「話が長いと言われる」「結論が見えない、と返された」「AIに指示しても、欲しい答えが返ってこない」――そんな場面が続いているなら、論理的思考力の話かもしれません。
論理的思考力とは、物事を整理し、根拠をつなげて判断し、その内容を相手やAIに伝わる形で言語化する力です。頭の良さや話し方のうまさとよく思われがちですが、それとは別の力で、「感覚派には向かない力」でもありません。整理・根拠・言語化という3つのプロセスのどれが弱いかを知ることができれば、次に何をすればいいかも見えてきます。
論理的思考力は、ただ筋道立てて考える力ではなく、相手に伝わる形まで整える力です。この記事では、その意味を押さえたうえで、仕事やAI活用でどこに差が出てくるのかを見ていきます。「論理的思考力=論破する力」といった誤解や、ロジカルシンキングとの違いについても触れていきます。
【1】論理的思考力とは?一言でいうと「筋道立てて考え、伝える力」
論理的思考力という言葉は広く使われていますが、「正確には何を指すのか」と聞かれると、意外と答えにくいものです。この章では定義をはっきりさせたうえで、よくある誤解も見ていきます。
「整理・根拠・言語化」をつなぐ力
論理的思考力とは、物事を整理し、根拠をつないで判断し、その内容を相手やAIに伝わる形で言語化する力です。
わかりやすく言うと、「頭の中でバラバラになっている情報を並べ直し、なぜそう判断したかの根拠を確認し、それを相手に伝わる言葉に変える」という3つの動作がひとつながりになった力です。
この3つ——整理・根拠・言語化——はつながってます。情報が整理されていなければ、根拠を正しく選べません。根拠が曖昧なままでは、言語化しても話がばらつきます。どれか一つが欠けると、「なんとなくわかっているけど、うまく伝えられない」という状態になりやすいです。
考えて終わりではない、というのがこの力の特徴です。自分の中で筋が通っているだけでなく、相手が納得できる形にできて初めて役に立ちます。
「頭の良さ」や「論破の強さ」とは別の力
これは頭の回転の速さを競う話ではありません。むしろ、頭の中にある判断や感覚を、相手が納得しやすい順番に並べ直す力と考えたほうが近いです。
議論で強引に押し切る力とも別物です。論理的に考えられる人ほど、相手の前提や根拠を丁寧に確認しながら話を進める傾向があります。「どちらが正しいか」を決める場面よりも、「何が問題で、なぜそう言えるか、どう伝えればわかってもらえるか」を整理する場面のほうが、この力の出番はずっと多いです。
会議での説明、資料の構成、AIへの指示——こうした日常的な場面でこそ、論理的思考力は使われています。
「自分は感覚派だから苦手」は思い込み
感覚派と思っている人も、論理的思考力をまったく使っていないわけではありません。
たとえば、「なんかこの提案、相手には刺さらない気がする」と直感的に感じたとき、その判断を相手に伝えようとすると「なぜそう感じたか」を言葉にする必要が出てきます。このとき、無意識に整理・根拠・言語化のプロセスを踏んでいます。
感覚を封じるための道具ではないんです。「感じたこと」を「伝えられること」に変換するための力、と言えばわかりやすいでしょうか。感覚派であることと、論理的に伝えられることは、真逆なことではないんです。
直感と論理は対立しない
直感と論理は、どちらが優れているかという話ではなく、場面によって使い分けるものです。
直感は、経験や知識が積み重なった結果として生まれる素早い判断です。スピードが求められる場面や情報が限られた状況では、直感のほうが有効に働くことがあります。けれど、判断の根拠を人に説明しなければならない場面では、論理的に整理する力が必要となります。
問題になりやすいのは、直感で判断したことを直感のまま伝えてしまうケースです。「なんとなくAの方がいい気がします」という説明は、聞いた相手には根拠が見えません。直感を論理の言葉に置き換えられれば、「Aを選ぶ理由は〇〇と〇〇という条件に合っているからです」と伝えられます。
論理的思考力は、直感を否定するのではなく、直感を活かすための補助的な力として機能します。
論理的思考力がある人の説明は、なぜわかりやすいのか
論理的思考力がある人の説明は、なぜ聞いていてすっと入ってくるのでしょうか。
