ロジカルシンキングは、考えを難しくするための技術ではありません。
何について考えるのかを決め、結論と理由を分け、その理由を支える事実を確かめるための考え方です。
会議や報告で「結局、何が言いたいのか分からない」と言われたり、「なぜそう考えたのか」と聞かれて答えに詰まったりすると、自分には考える力がないように感じるかもしれません。
けれども、説明が伝わらない原因は、考えの深さではなく、問いが曖昧になっている、結論が問いに答えていない、理由と根拠が混ざっているなど、筋道の一部にあることも少なくありません。
この記事では、問い、結論、理由、根拠をつなぐ練習を、仕事や日常で取り組みやすい5つの方法に分けて紹介します。
あわせて、説明していない前提や筋道の飛躍を見つけ、根拠を足すだけでは直らないときに、理由や結論まで戻って修正する方法も扱います。
自分の説明がどこで崩れているのかを見分けられるようになると、最初からすべてを考え直さず、必要な箇所から手を入れられます。

【1】ロジカルシンキングで鍛えるのは筋道のつながり

ロジカルシンキングを鍛えるとき、最初に押さえたいのは、何を練習するのかです。
考える力全体を一度に伸ばそうとすると、どこを直せばよいのか分かりにくくなります。
この記事では、問い、結論、理由、根拠をつなぎ、説明の筋道を確かめる動作に範囲を絞ります。
ロジカルシンキングと論理的思考力はどう違うのか
ロジカルシンキングは、問いに対する結論を決め、その結論を理由と根拠で支える考え方です。
一方、論理的思考力は、推論、情報の分類、前提の検証、問題解決なども含む、より広い力を指します。
両者の区分には統一された定義がありません。
そのため、この記事では「ロジカルシンキング」を、問いから根拠までのつながりを組み立てる思考として扱います。
【深掘り記事|L01-02】論理的思考力を鍛える方法8選|仕事で使える基本と実践法
この記事で扱うロジカルシンキングの範囲
最初から多くのフレームワークを覚える必要はありません。
まず確かめるのは、何について判断するのか、その問いにどう答えるのか、なぜその結論になるのかを説明できるかです。
あわせて、理由を支える事実があるか、自分の解釈を事実として扱っていないかも見ます。
情報を細かく分類する方法や、情報源そのものを詳しく検証する方法は、別の思考法として分けて扱います。
【関連記事|L02】ロジカルシンキングとは?初心者向けに基本と鍛え方を図解で解説
問い・結論・理由・根拠のつながりが練習の中心
問い:何を判断するのかを示すものです。
結論:問いに対する答えです。
理由:その結論を選ぶ考えです。
根拠:理由を支える、確認できる情報です。
練習では、この四つを書き分け、前後が直接つながっているかをたどります。
すると、話の途中で論点が変わっている箇所や、説明していない前提、筋道が飛んでいる箇所を見つけやすくなります。
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【2】ロジカルシンキングを鍛える5つの練習

ロジカルシンキングを鍛えるときは、説明全体を一気に直そうとしないほうがよいです。
問いが曖昧なのか、結論が定まっていないのか、理由や根拠が足りないのか。
まずは、自分の説明がどこで崩れやすいかを確かめ、必要な練習を一つ選びます。
| 仕事で見られる状態 | ロジカルに整理できている状態 | 起きている可能性があるつまずき | 対応する練習 |
|---|---|---|---|
| 話している途中で論点が変わる | 判断する対象が定まっている | 問いが曖昧 | 問いを一文にする |
| 結局何を伝えたいのか分からない | 問いへの答えを示せる | 結論が曖昧 | 結論を一文にする |
| 「なぜ」と聞かれると説明が止まる | 理由と根拠を分けられる | 理由か根拠が不足している | 理由と根拠を書き分ける |
| 印象や評価だけで判断している | 事実と解釈を区別できる | 解釈を事実として扱っている | 事実と解釈を分ける |
| 説明しても納得されない | 問いから根拠までつながっている | 前提不足や飛躍がある | 筋道を順にたどる |
判断する問いを一文で明確にする
問いが曖昧なままでは、どの結論を出せばよいのかも定まりません。
「新しい業務管理システムについて考える」ではなく、「新しい業務管理システムを今期中に導入するべきか」と書きます。
読んだ人が同じ判断対象を思い浮かべられれば、問いの範囲は絞れています。
