GA4やサーチコンソールの数字は毎日確認している。なのに、具体的にどこを直すべきか、なかなか決まらない。そんな状態が続いているとしたら、見る数字を増やすより先に、「見る順番」を整えたほうが早いかもしれません。
離脱率やCVRの変動に反応して、場当たり的な施策を重ねるのは実際の現場ではよくあることです。ただ、数字はあくまで「症状」です。その裏にあるユーザーの行動や、サイト構造のどこかに詰まりがあるとしたら、症状だけ追っていても根本的な解決にはなりません。
この記事では、Web課題分析の全体像を順番に整理します。目的やKPIの確認から始まり、流入・離脱・CVRをどうつなげて読むか、そしてカスタマージャーニーやファネル分析といった手法のうち「今の自社に必要なのはどれか」をどう判断するか。B2B・EC・メディアといったサイト形態ごとに重点の置き方が変わる部分も、あわせて触れています。
「なんとなく」の改善を卒業して、成果につながる確かな一手を打つ。そのための判断基準を、ここから一緒に整理していきましょう。
【1】Web課題分析は「悪い数字探し」ではない
数字を見ているのに、直す場所が決まらない。Web課題分析が必要な状態というのは、だいたいそこから始まります。悪い指標を並べることが目的ではなく、全体の流れを止めている一点を特定すること。その違いを意識するだけで、分析への向き合い方はかなり変わります。
多くの現場で起きているのは「数字が悪い箇所を見つけて終わる」パターンです。「なぜその数字が悪いのか」「どこを直せばサイト全体が変わるのか」という問いまで届かないまま、次の施策に移っていく。まずは、分析を正しく進めるための基本的な見方を整理します。
勘ではなくデータで課題を見る前提
感覚で話し始めると、会議はたいてい長引きます。「デザインが古い気がする」「このボタンは使いにくそう」——主観的な意見は否定しにくいぶん、議論が着地しにくい。
「このページで離脱が増えている」とデータを共有するだけで、話の起点が変わります。声の大きな意見より先に、ユーザーの行動が基準になる。数字を共通言語にすることで、判断がぶれにくくなります。
Web課題分析はボトルネック特定が本命
流れを止めている「ボトルネック」を見つけること——これがWeb課題分析の本来の役割です。そこを改善しない限り、他をいくら強化しても全体の成果は増えません。
たとえば、広告で大量のユーザーを集めても、入力フォームが複雑で誰も完了できなければ、集客コストを増やすほど損失が広がるだけです。解決すべきは広告文ではなく、フォームの使い勝手にある。全体のどこが詰まっているかを一点に絞ること。それが分析の核心です。
離脱率やCVRを課題と誤認しない
「離脱率が高いことが課題です」「CVRを上げることが課題です」という言い方をよく聞きますが、これらは課題ではなく、現象です。
指標そのものを課題と置くと、「離脱率を下げるためにポップアップを出す」といった、かえってユーザー体験を損なう施策を選びやすくなります。離脱率が高い裏には、「知りたい情報がすぐ見つからなかった」「ページが重くて待てなかった」といった具体的な事情があります。数字の奥の「なぜ」まで踏み込んで、初めて改善すべき課題が見えてきます。
サイト外の要因かどうか切り分ける
分析を始める前に、「その問題は本当にWebサイトの中で解決できるか」を確認しておく必要があります。数字が悪化している原因が、サイトの構成や導線にあるとは限らないからです。
・競合他社が大規模な値下げキャンペーンを始めた
・商品の需要が季節的に落ち込んでいる
・配送費が高く決済画面で離脱されている
こうした要因は、サイトをいくら改修しても動かせません。「集客経路(外部要因)」「商品力(ビジネス要因)」「サイト構造(内部要因)」のどこに問題があるかを大きく切り分けること。これが出発点です。
分析が必要になる典型場面
Web課題分析が役立つのは、「売上を上げたい」という場面だけではありません。実務ではむしろ、次のような「判断に詰まった状態」のときに出番があります。
・GA4は見ているが、どこから手をつけるべきか優先順位が決まらない
・社内から「ここを直すべき」という意見がバラバラで収拾がつかない
・一定の成果は出ているが、これ以上の伸びしろがどこにあるか見えない
・リニューアルを検討しているが、現状の何が問題かを言語化できていない
