ファン化戦略|「なんかいい」を「これがいい」に育てるスルメ型とは

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商品やサービスを知ってもらい、一度は購入や利用まで進んでも、「便利だから使う」「近いから選ぶ」「特に不満がないから続ける」という状態で止まることがあります。
利用は続いていても、「ほかではなく、このブランドがいい」と感じているとは限りません。

一方で、最初は「なんかいい」程度だった作品や製品が、何度か触れるうちに「これがいい」へ変わることがあります。
使いやすさだけでなく、細かな工夫や作り手の考え方など、最初には見えていなかった良さに後から気づくからです。

本記事では、接触や利用を重ねる中で評価や愛着が高まるファン化を、独自にスルメ型ファン化と呼びます。
噛むほど味が出るスルメのように、一度で魅力が出尽くすのではなく、触れるたびに別の良さが分かってくる状態をイメージした呼び方です。

これは、接触回数を増やせばファンになるという話ではありません。
利用者自身もまだ言葉にしていない好みや判断基準と、作品・製品側の特徴やこだわりが重なり、その理由に後から気づくことがあるのではないか、という仮説です。

誰を主な対象とするのか。
どんな接点なら、まだ見えていない良さに気づけるのか。
そして、利用者と商品やサービスがどこで「合致」しているのか。

再接触や周辺情報など5つの戦略をもとに、「誰に・どの合致点を・どの接点で届けるか」から、スルメ型ファン化を自社で使う意味があるかまで考えます。

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この記事の内容を、音声で聴きやすい形に再構成しています。 一発で強く刺すのではなく、繰り返し触れる中で少しずつファンを育てる「スルメ戦略」について、移動中や作業中にも聴いていただけます。

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【1】スルメ型ファン化|「なんかいい」が「これがいい」に変わる仕組み

スルメ型ファン化は、すべての商品やサービスに当てはまる考え方ではありません。

一度使えば価値がほぼ分かるものもあれば、何度か使ったり、別の情報に触れたりするうちに、「ここが自分に合っていたのか」と良さが具体的になるものもあります。

ここでは後者を前提に、スルメ型ファン化で起きている変化と、単なるリピートとの違いを整理します。

スルメ型ファン化は、接触を重ねるほど評価や愛着が高まる

初めて使ったときは、「悪くない」「なんかいい」で終わることがあります。

その時点では、他との違いや、自分が何を気に入ったのかまでは分かっていません。

それでも、何度か使ううちに、操作のしやすさや細かな工夫、対応の心地よさなど、初回には意識しなかった部分に気づくことがあります。

作品でも、一つの作品をきっかけに別の作品や作り手の発信へ触れ、最初とは違う魅力を知ることがあります。

こうして選ぶ理由が増えると、「悪くない」から「自分には合っている」、さらに「やっぱりこれがいい」へと評価が変わっていきます。

スルメ型ファン化で考えたいのは、接触回数そのものではなく、触れるたびに選ぶ理由が増えていく変化です。

※スルメ型ファン化:最初から強い好意を得るのではなく、接触や利用を重ねる中で評価や愛着が高まっていくファン化を指す、本記事上の呼称です。

よく買うヘビーユーザーと、愛着を持つファンは同じではない

よく買う人、長く使っている人が、そのままファンとは限りません。

価格が安い、家から近い、乗り換えるのが面倒といった理由でも、利用は続くからです。

見るポイントヘビーユーザーファン
継続利用の理由価格・便利さ・習慣でも続く商品・サービスやブランドへの好意も含まれる
愛着強いとは限らない感情的なつながりを持つことがある
推奨利用していても勧めるとは限らない他者へ勧めることがある
代替可能性条件が変われば他社へ移ることがある似た選択肢では代替しにくいことがある