一つは、話の順番が整っているからです。結論が最初に来て、根拠が続き、具体例で補足される——この流れがあると、聞いている側は「何の話をしているか」を見失わずに済みます。背景説明が長く続いて結論がいつまでも出てこない話は、途中で「要するに何が言いたいのか」と相手にイライラされやすいです。
もう一つは、前提が揃っていることです。「相手がどこまで知っているか」「今何を判断したいのか」を確認したうえで話を進めると、説明の途中で認識がズレにくくなります。
説明がわかりやすい人が、必ずしも話し方が上手なわけではありません。整理・根拠・言語化のプロセスが機能しているから、聞いている側の負担が少なくなっているんです。
【関連記事|L01】論理的思考力とは?意味・鍛え方・仕事での使い方をわかりやすく解説
【2】論理的思考力はなぜ必要?仕事・学習・AI活用で差がつく理由
論理的思考力が必要だとわかっていても、「自分の仕事や日常に、具体的にどう関係するのか」がピンとこない人もいるかもしれません。この章では、仕事・学習・AI活用という3つの場面に絞って、何がどう変わるのかを見ていきます。
仕事で「結論が見えない」と言われる理由
「で、何が言いたいの?」「結論が見えない」——仕事でこう返された経験がある人は、少なくないと思います。
こうした状況は、頭の中の筋道が相手に伝わる形に整理されていないときに起こりやすいです。情報は持っている、考えてもいる、でも整理されないまま口から出てしまう——このパターンが「結論が見えない」という印象につながります。
論理的思考力は、「何を伝えるべきか」を先に決め、「なぜそう言えるか」を根拠として揃え、「どう伝えれば伝わるか」を言語化するプロセスを支えます。このプロセスが機能していると、話す前に頭の中で整理されているため、聞いている相手も何が言いたいのかがはっきりと理解できます。
専門性や世代が違う相手と話すとき
仕事では、自分とまったく異なる専門性や経験を持つ相手と話す場面が頻繁にあります。エンジニアが営業に技術仕様を説明する場面、若手が役員に企画を提案する場面、現場担当者が外部パートナーと要件を詰める場面——こうした状況では、「自分がわかっていること」と「相手がわかっていること」がズレていることが多いです。
このズレを埋めるのが、「前提を揃える力」です。相手がどこまで知っているかを確認し、自分の判断の根拠を言語化し、相手が理解できる言葉で伝える。この一連の作業は、専門用語を知っているかどうかではなく、話の構造を整える力で決まります。
「景色合わせ」と呼ばれることもありますが、これは論理的思考力なしには成立しにくいコミュニケーションです。
面接や発表で「考えが浅く見える」のはなぜか
就職・転職の面接や社内プレゼン、学習の成果を発表する場面でも、論理的思考力の差は出やすいです。
「考えが浅い」と見られる人の多くは、実際には考えていないわけではありません。考えてはいるけれど、「なぜそう考えたか」という根拠が言語化されていないために、聞き手に浅く映ってしまうことがほとんどです。
たとえば、「御社に貢献できると思います」という発言は、結論だけがあって根拠がありません。「〇〇の経験から△△という判断ができるようになったので、御社の□□という課題に対して具体的に貢献できます」と話せる人は、同じ内容でも「考えている人」として伝わります。差を生むのは思考の深さそのものよりも、思考を言語化できているかどうかです。
AIで差が出るのは、指示だけじゃない
AIツールを使う場面でも、論理的思考力の差は出やすいです。そして、AIとの関わりは「指示を出す」場面だけではありません。
指示の面では、目的・条件・出力形式などが整っているほど、期待に近い答えが返ってきやすくなります。「このメールの返信を書いて」という指示より、「〇〇という状況で△△の相手に送る返信を、丁寧かつ簡潔に200文字以内で書いてください」という指示のほうが、AIは判断材料をもとに出力を絞れます。
でも、返ってきた答えをどう扱うかでも差がつきます。「前提条件が合っているか」「このまま使えるか」を自分で判断できるかどうかが、出力の質に直結します。AIが曖昧な指示に一般的な答えを返すのと同様に、検証する側の思考が整っていなければ、出力の問題に気づけません。