問いに対する結論を一文にする
問いが決まったら、その答えだけを一文にします。
先ほどの問いなら、「新しい業務管理システムは今期中に導入するべきです」が結論です。
背景や理由まで詰め込まず、問いに直接答えているかを見ます。
結論を支える理由と根拠を書き分ける
「なぜ、その結論なのか」を示すのが理由です。
その理由が事実に基づいていることを示す情報が、根拠に当たります。
たとえば、「入力作業を減らせるため」が理由なら、「試行部署の記録では月30時間削減されている」が根拠です。
二つを分けると、考えが足りないのか、事実が足りないのかを判断しやすくなります。
根拠に含まれる事実と解釈を分ける
根拠のように見える文にも、書き手の評価が混ざることがあります。
「利用者の満足度が低い」は、基準が示されていなければ解釈です。
一方、「利用者100人のうち45人が不満と回答した」という調査記録は、確認できる事実として扱えます。
記録や観察で確かめられる部分と、そこから自分が判断した部分を分けて読みます。
問いから根拠までをたどって飛躍を探す
問い、結論、理由、根拠がそろっていても、間の説明が抜けていることがあります。
前から読んだあと、根拠から問いへ逆向きにもたどり、「なぜそう言えるのか」と一つずつ確かめます。
そこで答えに詰まる箇所には、説明していない前提や筋道の飛躍が残っています。
5つすべてを毎回行う必要はありません。
メールや報告の前に、自分が崩れやすい箇所を一つだけ書き出し、短く繰り返すところから始められます。
【3】筋道の不足を確認して修正する

問い、結論、理由、根拠を書き出しても、並べただけでは筋道が通っているとは限りません。
それぞれが一つ前の内容を直接支えているかをたどると、説明が足りない箇所を見つけやすくなります。
不足が見つかったときは、根拠を足すだけで済むのか、理由や結論まで見直す必要があるのかを分けて考えます。
結論は最初の問いに直接答えているか
結論だけを読んだとき、最初の問いへの答えが分かるかを見ます。
問いが「新しい業務管理システムを今期中に導入するべきか」であるのに、結論が「現在の入力作業には無駄が多い」では、問題点を述べているだけです。
「今期中に導入する」「今期中の導入は見送る」のように、問いに対応する判断まで示します。
理由は結論を直接支えているか
理由として正しい内容でも、結論との関係が弱いことがあります。
「システムには多くの機能がある」だけでは、今期中に導入するべきかどうかは判断できません。
「今期中に導入すれば、繁忙期までに入力作業を減らせる」と書けば、結論を選ぶ理由が伝わります。
その理由から別の結論も成り立つなら、理由か結論の範囲を見直します。
根拠は理由を支える確認可能な情報か
根拠には、理由と関係があり、記録や観察で確かめられる情報を置きます。
理由が「入力作業を減らせる」であれば、試行時の作業時間や入力件数が判断材料になります。
「使いやすそう」「効率が上がると思う」といった評価や予想だけでは、理由を支える根拠にはなりません。
結論・理由・根拠の間に説明していない前提はないか
文同士が自然につながって見えても、途中に説明していない前提が隠れていることがあります。
「試行部署で作業時間が減ったため、全社で導入するべきだ」という説明には、ほかの部署でも同じ効果が出るという前提があります。
要素の間に「そのため」を入れ、追加の説明がなくても納得できるかを確かめます。
引っかかる箇所があれば、何を前提にしているのかを書き出します。
不足が見つかったら理由や結論まで戻る
根拠が見つからないとき、情報を探し続ければよいとは限りません。
理由が事実に合っていない場合もあれば、結論の範囲を広げすぎている場合もあります。
たとえば、「今期中に全社導入する」を「一部部署で試行する」に変えれば、確認できている情報に合わせて結論を狭められます。
最初の結論を守ることより、確認できる理由と根拠に合わせて組み直すことが、筋道の修正につながります。
【4】一つの仕事例で5つの練習を繰り返す

ここでは、定例会議を例に短くするべきか順に考えてみます。
一つの説明を問いから根拠までたどると、どこで話が飛び、どこまで戻って直せばよいのかが分かります。
1.整理する前の説明から不足を探す
はじめの説明は、次のとおりです。
「定例会議は長く、参加者の負担も大きいため、来月から30分に短縮したほうがよいと思います」
一見すると理由まで示されていますが、「長い」「負担が大きい」と判断した基準が分かりません。