たとえば、近いからいつも同じ店を使っている人は、もっと便利な店ができれば移るかもしれません。

一方で、「この店の雰囲気が好き」「このサービスの対応が好き」と感じている人には、価格や利便性だけでは説明できない選択理由があります。

見るべきなのは回数より、「なぜ選び続けているのか」です。

ファン化を考える理由は、継続利用や推奨まで関係が続くこと

ファン化を考える理由は、好感度を上げること自体にあるわけではありません。

一度の購入で終わらず、再購入や継続利用、その先の推奨まで関係が続く余地があるためです。

だからこそ、新規顧客を増やす施策だけでなく、購入後や初回利用後に評価がどう変わっているかも見る必要があります。

とはいえ、ファンになれば購入回数や口コミが必ず増えるわけではありません。

購入頻度の低い商品もあれば、好きでも人には勧めない人もいます。

ファン化と売上や推奨は、商品カテゴリーや利用形態を無視して単純には結びつけられません。

「なんかいい」から「これがいい」への変化は、選ぶ理由の具体化に表れる

「なんかいい」の段階では、好意はあっても、その理由はまだ曖昧です。

評価が深まると、「使いやすい」だけだった感想が、「操作に迷わないところが自分に合う」のように具体的になっていきます。

ここで見たいのは、好意の強さを数字で測ることではありません。

何を気に入っているのかを本人なりに説明できるようになり、その理由が「これを選びたい」という判断につながっているかです。

「なんとなく好き」だったものに、自分なりの選択理由ができている。
その変化を、「なんかいい」から「これがいい」へ進んだ一つの目安として捉えます。

スルメ型ファン化は、単純接触や習慣的なリピートとは違う

同じ広告を何度も見ること。
いつもの商品を習慣で買うこと。
便利だから同じサービスを使い続けること。

これらは、ここでいうスルメ型ファン化とは別と考えます。

何度触れたかではなく、その過程で「前には気づかなかった良さ」や「自分に合う理由」が見つかっているかが基準です。

価格や立地、乗り換える手間だけで利用が続いているなら、接触回数が多くてもスルメ型とは呼びません。

反対に、使うたびに選ぶ理由が増え、「これを選びたい」という感覚が強くなっているなら、スルメ型ファン化として捉えられます。

【2】利用者と作品・製品は、どんな要素で「合致」するのか

スルメ型ファン化では、利用者が後から「自分はここが好きだったのか」と気づく過程を考えます。

そのときに気づく「好きな理由」は、機能や性能のように比較しやすいものだけではありません。

本人の好みや判断基準と、作品・製品・サービス側の特徴やこだわりが重なることを、本記事では「合致」と呼びます。

合致は機能や性能だけでなく、言語化されていない好みにも生まれる

価格や機能、使いやすさは、商品やサービスを比べるときに意識しやすい条件です。

しかし、条件が近くても「なぜかこちらがいい」と感じることがあります。

デザインの落ち着き方、操作したときの感触、接客の距離感、言葉遣いなど、比較表や機能には表れにくい部分も選択に関わります。

本人がまだ言葉にできていない好みも、ここでは「合致」に含めます。

※合致:利用者の好みや判断基準と、作品・製品・サービス側の特徴やこだわりが重なることを指す、本記事上の考え方です。

作り手のこだわり・方針・人となりも合致要素になり得る

利用者が惹かれるのは、目に見える機能や体験だけとは限りません。

何を優先して作ったのか、なぜその仕様を選んだのか、何をあえてしなかったのかという判断も、その人の好みと重なることがあります。

たとえば、機能を増やすより迷わず使えることを優先した製品なら、複雑な操作を避けたい人との間に判断基準の重なりがあります。

後から魅力的な思想を作るのではなく、すでに作品や製品、サービスに表れている判断の中から、利用者との重なりを探します。

利用者自身も「なぜ好きか」を最初から説明できるとは限らない

「なんとなく使いやすい」「この店は落ち着く」と感じていても、その理由をすぐ説明できるとは限りません。

たとえば、本人が意識していなくても、迷わず使える製品ばかり選んでいるなら、「操作に迷わないこと」が判断基準になっているかもしれません。