指示を明確にする力と、出力を検証する力。AI時代の論理的思考力は、この2つとして表れます。
論理的思考力が弱いと、どこでぶれやすいか
この力が弱いと、つまずき方はだいたい似ています。話すと順番がぶれ、書くと結論がぼやけ、AIへの指示では条件が抜けやすくなります。
共通しているのは、「頭の中の曖昧さが、そのまま出力の曖昧さになる」ということです。どの場面でも、考えが整っているかどうかが結果の質に影響します。
仕事・学習・AI活用の3場面で論理的思考力の有無による違いをまとめると、次のようになります。
| 場面 | 論理的思考力が 機能している場合 | 論理的思考力が 弱い場合 |
|---|---|---|
| 仕事(会議・報告) | 結論と根拠が揃った説明ができる | 話が長くなり、結論が伝わりにくい |
| 学習(面接・発表) | 考えの根拠を言語化して伝えられる | 考えていても「浅い」と見られやすい |
| AI活用(指示・検証) | 目的に合った出力を引き出し、検証できる | 指示がずれ、ぶれた出力をそのまま使いやすい |
論理的思考力が必要な場面は、特別な状況ではなく、日常のあちこちにあります。
【3】論理的思考力は3つに分けるとわかりやすい
ここからは、論理的思考力を「整理・根拠・言語化」の3つに分けて見ていきます。定義を覚えるためではなく、自分がどこでつまずいているかを見つけるためです。「論理的思考力がない」という漠然とした感覚が、「整理が弱い」「根拠を言えない」「言葉にすると長くなる」という具体的な課題に変わると、対処しやすくなります。
出発点は「情報を整理する力」
整理でつまずく人は、話し始める時点で事実と意見が混ざっています。そこがほどけないままだと、あとで根拠も言いにくくなります。
整理とは、バラバラな情報を「何が事実か」「何が意見か」「何が重要か」に分けて並べ直す作業です。事実と推測が混在したまま判断しようとすると、根拠の信頼性が下がり、結論も揺らぎやすくなります。
「この情報は事実か、意見か」「今の目的に関係あるか」という問いを立てるだけで、整理の精度はかなり変わります。すべての情報を並べようとすると整理は進みません。何が重要かを絞れないと、この後の根拠・言語化のプロセスも重くなります。
核心は「根拠をつないで判断する」
情報が整理できたら、次は「なぜそう言えるか」を確認する作業です。
根拠とは、結論を支える理由のことです。「Aが正しい」と言うとき、「なぜAが正しいか」を説明できる情報が根拠になります。根拠が弱いまま結論だけを主張すると、聞いている相手には「なぜそうなるのか」が見えません。
根拠をつなぐ力が弱いと、「なんとなくそう思う」「経験上そう感じる」という形で判断しがちになり、説明を求められたときに言葉が出てこない状態になりやすいです。根拠は判断の後から探すものではなく、判断の前に確認しておくものです。この順番を意識するだけで、説明の流れがスムーズになります。
なお、根拠をつなぐ際に「前提・目的・評価軸」が抜けていると、論理はぶれやすくなります。前提(どういう条件のもとで成り立つか)、目的(何のための判断か)、評価軸(何を基準に良い悪いの判断をするのか)——これらは根拠を選ぶときの確認ポイントとして常に頭に置いておくと、説明がぶれにくくなります。
差が最も見えやすいのは「言語化する力」
整理と根拠がそろっていても、それを相手に伝わる言葉に変えられなければ、論理的思考力は機能したことになりません。言語化は、3つの中で最も効果がわかりやすい部分です。
言語化とは、単に言葉にすることではありません。「相手が理解できる言葉で」「必要な情報を過不足なく」「相手が一番納得する順番で」表現することです。
言語化でつまずきやすいのは、「頭の中ではわかっているのに、言葉にすると長くなってしまう」という状態です。これは多くの場合、整理と根拠の段階で何を伝えるかが定まっていないことが原因です。言語化の問題に見えて、実は手前の段階に課題があるケースは少なくありません。
3つがそろって初めて機能する
整理・根拠・言語化は、それぞれ単独でも使える力ですが、3つがそろって初めて論理的思考力として機能します。
整理だけできても、根拠がなければ「情報を並べただけ」になります。根拠があっても言語化できなければ、「わかっているけど伝えられない」状態のままです。言語化が上手でも、整理と根拠が伴わなければ、中身の薄い説明になりやすいです。