30分に短縮しても必要な議題を扱えるのかも、まだ説明されていない状態です。
2.問いと結論を一文ずつ置く
まず、判断したい内容を問いにします。
問いは、「週次の定例会議を、来月から60分から30分へ短縮するべきか」です。
結論は、「週次の定例会議を、来月から1か月間、30分に短縮して試行するべきです」と置きます。
いきなり継続的な変更を決めず、試行にとどめることで、今ある情報に合う範囲まで結論を狭めています。
3.理由・根拠・事実・解釈を分ける
結論を支える理由は、「現在の議題量であれば、30分でも主要な報告と判断を終えられるため」です。
その根拠として、「直近4回の記録では、主要な報告と判断が開始後25分以内に終了していた」という記録を使います。
「会議が長すぎる」は評価を含む解釈です。
一方、主要な議題が何分で終わったかは、記録で確かめられる事実です。
4.飛躍を見つけて結論まで修正する
ただし、直近4回の記録だけで、今後も毎回30分以内に終わるとは言い切れません。
議題が多い週もあるため、「必要な場合は事前に延長を決める」という条件を加えます。
試行後は、実際の所要時間と未処理の議題を確認し、短縮を続けるか判断します。
| 項目 | 整理前 | 修正後 |
|---|---|---|
| 問い | 定例会議をどうするか | 来月から30分へ短縮するべきか |
| 結論 | 30分に短縮する | 条件を設けて1か月間試行する |
| 理由 | 長くて負担が大きい | 30分で主要な議題を扱える |
| 根拠 | 明示されていない | 直近4回は25分以内に主要議題が終了 |
| 前提 | 30分でも進行できる | 議題が多い週は延長する |
| 修正 | なし | 試行後に継続を判断する |
5.メール・報告・会議で短く反復する
練習用の課題を別に用意しなくても、普段の仕事をそのまま使えます。
メールでは問いと結論、報告では理由と根拠、会議では事実から判断までのつながりを見直します。
毎回すべてを書き出す必要はありません。
自分が崩れやすい箇所を一つ選び、短い仕事の中で繰り返すほうが続けやすくなります。
【5】残った課題に合う次の思考法を選ぶ
問い、結論、理由、根拠をつないでも、別のところで考えが止まることがあります。
その場合は、ロジカルシンキングだけで解決しようとせず、残っている課題に合う思考法へ切り替えます。
思考力全体を広く鍛えるなら論理的思考力
筋道を組み立てるだけでなく、推論や検証、問題解決まで広く扱いたいなら、論理的思考力の学習が合います。
情報を分解・分類するならMECEやロジックツリー
情報を並べても重なりや抜けが残るときは、MECEやロジックツリーを使います。
複雑な内容を分け、全体を見渡しやすくするための方法です。
【深掘り記事|L02-04】ロジカルシンキングで使う代表的フレームワーク一覧
前提や情報を検証するならクリティカルシンキング
筋道は通っていても、根拠そのものが正しいとは限りません。
情報の信頼性や思い込みを確かめたいときは、クリティカルシンキングが候補になります。
【深掘り記事|L06-03】クリティカルシンキングの鍛え方|思い込みを減らす練習法
仮の答えから考え始めるなら仮説思考
情報が足りず、どこから考えればよいか決められないときは、仮の結論を置いて検証します。
仮説思考は、答えを決めつける方法ではなく、考え始めるための手がかりを置く方法です。
【深掘り記事|L07-02】仮説思考を鍛える方法|考える速度を上げる基本トレーニング
問題演習で定着を確かめるならトレーニング問題
学んだ内容を別の状況でも使えるか確かめるには、問題演習が役立ちます。
自分では気づきにくい苦手な箇所も見つけやすくなります。
| 残っている課題 | 次に学ぶ内容 |
|---|---|
| 推論や問題解決まで広く鍛えたい | 論理的思考力 |
| 情報を分解・分類したい | MECE、ロジックツリー |
| 前提や情報を検証したい | クリティカルシンキング |
| 情報不足でも検討を始めたい | 仮説思考 |
| 学んだ内容の定着を確かめたい | トレーニング問題 |
次に学ぶ内容は、手法の知名度ではなく、今どこで考えが止まっているかを基準に選びます。
【深掘り記事|L02-05】ロジカルシンキングを鍛えるトレーニング問題集
まとめ
ロジカルシンキングは、考えを難しくする技術ではありません。
問い、結論、理由、根拠を分け、前後がきちんとつながっているかを確かめる練習です。
