で、一つひとつの作品が新しいことと、ほかの作品と見分けやすいことは別の話です。

生成AIにも、新規性のある表現を生み出すことはできる

「生成AIは既存データを学習しているから、新しいものは作れない」と単純には言えません。

2024年に『Scientific Reports』で発表された研究では、複数の発散的思考課題で、GPT-4の回答が人間の参加者より高い独創性を示しました。

少なくとも、新規性のあるアイデアを生み出せるかという尺度だけで、「人間には創造性があり、生成AIにはない」と分けるのは難しくなります。

創造性:ここでは、新規性のあるアイデアや表現を生み出す能力を指します。

生成AIは創造性を高める一方、出力の多様性を狭める場合もある

ただ、一つの作品が創造的であることと、作品同士がどれだけ違っているかは別です。

2024年の『Science Advances』の研究では、生成AIのアイデアを利用した人の短編小説は創造性などの評価が高まった一方で、作品同士は人間だけで書いた場合より似る傾向が確認されました。

生成AIによって個々の作品の評価が高まっても、作品群としての違いまで大きくなるとは限らないわけです。

ただし、この研究が扱っているのは文章生成です。

AI生成キャラクターにも同じ傾向があると直接示したものではありません。

新しい表現と、一目で見分けられる個性は同じではない

ここで分けたいのが、新規性と視覚的な識別性です。

新規性:これまでの表現と比べて、新しい要素や組み合わせがあるかを見る軸です。

視覚的な識別性:ほかのキャラクターと並べたときに、「このキャラクターだ」と見分けられるかを見る軸です。

AI生成キャラクターに新しい組み合わせが含まれていても、それだけで強く記憶に残るとは限りません。

反対に、使われている要素自体は珍しくなくても、輪郭や形にそのキャラクター固有の特徴があれば、ほかと見分けやすくなります。

オリジナリティは、視覚的な識別性からも考えられる

AIと人間のオリジナリティは、「創造性があるか、ないか」だけでは捉えきれません。

生成AIにも、新規性のある表現を生み出す力はあります。

それでも3体を並べたとき、筆者が気になったのは新しさそのものではなく、見た目としてどれだけ「そのキャラクターらしさ」が残っているかでした。

筆者が感じた違いは、生成AIに創造性がないからではなく、個性が完成した形にどう現れているかの違いとして見るほうが近そうです。

【5】差別化の条件は「人間発」ではなく、識別できる個性的な原型

ここまで見てきた違いは、「人間が作ったもののほうが優れている」という話ではありません。

キャラクターとして差がつくかどうかは、誰が作ったかより、見たときに「このキャラクターだ」と分かる形があるかどうかで変わります。

人間が作っただけでは、キャラクターの個性は保証されない

人間が描いたキャラクターでも、よくある形に収まっていれば、ほかとの違いは伝わりにくくなります。

反対に、生成AIを使っていても、そのキャラクター固有の形がはっきりしていれば見分けやすくなります。

「人間発か、AI生成か」だけでは、個性の強さまでは判断できません。

奇抜な造形と、識別しやすいオリジナリティは別物

ただし、ほかと違って見えればいいわけでもありません。

要素を増やしたり、珍しい形を組み合わせたりすれば、目立たせることはできます。

それでも、次に見たときに「このキャラクターだ」と分からなければ、その違いはキャラクター固有の個性としては残りにくいでしょう。

差別化では、珍しさそのものより、同じ存在として覚えられる形があるかが効いてきます。

生成物が増えるほど、見分けられる原型の価値は高まり得る

生成AIによって、完成度の高いキャラクターを作るハードルは下がりました。

似た水準の画像が増えていけば、仕上がりのきれいさだけで違いを出すのは難しくなります。

そこで筆者が着目したのが、キャラクターの原型です。

原型:この記事では、輪郭や形、特徴など、そのキャラクターを「そのキャラクター」として見分ける土台となる造形を指します。

衣装や構図が変わっても、その原型が残っていれば同じキャラクターとして認識しやすくなります。

人間の偶発的な発想は、個性的な原型の一つの起点になり得る

今回の3体では、人間発キャラクターが、筆者にはもっとも既存の型へ分けにくく見えました。

もちろん、それだけで「人間だから個性的になった」とは言えません。

ただ、意味や目的から順番に組み立てたのではなく、「ふと思いついた形」から始まったことが、その説明しにくい造形につながった可能性はあります。

人間の偶発的な発想は、見分けられる原型を生む一つのきっかけになり得ます。

差別化を左右するのは、人間発であること自体ではありません。

最後に、そのキャラクターだけの形が残っているかどうかです。

【6】人間が原型を作り、生成AIで広げるという役割分担

ここまでの話は、人間か生成AIか、どちらか一方を選ぶという結論ではありません。

見分けられる原型を人間側で作り、その後の展開に生成AIを使うという分け方もあります。

人間発キャラクターと生成AIは、対立させる必要がない

人間発のキャラクターに個性があるからといって、生成AIを使わない理由にはなりません。

人間が原型を作り、生成AIがその形を別の表現へ広げる。