3つの力が一本の線でつながったとき、考えが整っていて、なぜそう言えるかが確認されていて、相手に伝わる形になっている状態が生まれます。
3つの段階とつまずきやすいパターンを整理すると、次のようになります。
| 段階 | 役割 | つまずきやすいパターン |
|---|---|---|
| 整理 | 情報を目的に照らして選別・分類する | 事実と意見が混在したまま、何が重要かを決められない |
| 根拠 | 結論を支える理由を確認する | 「なんとなくそう思う」で判断し、理由を言えない |
| 言語化 | 整理と根拠を相手に伝わる言葉にする | 頭ではわかっているのに、言葉にすると長くなる |
話す前に情報が散らかるなら整理、理由を聞かれて詰まるなら根拠、頭ではわかっているのに長くなるなら言語化が、それぞれ課題のある段階です。
【4】論理的思考力がある人・ない人の違いは、具体例で見るとすぐわかる
定義や構成要素を理解しても、「実際の場面でどう違いが出るのか」がイメージできないと、自分の課題を特定しにくいままです。この章では、会議・資料作成・AIへの指示という3つの場面を取り上げ、何がズレを生むのかを具体的に見ていきます。
【関連記事|L01-04】論理的思考力とは?日常と仕事の具体例で感覚的に理解する
会議で「伝わる話し方」と「伝わらない話し方」の差
会議で同じ内容を話しているのに、「わかりやすい」と感じる人と「結局何が言いたいのかわからない」と感じる人がいます。この差はどこから来るのでしょうか。
伝わらない話し方に共通するのは、背景や経緯から話し始めて、結論がいつまでも出てきません。話している本人は丁寧に説明しているつもりでも、聞いている側は「この話はどこに向かっているのか」を探しながら聞き続けることになります。それが続くと、「話が長い」「結論が見えない」という印象になりやすいです。
伝わる話し方は逆の構造です。最初に結論を置き、根拠を続け、必要であれば具体例で補足する。この順番が守られていると、聞いている側は「何の話か」を最初に把握できるため、その後の説明をスムーズに受け取れます。
PREP法は「順番を整える型」
会議での説明を整理するうえで、PREP法は有用です。PREP法とは、Point(結論)・Reason(理由)・Example(具体例)・Point(結論の再提示)の順で話を構成する方法です。
この型が機能する理由は、話の順番が聞き手の理解の順番と一致しているからです。結論が先にわかると、その後の情報を「なぜそうなるか」という文脈で受け取れます。結論が最後に来る構成では、聞き手は「この情報はどこにつながるのか」を考えながら聞き続けることになり、どこに注力して話を聞けば良いのかあいまいで結果、全体がぼやっとしか理解できなくなります。
ただし、型を知っているだけでは機能しません。「自分の結論は何か」「その根拠は何か」を事前に整理できていることが前提です。
資料で「結論が伝わる文章」と「読みづらい文章」の差
資料や報告書でも、論理的思考力の差は出やすいです。読みづらい文章に共通するのは、情報が時系列や思いついた順で並んでいて、「何を主張しているのか」が最後まで読まないとわからない構造です。
結論が伝わる文章は、段落の冒頭に主張が置かれています。「〇〇という結論です。理由は△△です。具体的には□□という事例があります」という構造が繰り返されると、流し読みをしながらでも要点を把握できます。
もう一つの差は、情報の選別です。読みづらい文章は、集めた情報をほぼすべて詰め込もうとする傾向があります。何を入れるかよりも、何を捨てるのかの判断が、文章の読みやすさを左右します。
5W1Hは「抜け漏れを防ぐ型」
資料や依頼文で情報が抜けていると、受け取った側が「結局どうすればいいのか」を自分で補わなければならず、認識のズレが生まれます。
たとえば、「来週までに資料をお願いします」という依頼は、いつまでかが曖昧で、何を作ればいいかも不明確です。「来週月曜日の午前中までに、〇〇会議で使う3枚程度のスライドを作成してください。目的は△△の意思決定です」という依頼に変えると、受け取った側が迷う余地が減ります。