説明が伝わらないときも、すべてを最初から考え直す必要はありません。
問いが曖昧なのか、結論がずれているのか、理由や根拠が足りないのかを見れば、直す箇所を絞れます。
不足が見つかったときは、根拠を足すだけでなく、理由や結論の範囲まで戻ることも必要です。
まずは次のメールや報告で、自分が崩れやすい箇所を一つだけ書き出してみてください。
短くても、問いから根拠までをたどる習慣が、説明の筋道を確かめる練習になります。
よくある質問
Q. ロジカルシンキングは一人でも鍛えられますか
一人でも練習できます。
メールや報告を送る前に、問い、結論、理由、根拠を書き分け、前後がつながっているかを確かめます。
普段の仕事を使えるため、練習用の課題を別に用意する必要はありません。
Q. ロジカルシンキングを鍛えるには何から始めればよいですか
何について判断するのかを、一文で書くところから始めます。
問いが曖昧なままでは、結論や必要な情報も定まりません。
読んだ人が同じ判断対象を思い浮かべられるかが、確認の目安です。
Q. 理由と根拠は何が違うのですか
理由は、その結論を選ぶ考えです。
根拠は、理由を支える記録や数値など、確認できる情報を指します。
たとえば、「作業時間を減らせる」が理由なら、試行時の作業時間の記録が根拠に当たります。
Q. ロジカルシンキングにはフレームワークの暗記が必要ですか
最初から多くのフレームワークを覚える必要はありません。
まずは、問い、結論、理由、根拠を分けてつなぐ練習で十分です。
情報の分類や前提の検証で行き詰まったときに、MECEやクリティカルシンキングなど、課題に合う方法を選びます。
Q. 筋道を整えても説明に納得してもらえないのはなぜですか
結論、理由、根拠の間に、説明していない前提が残っている可能性があります。
たとえば、一つの部署で得られた結果を、そのまま全社に当てはめている場合です。
「なぜそう言えるのか」を要素ごとにたどり、答えに詰まる箇所があれば、理由や結論まで戻って見直します。
編集後記
個人的には、ロジカルシンキングは、頭の回転の速さを示す技術ではないと感じています。
自分の考えをいったん止めて、問いと結論、理由と根拠がつながっているかを確かめ直すための方法です。
数字や記録を示していても、そこから導いた解釈まで事実として扱えば、説明の筋道は崩れます。
ただし、感覚や受け取り方をすべて排除すればよいわけでもありません。
仕事では、確認できる事実と、その事実をどう評価するかを分けたうえで、両方を判断材料にすることがあります。
説明がまとまらないときは、「自分には考える力がない」と決めつける前に、問い、結論、理由、根拠のどこでつながりが切れているかを見てみてください。
直す箇所が分かれば、説明全体を最初から作り直さずに済むこともあります。
参照・参考サイト
科学技術振興機構 JREC-IN Portal・2-1 論証とは何か
https://jrecin.jst.go.jp/html/compass/e-learning/46-900/lesson/lesson2-1.html
科学技術振興機構 JREC-IN Portal・2-4 根拠と主張の関係を保証する論拠
https://jrecin.jst.go.jp/html/compass/e-learning/46-900/lesson/lesson2-4.html
総務省統計局 Data StaRt・C(conclusion、結論)分析結果の考察・結論
https://www.stat.go.jp/dstart/point/seminar1/06.html
科学技術振興機構 JREC-IN Portal・1-1 クリティカル・シンキングとは何か
https://jrecin.jst.go.jp/html/compass/e-learning/46-900/lesson/lesson1-1.html
中小企業庁・課題の見極めに必要な思考法とアプローチ法
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/keiei_bansou/guideline/002/s003.pdf
科学技術振興機構 JREC-IN Portal・3-4 仮説演繹の使われ方
https://jrecin.jst.go.jp/html/compass/e-learning/46-900/lesson/lesson3-4.html


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