役割を分ければ、個性を残したまま制作の幅を広げられます。

個性的な原型は、生成AIで画像や動画へ展開できる

見分けられる原型があれば、生成AIは別の構図や画像、動画へ展開する用途に使えます。

この使い方では、生成AIに個性の出発点まで任せません。

すでにある「そのキャラクターらしい形」を起点に、表現の数を増やしていきます。

生成AI時代は、オリジナリティの源泉をどこに置くかを考える

もちろん、原型を最初から人間だけで作る必要もありません。

生成AIが出した案から人間が選び、形を変えながら原型を固める方法もあります。

どこまで生成AIに任せるかより、自分の創作で何を「ほかと見分けられる形」として残したいのか。

そこを人間側で決めておけば、生成AIは原型を薄める存在ではなく、広げるための手段になります。

まとめ|生成AI時代は「誰が作ったか」より、個性をどこに残すかで考える

3体のキャラクターを比べると、コンセプトの独自性と、見た目として識別できる個性は同じではありませんでした。

人間側で発想を練ったAI生成キャラクターでも、その独自性がそのまま造形に残るとは限りません。

一方で、人間のひらめきから生まれたキャラクターには、意味から説明しにくい形が残ることもあります。

ただし、これは「人間にはオリジナリティがあり、生成AIにはない」という話ではありません。

生成AIにも新規性のある表現は生み出せますし、人間が作っただけで個性的になるわけでもありません。

差別化を考えるなら、誰が作ったかより、見たときに「このキャラクターだ」と分かる原型が残っているかを見るほうが自然です。

その原型を人間が作り、生成AIで画像や動画へ広げる。

生成AI時代には、そんな役割分担も選べます。

編集後記

この記事を書くきっかけは、3体のキャラクターを見比べたときに感じた違和感でした。

どれも自分が制作に関わっています。

生成AIで作った2体にも、コンセプトや連想にはかなり人間側の考えを入れました。

それでも、イラストレーターのひらめきから生まれたキャラクターだけ、見た目の残り方が少し違って感じられたのです。

生成AIを使えば、以前より多くの案を試せますし、形にするまでの速度も上がります。

その便利さを実感するほど、「では、自分はどこで個性を作っているのだろう」と考えることも増えました。

効率よく形にできることと、自分らしいものが残ることは、たぶん同じではありません。

生成AIに任せる部分が増えても、自分が残したい形まで手放す必要はない。

今回3体を比べたことで、そのことを以前より意識するようになりました。

よくある疑問

Q. 生成AIにもオリジナリティはありますか?

生成AIにも、新規性のある表現を生み出すことはできます。

ただし、「新しい表現であること」と「ほかの作品と見分けられること」は同じではありません。

この記事では、生成AIのオリジナリティを一つの尺度だけで捉えず、新規性と視覚的な識別性を分けて考えています。

Q. 人間が考えたコンセプトを生成AIで形にした場合も、オリジナリティはありますか?

人間が考えた発想や意図には、その人なりの独自性が含まれます。

一方で、コンセプトが独自だからといって、生成された見た目まで同じように独自になるとは限りません。

発想の独自性と、完成した造形の独自性は別に見る必要があります。

Q. AI生成キャラクターは、なぜ似て見えることがあるのでしょうか?

一体ずつ見れば違っていても、複数のAI生成キャラクターを続けて見ると、似た印象を受けることがあります。

ただし、「AI生成キャラクターは似る」と一律に断定できるわけではありません。

この記事では、個々の表現に新しさがあることと、並べたときに一体ずつ見分けられることを分けて捉えています。

Q. 人間が作ったキャラクターなら、生成AIより個性的になりますか?

人間が作っただけで、個性が保証されるわけではありません。

人間が描いても、よくある形に収まれば見分けにくくなります。

反対に、生成AIを使っていても、「このキャラクターだ」と分かる原型があれば、ほかとの差は出せます。

Q. 生成AI時代は、人間とAIをどう役割分担すればよいですか?

一つの方法として、人間が見分けられる原型を作り、生成AIを画像や動画への展開に使う分け方があります。

ただし、原型を人間だけで作る必要はありません。

生成AIが出した案を人間が選び、形を変えながら固めていく方法もあります。

自分がどこに「その作品らしさ」を残したいのかを決めると、役割を分けやすくなります。

参照・参考サイト

日本マーケティング学会「生成AIの創造性寄与に関する一考察―チューハイのパッケージデザインを例に―」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/43/3/43_2024.006/_article/-char/ja/

人工知能学会「生成AIと創作物の創造性およびその評価に関して―物語自動生成を例として―」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/39/6/39_822/_article/-char/ja/

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