5W1H(Who・What・When・Where・Why・How)は、情報の抜け漏れを確認するための視点です。すべての項目を必ず入れる必要はありませんが、「必要な条件が揃っているか」を見直す習慣があると、資料や依頼文の精度が上がります。
AIへの指示で差が出る場所
AIへの指示でも、論理的思考力の差は出やすいです。
ずれる指示に共通するのは、目的・条件・出力形式のいずれかが抜けていることです。例えば、「このメールの返信を書いて」という指示では、AIにとって判断材料が少なすぎます。相手が誰か、どういう状況か、どんなトーンが必要か——これらが指定されていないと、AIは一般的な文章を生成するしかありません。
「〇〇という状況で、△△の相手に送る返信メールを、丁寧かつ簡潔に200文字以内で書いてください」という指示であれば、AIは判断材料をもとに出力を絞れます。自分が何を求めているかを整理し、言語化できているかどうかが、そのまま出力の質に表れます。
返ってきた答えをどう扱うかも同様です。「前提条件が合っているか」「自分の目的に照らして使えるか」を確認できるかどうかで、出力をそのまま使う人と、条件に照らして見直す人の差が生まれます。
3つの場面を並べると、つまずく場所はほぼ同じ
3つの場面を並べると、つまずく場所はほぼ同じです。結論を先に置けないか、必要な条件を落としているか、そのどちらかに寄りやすいです。
会議での説明が長くなる人は整理や言語化、資料で情報が散らかる人は整理と選別、AIへの指示がずれる人は言語化に、それぞれ課題が出やすい傾向があります。どの場面でつまずいているかが見えると、直す場所もかなり絞れます。
PREP法と5W1Hの使いどころをまとめると、次のようになります。
| 枠組み | 何を整える型か | 主な使用場面 | 整理する対象 |
|---|---|---|---|
| PREP法 | 話す・書く順番を整える型 | 会議での説明、報告、プレゼン | 結論・理由・具体例の順序 |
| 5W1H | 情報の抜け漏れを防ぐ型 | 依頼文、資料、AI指示 | 誰が・何を・いつ・どこで・なぜ・どのように |
PREP法は「何をどの順番で伝えるか」を整えるための型で、5W1Hは「必要な情報が揃っているか」を確認するための型です。どちらも、整理・根拠・言語化を実際の場面で機能させるための補助として使えます。
【5】論理的思考力とロジカルシンキングの違いをざっくり整理する
「論理的思考力」と調べていると、ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、ラテラルシンキングといった言葉が一緒に出てきて、どれが何を指すのか混乱した経験がある人もいるかもしれません。この章では、最も混同されやすいロジカルシンキングとの違いを中心に整理します。その他の思考法は、章末の比較表でまとめています。
論理的思考力とロジカルシンキング、何が違うのか
最も混同されやすいのは、この2つです。
ロジカルシンキングは英語圏から輸入されたビジネス用語で、MECE(モレなくダブりなく)やピラミッドストラクチャーといったフレームワークを使って思考を整理する技法を指すことが多いです。ビジネス書や研修では、具体的なツールや手法とセットで語られます。
論理的思考力は、そうした技法を使いこなす前提として必要な土台の力です。論理的思考力が土台で、ロジカルシンキングはその力を使って考えを構造化するテクニック、と思っておくとよいです。
フレームワークを覚えたのにうまく使えないと感じるとき、多くの場合はそもそもの論理的思考力(整理・根拠・言語化の力)を考えられていないことが原因です。
【関連記事|L02】ロジカルシンキングとは?初心者向けに基本と鍛え方を図解で解説
「論理的思考」と「論理的思考力」の微妙な違い
一文字しか違いませんが、指しているものが少し異なります。
論理的思考とは、筋道立てて考えるプロセスそのものです。「今この瞬間、論理的に考えている」という動作を指します。論理的思考力は、そのプロセスを必要なときに安定して実行できる能力のことです。
日常会話では両方の意味で同じように使われることが多いため、混同されやすいです。本記事では、「整理・根拠・言語化を安定して実行できる能力」という意味で論理的思考力を使っています。