そのため、本人の言葉だけでなく、何を繰り返し選ぶのか、どんな情報を自分から見に行くのかといった行動も、合致を探る材料になります。

別の接点に触れることで、新しい合致点が見つかることがある

合致する要素があっても、最初の利用だけで伝わるとは限りません。

製品を使ったあとに別の使い方や開発背景を知り、「だから使いやすかったのか」と後から理由が分かることもあります。

作品なら、別作品や作り手の発信に触れて、最初とは違う魅力に気づくこともあるでしょう。

合致点は、存在するだけでは評価につながりません。

最初には見えなかった部分へ触れられる接点があることで、利用者自身が「自分に合う理由」を発見しやすくなります。

【3】スルメ型ファン化で狙うのは、まだファンではない潜在層

利用者と作品・製品・サービスとの「合致」は、人によって強さが違います。

同じものに触れても、すぐに「これがいい」と感じる人もいれば、「悪くない」で止まる人もいます。

スルメ型ファン化では、その差を前提に、まだ見えていない合致点がありそうな人を主な対象として考えます。

ファン化しやすさは、利用者との合致度によって異なると考える

たとえば、迷わず使える設計を好む人にとって、シンプルな操作は強い魅力になります。

一方で、細かく設定したい人には、同じ設計がそれほど響かないかもしれません。

作品や製品側の特徴が同じでも、それをどう評価するかは利用者によって変わります。

そこで、「全員をどうファンにするか」ではなく、「どの人なら、まだ自分に合う理由を見つける余可能性があるか」と考えます。

30%・50%・70%の合致率は、顧客差を考える思考モデル

利用者ごとの差を考えやすくするため、本記事では合致の強さを30%・50%・70%の3段階で仮置きします。

合致率:利用者の好みや判断基準と、作品・製品・サービス側の特徴やこだわりがどの程度重なるかを考えるための、本記事上の思考モデルです。

  • 70%程度:すでに多くの合致点があり、自然にファン化しやすい層
  • 50%程度:一定の相性はあるものの、まだ気づいていない合致点が残っている層
  • 30%程度:一部に重なりはあっても、全体としての相性は弱い層

この数字は、調査で測定した値ではありません。

「すでに強く合っている人」「まだ余地がある人」「そもそもの相性が弱い人」を分けて考えるための目盛りです。

主に狙うのは、一定の合致がある50%程度の潜在層

主な対象として置くのは、50%程度の潜在層です。

好意をゼロから作る相手ではなく、すでに一部には魅力を感じているものの、ほかの合致点にはまだ気づいていない人を想定しています。

たとえば、「使いやすいけれど、他社でもよい」と感じていた人が、開発方針を知って「自分が使いやすいと感じたのは、この考え方が合っていたからか」と気づくことがあります。

一方、合致が強い人は自分から情報を探すこともあります。
合致が弱ければ、接点を増やしても評価が大きく変わらないこともあります。

50%という数字に実測上の根拠があるわけではありません。
ここで置きたいのは、「すでに一部は合っているが、まだファンではない人」という中間層です。

戦略上は潜在層を狙っても、施策自体は顧客全体へ届ける

主対象を50%程度の潜在層に置いても、その人だけを事前に選び出して発信するわけではありません。

合致度を企業側があらかじめ数値で判定することはできないからです。

SNSや記事、メール、利用後の案内などは一定の範囲へ届け、その中で反応の違いを見ます。

同じ発信でも、すでに合致が強い人には好意を深める材料になり、潜在層には新しい発見になることがあります。
ほとんど響かない人がいても不自然ではありません。

主対象を決めることと、発信の入口をその人たちだけに狭めることは別です。
広く接点を残しながら、まだ見えていなかった合致点に反応する人を見つけていきます。

【4】「なんかいい」をファン化につなげる5つの戦略

一定の合致がある潜在層には、同じ魅力を何度も強く伝えるより、まだ気づいていない良さに触れられる機会を増やすほうが合っています。

ここでは、再び触れる機会をつくる「再接触」、見せる内容を広げる「周辺情報」、伝え方を変える「こだわりの見せ方」、利用者側の発見を生かす「UGC・共創」、離れた後にも戻れる「接点の維持」の5つに分けます。