こうした停滞感があるとき、数字を課題へ翻訳する作業が必要になります。
施策の前に分析が要る理由
「分析している暇があったら施策を打とう」というスピード感は理解できます。ただ、原因を特定しないまま動くと、施策が終わったあとに「何が効いたのかわからない」状態になりやすい。フォームを直したのか、流入の質を変えたのかが曖昧なまま進むと、振り返っても手がかりが残りません。
分析を先に行うことで、限られた予算とリソースを「成果に最も直結する一点」に集中できます。施策が外れたときも、「なぜ効かなかったのか」をデータから辿れる。そのサイクルが積み重なることで、次の判断が少しずつ早くなっていきます。
【2】Web課題分析は全体構造から見ないとずれる
個別の数字を深掘りする前に、サイト全体の構造を一度把握する。この順番を守らないと、部分的な改善にはつながっても、サイト全体の成果は動かないまま終わります。分析の軸がぶれやすいのは、たいていここをすっ飛ばしているときです。
最初に目的とKPIを確認する理由
Web課題分析を始めるとき、まず立ち返るべきは「サイトの目的」と「KGI /KPI」の確認です。ゴールが「資料請求」なのか「ECでの購入」なのか「PV向上」なのかによって、同じ数字でも評価は変わります。
目的が曖昧なまま分析を始めると、「PVが減っているから問題だ」という判断になりやすい。ただ、ターゲット外の流入が減り、質の高いユーザーのCVRが上がっているなら、それは課題ではなく望ましい変化かもしれません。何を「成功」と定義しているかが曖昧だと、数字はすぐ迷子になります。
【関連記事|A02】KPIツリーで事業の全体構造を可視化する方法
計測前提がずれると分析もずれる
どれほど高度な手法を使っても、元のデータ計測が正しくなければ、結論はすべて的外れになります。分析の前に、まずGA4などの計測ツールが意図通りに動いているかを確認する。ここを飛ばすと、あとで苦しくなります。
よくあるのは、自社内からのアクセスが除外されていなかったり、コンバージョンの重複カウントが発生しているケースです。特定のブラウザやデバイスで計測できていない場合、存在しない「偽の課題」を追いかけてしまうリスクもあります。分析結果を信じる前に、まず足元のデータを疑う姿勢が必要です。
特に特殊な計測の場合は、計測設定したあとのデータしかとれませんので気をつけましょう。
流入数とCVRを分けずにつなげて見る
「流入が減っているのはSEOの問題」「CVRが低いのはサイト内の構成の問題」と単純に切り分けるのは危険です。流入とサイト内行動は、本来つながっているからです。
CVRが低下している原因が、サイト内の導線ではなく「獲得しているキーワードの質」にあるケースは少なくありません。コンバージョン意欲の低いユーザーを大量に集めてしまえば、サイト内がどれだけ整っていてもCVRは下がります。流入(どこから来たか)とサイト内(何をしたか)を一本の線でつなげて見ることで、本当のボトルネックが見えてきます。
【関連記事|B01】GA4で“何を見るべきか”を構造から理解する分析フレーム
ユーザー行動を入口から追って見る
ページ単体の評価だけでなく、ユーザーがサイト内で辿る「一連の体験」を見ることが大切です。ユーザーは検索結果から入り、複数のページを読み、納得して初めてアクションを起こします。特定のページだけ切り取って評価しても、流れの中で何が起きているかは見えません。
- 検索意図とランディングページの内容は一致しているか
- 次に読むべきページやボタンが適切なタイミングで現れるか
- 途中で迷ったり、情報を探したりする無駄な動きがないか
入り口から出口までの流れを追うことで、数字だけでは見えてこない離脱の原因が浮き上がってきます。
部分最適ではなく全体最適で考える
特定のページの離脱率を下げても、サイト全体のコンバージョンが増えないことがあります。一箇所だけ良くする「部分最適」に陥っているときに起きやすいパターンです。
トップページの数字だけ良くなっても、その先でフォーム到達率が落ちていれば意味がありません。見るべきなのは、その改善が最終成果を動かすかどうかです。改善するたびに「この変化は、どこに波及するか」を意識しておくと、的外れな施策を減らせます。