【関連記事|L03】論理的思考とは?できる人の特徴と鍛え方を具体例で解説
テクニックより先に土台が要る
ロジックツリーやピラミッドストラクチャーといったフレームワークは、思考を整理するための便利な道具です。でも、これらのツールは、論理的思考力という土台があって初めて機能します。
たとえば、ロジックツリーは問題を構造的に分解するためのツールですが、「何を問題として設定するか」「どの粒度で分解するか」「分解した要素が目的に合っているか」という判断は、ツールではなく論理的思考力が担います。ツールは思考を可視化する補助であって、判断そのものを代替するものではありません。
型を覚える前に、土台を整えておく。その順番が、フレームワークを使いこなすための前提になります。
クリティカルシンキングとラテラルシンキングは何が違うのか
論理的思考力に関連する思考法として、クリティカルシンキングとラテラルシンキングがよく挙げられます。どちらも論理的思考力とは役割が異なります。
クリティカルシンキングは、与えられた情報や自分自身の判断に対して「本当にそうか」と問い直す力です。日本語では「批判的思考」と訳されますが、批判というより「前提を疑い、根拠を検証する姿勢」と理解するほうが正しいです。論理的思考力が整理・根拠・言語化のプロセスを回す力だとすれば、クリティカルシンキングはそのプロセスの前提や根拠に見落としがないかを確認する力です。AIの出力を検証する場面では、特にこの力が機能します。
ラテラルシンキングは、既存の枠組みにとらわれず、別の視点から問題を捉え直す思考法です。水平思考とも呼ばれます。論理的思考力が決まった方向に向かって筋道を整える力だとすれば、ラテラルシンキングは「そもそも別の方向がないか」という発想の転換を担います。ただ、ラテラルシンキングで生まれたアイデアも、「なぜ有効か」「どう実行するか」を整理・言語化するためには論理的思考力が必要です。
3つを組み合わせると、問題解決の質が上がる
3つの力は、それぞれ得意な場面が異なります。論理的思考力で問題を整理して判断し、クリティカルシンキングで前提や根拠に見落としがないかを確認し、ラテラルシンキングで別のアプローチがないかを発想する——この順番で使えるようになると、判断の精度と視野の広さが両立しやすくなります。
3つすべてを同時に意識する必要はありません。まず論理的思考力を土台として機能させ、状況に応じて他の思考法を加えていく、という使い方が実務ではベストです。
4つの概念の役割の違いをまとめると、次のようになります。
| 概念 | 主な役割 | 論理的思考力との関係 |
|---|---|---|
| 論理的思考力 | 整理・根拠・言語化のプロセスを安定して実行する | 土台となる力 |
| ロジカルシンキング | MECEやロジックツリーなどの枠組みを使って思考を構造化する | 論理的思考力を活用するための技法 |
| クリティカルシンキング | 前提や根拠を疑い、判断の妥当性を検証する | 論理的思考力を補強し、判断の精度を上げる |
| ラテラルシンキング | 枠にとらわれず、別の視点や方向から発想する | 論理的思考力と組み合わせて選択肢を広げる |
「論理的思考力は土台、ロジカルシンキングはその技法、クリティカルシンキングは補強、ラテラルシンキングは発想を広げる」と認識しておくと、それぞれの役割が区別しやすくなります。
まとめ:論理的思考力とは「整理し、根拠を持ち、伝わる形にする力」
最後に確認したいのは一つだけです。論理的思考力は、考える力だけでなく、相手に伝わる形までもっていくことでもある、という点です。
才能ではなく、分解して理解できる力
論理的思考力とは、物事を整理し、根拠をつないで判断し、その内容を相手やAIに伝わる形で言語化する力です。
頭の良さや生まれつきの才能ではなく、「整理する力」「根拠をつなぐ力」「言語化する力」という3つの要素に分解できる、習得可能な能力です。感覚派だから苦手、という思い込みも、分解をすることで簡単になります。
ロジカルシンキングのフレームワークや、クリティカルシンキング・ラテラルシンキングといった思考法も、この土台があって初めて機能します。技法やツールを学ぶ前に土台を整えることが、遠回りのようで結果的に近道になります。