1. 再接触をつくり、一度では見えなかった価値に触れてもらう

最初の戦略は、作品・製品・サービスそのものへ、もう一度触れる機会をつくることです。

初回の反応が弱くても、その人との相性が悪いとは限りません。
一度の利用では、一部分しか体験できていないことがあるからです。

たとえば、製品を購入した人に別の活用方法を届ければ、試していなかった使い方を知り、もう一度製品を使うきっかけになります。

音楽でも、一曲を聴いたあとに別の曲を知り、そこから改めて作品へ戻る流れが考えられます。

ここで増やすのは広告の表示回数ではなく、本体をもう一度体験する機会です。

2. 使い方や制作背景など、本体以外の周辺情報も発信する

再接触が「もう一度本体に触れてもらう戦略」なら、こちらは「本体だけでは見えない情報を増やす戦略」です。

毎回同じ特徴だけを伝えていては、利用者が気づける良さも広がりません。

発信する内容としては、次のようなものがあります。

  • 別の使い方や活用方法
  • 制作や開発の過程
  • その仕様や表現を選んだ理由
  • サービス提供時の工夫
  • 利用時には見えにくい裏側

たとえば、基本機能には強く惹かれなかった人でも、別の使い方を知れば「自分の用途にも合う」と感じるかもしれません。

周辺情報は、本体と関係のない話題を増やすためのものではありません。
初回には見えなかった「自分に合う理由」を知る材料として使います。

3. こだわり・思想・人となりは、説明しすぎず発信に混ぜ込む

3つ目は、発信する内容ではなく、合致点の伝え方を変える戦略です。

作り手や提供者の考え方を強く掲げても、それだけで利用者が自分との共通点に気づくとは限りません。

「私たちはシンプルさを大切にしています」と繰り返すより、「なぜこの機能を追加しなかったのか」を説明したほうが、実際の判断基準は伝わります。

機能を増やすより迷わず使えることを選んだ判断が見えれば、その考え方に合う人は、自分が使いやすいと感じた理由と結びつけられます。

2つ目の戦略が「何を見せるか」なら、ここで変えるのは「どう見せるか」です。
理念を理解させるのではなく、仕様や発信、対応の中から判断基準が伝わる形にします。

4. 利用者自身の発見や発信を促し、共創は必要な範囲で広げる

4つ目は、企業側だけで価値を決めず、利用者が見つけた良さも生かす戦略です。

まず考えたいのがUGCです。

※UGC:利用者自身がSNSやレビューなどで作成・発信するコンテンツを指します。

たとえば、利用者がSNSで企業側の想定とは違う使い方を紹介し、それを見た別の人が「自分にも使えそうだ」と感じることがあります。

この場合、利用者が見つけた価値が、そのまま別の利用者にとって新しい合致点を知る入口になります。

レビューや投稿を見ることは、企業側がまだ把握していない選択理由を知る材料にもなります。

一方、共創はUGCとは役割が異なります。

利用者が見つけた使い方や寄せた意見を、商品改善やサービス、企画へ反映していくのが共創です。

UGCが「利用者から利用者へ価値が広がる動き」だとすれば、共創は「利用者の発見や意見を企業側へ戻す動き」と捉えると分かりやすいでしょう。

どちらも必須ではありません。

投稿を強く求めたり、すべての利用者を企画へ参加させたりすると、本人が自然に見つけた価値を生かすという狙いから外れることがあります。

5. 押しすぎず、一度離れた人も戻れる接点を残す

最後は、企業側から再接触を促すのではなく、利用者が自分のタイミングで戻れる状態を残す戦略です。

1つ目の再接触では企業側からもう一度触れるきっかけをつくりますが、すべての人を継続的に追い続ける必要はありません。

たとえば、以前使った製品について数か月後に調べたとき、活用記事や動画が見つかれば、そこから再び使い始めることがあります。

作品でも、別作品から興味が戻り、過去の作品やインタビューへさかのぼることがあります。

使い方の記事、制作背景、動画、FAQなどは、公開直後だけ読まれる情報とは限りません。

企業から何度も呼び戻すのではなく、興味が戻ったときに自分から触れられる入口を残しておきます。

【5】合致要素は決め打ちせず、仮説とPDCAで探っていく

「利用者はここに共感するはず」と、企業側だけで合致要素を決めるのは避けたいところです。

利用者自身も「なぜ好きなのか」を最初から説明できるとは限らず、企業が魅力だと思っている部分と、実際にファンが反応している部分が同じとも限りません。

そこで、まず既存ファンから合致要素の候補を探します。

次に、離脱者や関与の低い利用者と比べて、その候補がファン側に特有のものかを見ます。

そのうえで、まだファンではない潜在層への施策に反映し、実際に反応が変わるかを確かめます。

既存ファン、離脱者、潜在層では、見る目的がそれぞれ違います。

強いファンの共通点や利用行動から、合致要素の候補を探す

最初に見るのは、すでに関係が深まっている既存ファンです。

ここで知りたいのは、「ファンになる人には、どんな好みや判断基準の重なりがあるのか」です。

たとえば、次のような点を見ます。

  • 何をきっかけに利用し始めたか
  • どの機能や体験を繰り返し利用しているか
  • 何を自分から調べているか
  • どんな理由で人に勧めているか
  • 商品やブランドについて何をSNSなどで発信しているか

長く使っている人ほど「多機能だから」ではなく「迷わず使えるから」と話しているなら、「迷わず使える設計」は合致要素の候補になります。

ここでは、既存ファンの反応をそのまま正解とは考えません。

次に比較するための候補にします。

離脱者との差や利用者の言葉から、合致要素の仮説を精査する

ここで離脱者を見る目的は、「離脱の原因をすべて特定すること」ではありません。

既存ファンから見つけた候補が、本当にファン化と関係していそうかを比較するためです。

たとえば、ファンにも離脱者にも「デザインが好き」という評価が多いなら、その特徴だけでは両者の違いを説明しにくくなります。

一方で、既存ファンには「迷わず使える」という声が多く、離脱者には「複雑だった」という声が目立つなら、「必要なことを迷わずできる設計」は仮説として残しやすくなります。

離脱者は、ファン化施策の主対象として見るのではなく、仮説を見極めるための比較対象です。

この比較を通して、「ファンが好んでいるだけの特徴」と「ファン化に関わっている可能性がある特徴」を分けていきます。

精査した仮説を潜在層への発信や接点に反映し、反応を見る

ここから見る対象は、既存ファンでも離脱者でもなく、3章で置いた「一定の合致はあるが、まだファンではない潜在層」です。

既存ファンから見つけ、離脱者との比較で残した仮説が、潜在層にも新しい選択理由として働くかを確かめます。

「作り手の判断基準」が仮説なら、開発背景や仕様を選んだ理由を発信します。

「別の使い方」が候補なら、活用記事や動画で伝えます。

見るのは、コンテンツへの反応だけではありません。

再訪したか、別の商品や作品まで見に行ったか、もう一度利用したか、自分の言葉でその価値を語るようになったかなど、関わり方の変化まで見ます。

既存ファンに好評だった情報でも、潜在層の行動が変わらなければ、スルメ型ファン化で優先する合致要素とは限りません。

施策への反応から、合致要素の仮説をPDCAで更新する

潜在層への施策で得た反応をもとに、仮説の優先順位を見直します。

既存ファンに強く見られる特徴でも、潜在層にはほとんど反応されないなら、優先度を下げます。

反対に、ある情報を届けたあとに再利用や関連コンテンツへの移動が増え、利用者自身の言葉にも同じ価値が表れるなら、その仮説は残して次の施策でも試せます。

※PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返し、施策を改善する考え方です。

既存ファンから候補を見つける。
離脱者との比較で仮説を絞る。
潜在層で反応を確かめる。

この3つを分けて見ることで、すでにファンになった人の特徴を、そのまま潜在層へ当てはめることを避けられます。

【6】スルメ型ファン化が自社に向くかを判断する

スルメ型ファン化は、すべての商品やサービス、作品に向くわけではありません。

判断するときは、次の5つに分けると分かりやすくなります。

  1. 利用を重ねるほど価値が見えてくるか
  2. 別の接点から新しい合致点を発見できるか
  3. 再接触にかかる負担が大きすぎないか
  4. 選択理由が価格・利便性・機能だけに偏っていないか
  5. 「誰に・どの合致点を・どの接点で届けるか」がつながるか