仕事・学習・AI活用の土台になる
論理的思考力が必要な場面は、特別な状況だけではありません。会議での説明、資料の作成、面接での受け答え、AIへの指示と検証——日常のあちこちで、この力が結果に影響しています。
AIがある時代だからこそ、「自分が何を求めているかを整理し、言語化する力」の出番は増えています。AIは指示した通りにしか動きません。その指示を構成する力が、そのまま出力の質に表れます。
まず見たいのは、自分がどこで止まりやすいか
整理なのか、根拠なのか、言語化なのか。自分はどこが苦手なのかが分かれば、直す場所もかなり絞れます。
話す前に情報が散らかるなら整理、理由を聞かれると詰まるなら根拠、頭ではわかっているのに長くなるなら言語化が、それぞれ課題のある場所です。自分の課題が見えてきたら、次は鍛え方や具体的な使い方を調べてみてください。この記事が、そのための入口になれれば幸いです。
【関連記事|L01-02】論理的思考力を鍛える方法8選|仕事で使える基本と実践法
編集後記
論理的思考力というテーマを整理しながら、ずっと意識していたのは「これは特別な人の話ではない」ということです。Webの仕事を長く続けてきた中で、データを読む場面でも、クライアントに提案する場面でも、結局いつも問われていたのは「なぜそう言えるか」を整理して伝える力だと痛感しています。派手なフレームワークより先に、この地味な土台が機能しているかどうかで、仕事の質はずいぶん変わります。
「自分は感覚派だから」と思っている人にこそ、読んでみてほしい内容でした。感覚と論理は、思っているより近くにあります。読み終えて、自分の課題がどこにあるか少しでも見えてきたなら、それで十分です。
参照・参考サイト
文部科学省・小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/__icsFiles/afieldfile/2016/05/06/1370404_1.pdf
文部科学省・参考資料 「思考力・判断力・表現力等」についての整理のイメージ
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/056/siryo/__icsFiles/afieldfile/2015/10/29/1363262_11.pdf
OpenAI Help Center・Does ChatGPT tell the truth?
https://help.openai.com/en/articles/8313428-does-chatgpt-tell-the-truth
ALL DIFFERENT株式会社・5W2Hとは?ビジネスコミュニケーションにおける活用ポイントと例文
https://www.all-different.co.jp/column_report/column/5w2h/hrd_column_153.html
日本能率協会マネジメントセンター・従業員のコミュニケーション能力を鍛える方法!基本から役職別のポイントまで解説
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0204-communication_skills_training.html
GLOBIS学び放題×知見録・クリティカル・シンキングとは?仕事の成果が変わる“論理的に考え・伝える力”の鍛え方
https://globis.jp/article/keqxr6i5_qkm/
聖心女子大学・大学からの伝言 -批判的思考とは何かを知る-
https://www.u-sacred-heart.ac.jp/assets/images/examinee/first-year/workbook/subject/r23.pdf
グロービス経営大学院・水平思考|グロービス経営大学院 創造と変革のMBA
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-20797.html
GLOBIS知見録・ロジカルシンキングとは?例題・図解付きでMBA教員が解説
https://globis.jp/article/6305/


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