1. 初回で価値が伝わる商品と、使うほど価値が見える商品を分ける

1つ目の基準は、利用経験が増えることで評価する理由も増えるかです。

一度使えば機能や品質がほぼ分かるものは、再接触を増やしても評価が大きく変わりにくいでしょう。

一方で、何度か使ううちに細かな使いやすさへ気づいたり、別作品に触れて魅力が広がったりする対象なら、スルメ型を検討する余地があります。

2. 再接触によって、新しい価値や合致点を発見できる余地を見る

2つ目の基準は、別の接点に触れたとき、新しい「自分に合う理由」が見つかるかです。

繰り返し利用できるだけでは十分ではありません。

別の使い方や開発背景、関連作品などを知ることで、初回には見えていなかった魅力が増えるなら、再接触には意味があります。

何度触れても同じ価値しか見えないなら、接点を増やしてもスルメ型ファン化にはつながりにくくなります。

3. 再接触に必要なコストや利用負担も含めて考える

3つ目の基準は、再接触を無理なく続けられるかです。

高額な商品では、何度も買ってもらうより、購入後に記事や動画へ触れてもらうほうが現実的なこともあります。

利用者にかかる費用や時間だけでなく、企業側の制作費や運用負担も含めて判断します。

4. 価格・利便性・機能が中心なら、スルメ型を無理に使わない

4つ目の基準は、利用者が何を基準に選んでいるかです。

価格、近さ、営業時間、必要な機能などで選択がほぼ決まるなら、ファン化より先に改善すべき競争軸があるかもしれません。

ファンが存在することと、ファン化へ投資する意味があることは別です。

5. 「誰に・どの合致点を・どの接点で届けるか」で施策を判断する

5つ目の基準は、ここまでの条件を実際の施策へ落とせるかです。

  • 誰に:一定の相性はあるが、まだファンではない人がいるか
  • どの合致点を:初回には見えていない良さが残っているか
  • どの接点で:その良さへ無理なく触れられる方法があるか
番号判断基準確認すること
1価値の変化利用を重ねるほど選ぶ理由が増えるか
2合致点の発見別の接点から新しい「自分に合う理由」を見つけられるか
3再接触の負担利用者と企業のコストが大きすぎないか
4選択理由価格・利便性・機能だけでほぼ決まっていないか
5施策への接続「誰に・どの合致点を・どの接点で」がつながるか

5つの基準のどこかで無理があるなら、スルメ型ファン化を使うこと自体を目的にせず、別の施策を優先する判断もできます。

まとめ

スルメ型ファン化は、接触回数そのものを増やす戦略ではありません。

最初は「なんかいい」と感じていた人が、使い方や作り手の考え方、別の作品などに触れる中で、「自分はここが好きだったのか」と選ぶ理由を見つけていく考え方です。

主な対象は、すでに一定の相性がありながら、まだファンにはなっていない潜在層です。

その人たちに新しい合致点を見つけてもらう方法として、次の5つを挙げました。

  1. 再接触をつくる
  2. 周辺情報を見せる
  3. こだわりをにじませる
  4. 利用者の発見を生かす
  5. 戻れる接点を残す

何を合致点として扱うかは、企業側だけでは決めません。

既存ファンから候補を見つけ、離脱者との比較で仮説を絞り、潜在層への施策で反応を確かめながら更新していきます。

また、スルメ型ファン化が自社に向くかどうかも先に見ておく必要があります。

利用を重ねるほど価値が見えるか、新しい合致点を発見できるか、再接触の負担は大きすぎないか、価格や利便性だけで選ばれていないか。
そのうえで、「誰に・どの合致点を・どの接点で届けるか」までつながるなら、5つの戦略を具体的な施策へ落とし込めます。

つながらない場合は、無理にファン化を狙わず、別の施策を優先する判断も必要です。

編集後記

今回考えていて気になったのは、「好きな理由は、最初から本人にも分かっているとは限らない」ということでした。

自分が長く好きな音楽やサービスを振り返っても、最初から「ここが好き」と説明できたものばかりではありません。

最初はなんとなく気になっただけだったのに、何度か触れるうちに別の良さが分かってくる。
そのあとで、「たぶん、自分はここが好きだったんだ」と気づくことがあります。

マーケティングでは、クリックや購入、継続利用のように観察しやすい行動を追います。

けれど、その手前には「なぜか気になる」「また使いたい」という、まだ本人にも言葉にできていない感覚があるのかもしれません。

スルメ型ファン化という考え方は、そうした曖昧な好意を企業側が先回りして決めるのではなく、利用者自身が少しずつ「自分に合う理由」を見つけていく過程から考えたものです。

もちろん、すべての商品やサービスに当てはまる話ではありません。

それでも、自分が今も選び続けているものを振り返ると、最初から強く好きだったものより、後から好きな理由が増えていったものもあるのではないでしょうか。

よくある疑問

Q. スルメ型ファン化とは何ですか?

最初から強く好かれるのではなく、接触や利用を重ねる中で評価や愛着が高まっていくファン化を、本記事では「スルメ型ファン化」と呼んでいます。

噛むほど味が出るスルメのように、一度では分からなかった良さが、後から少しずつ見えてくるイメージです。

単に何度も触れてもらうのではなく、利用者自身が「自分はここが好きだったのか」と合致点に気づいていく過程を重視します。

Q. 接触回数を増やせばファン化しやすくなりますか?

接触回数を増やすだけでは十分ではありません。

同じ広告や情報を繰り返すのではなく、別の使い方や制作背景、関連コンテンツなどに触れることで、まだ見えていなかった良さに気づけるかが分かれ目です。

Q. なぜ50%程度の潜在層を主な対象にするのですか?

50%は実測値ではなく、利用者ごとの合致度を考えるための思考モデルです。

ここで想定しているのは、すでに一部には魅力を感じているものの、まだ「これがいい」とまでは思っていない人です。

好意をゼロから作るのではなく、まだ気づいていない合致点を見つけてもらう余地がある層として捉えています。

Q. スルメ型ファン化は、どんな商品やサービスにも使えますか?

すべてに向くわけではありません。

使ったり別の情報に触れたりすることで、新しい良さが見えてくる対象とは相性があります。

反対に、一度で価値がほぼ伝わるものや、価格・利便性・機能が選択理由の中心になるものでは、別の施策を優先したほうがよい場合があります。

Q. 顧客との合致要素は、どうやって見つければよいですか?

まず既存ファンの発言や行動から候補を探します。

次に離脱者や関与の低い利用者と比べ、その特徴がファン側に表れやすいものかを見ます。

残った仮説を潜在層への発信や接点で試し、再訪や再利用などの反応を見ながら更新していきます。

Q. ブランドの思想や作り手の人となりは、強く発信したほうがよいですか?

必ずしも強く打ち出す必要はありません。

「この価値観に共感してください」と説明するより、なぜその仕様を選んだのか、何をあえてしなかったのかといった判断を見せるほうが、利用者自身で相性に気づきやすくなります。

Q. UGCと共創はどう違いますか?

UGCは、利用者が見つけた使い方や魅力が、SNSやレビューを通して別の利用者へ広がるものです。

共創は、利用者の発見や意見を企業側へ戻し、商品やサービス、企画へ生かしていく取り組みです。

どちらもスルメ型ファン化の必須条件ではありません。

Q. 押しすぎないなら、何もしなくてもよいのでしょうか?

何もしないという意味ではありません。

企業側から追い続けるのではなく、記事や動画、SNS、FAQなどを残しておき、利用者が興味を持ったときに自分から戻れる状態をつくります。

参照・参考サイト

J-STAGE・製品に対する愛着形成をねらいとした情報提供戦略の提案と検証
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssdj/63/5/63_5_49/_article/-char/ja/

J-STAGE・バナー広告への単純接触が商品評価と購買意図に及ぼす効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/14/1/14_1_133/_article/-char/ja/

J-STAGE・ブランド・ロイヤルティの形成におけるブランド・コミットメントの長期効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmd/14/2_3/14_77/_article/-char/ja/

J-STAGE・消費者はブランド購買に何を求めているのか―抽象的マインドセットの時に消費者は「自己とブランドのつながり」を重視する―
https://www.jstage.jst.go.jp/article/marketing/45/2/45_2025.018/_article/-char/ja

ヤッホーブルーイング・【日本に新たなビール文化を!】ヤッホーブルーイング製造スタッフに聞く、クラフトビールづくりの裏側
https://yohobrewing.com/press_room/story/seizo/

カルビー・じゃがりこ国民投票
https://www.calbee.co.jp/jagarico2930/

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