全体を俯瞰する視点が整ったところで、次は具体的な数字をどう読み解き、改善可能な課題へ変換していくかを見ていきましょう。
【3】離脱率・CVR・流入数を課題に変える見方
アクセス解析ツールの数字をそのまま眺めていても、具体的な改善策は見えてきません。流入数、離脱率、CVRといった数値は、サイトの状態を示すサインではあっても、それ自体が答えを教えてくれるわけではありません。ここでは、これらの数字を改善可能な「課題」へ変換するための見方を整理します。
流入減少で疑うべき課題を絞り込む
流入数が落ちたとき、すぐSEOだけを疑うと外しやすいです。流入減少の裏には、自社では制御できない動きと、サイト内の技術的な不備が混在しているからです。
まず確認すべきは、落ちているのが「特定ページだけか」「サイト全体か」「検索だけか、広告やSNSも含むか」という切り分けです。特定ページだけなら、URL変更時のリダイレクト設定ミスといった内部の問題かもしれません。サイト全体で落ちているなら、アルゴリズムの変化や検索需要そのものの変動を疑う必要があります。見る範囲を絞ることで、調べるべき仮説が変わります。
【関連記事|D01】SEO集客の全体構造をつかむ:検索意図から改善プロセスまでの実践ガイド
離脱率上昇を原因別に切り分ける
離脱率が上がると反射的に「悪いこと」と捉えがちですが、「満足した結果の離脱」と「不満による離脱」の2種類があります。
ユーザーが求めていた情報をそのページで十分に得られたなら、離脱はむしろ自然な行動です。一方、次に進むべきボタンが見つからない、ページが重くて表示されない、内容が期待外れだった場合の離脱は、対処が必要です。ページ内のスクロール率や滞在時間、ヒートマップの動きをあわせて確認することで、満足して帰ったのか、途中で諦めたのかをある程度推測できます。
CVR低下を導線と訴求で分ける
CVRが低下しているとき、論点は大きく「導線の不備」と「訴求の弱さ」の2点に絞られます。
ユーザーがコンバージョンボタンにたどり着けていないなら、導線の課題です。ボタンの配置がわかりにくい、フォームまでのステップが長すぎるといった構造的な問題が考えられます。一方、ボタンまではクリックされているのに最終アクションに至らない場合は、商品やサービスの魅力が伝わっていない、価格や信頼性に懸念があるといった訴求の課題です。数字がどの地点で止まっているかを見ることで、直すべきなのが「見た目や配置」なのか「言葉や中身」なのかが見えてきます。
B2B・EC・メディアで見る軸は変わる
重視すべき指標や起きやすいボトルネックは、サイトのビジネスモデルによって異なります。自社のサイト特性に合わせた見立てを持つことで、分析の精度は上がります。
| サイト種別 | 重視する指標 | 起きやすい ボトルネック | 読み違えやすい点 |
|---|---|---|---|
| B2Bサイト | 資料請求数、有効リード率 | 検討材料の不足、フォームの項目過多 | PV増が質の高いリード増に直結するとは限らない |
| ECサイト | カート投入率、決済完了率 | 送料などの追加費用、決済手段の不足 | 販促期間の変動に真の課題が隠れやすい |
| メディア | 読了率、回遊率、再訪率 | 関連記事への導線不足、広告の邪魔さ | 直帰率が高くても1記事で満足しているケースがある |
定量分析と定性分析をどうつなぐか
GA4などの定量分析で「このページで8割のユーザーが離脱している」という事実が見えても、それだけでは直し方は決まりません。そこでヒートマップやユーザーテストを見ると、「どこで読むのをやめたのか」「何を探していたのか」がつながってきます。
数字は課題の場所を教えてくれます。ただ、なぜそこで離脱したのかという理由は、ユーザーの振る舞いの中にあります。この2つをつなげて初めて、納得感のある改善案が出てきます。
数字の正体が見えてきたところで、次は膨大な分析手法の中から「今、自分はどれを使うべきか」を整理していきましょう。
【4】どの分析手法を使うべきかを迷わず整理する
分析手法の名前は知っている。でも、今の自分の状況にどれが合うのかがわからない。そういう迷いは珍しくありません。手法をすべて網羅する必要はなく、今抱えている「迷いの正体」に合わせて選べれば十分です。ここでは、実務でよく使われる手法の役割と、どんな場面で投入すべきかを整理します。
カスタマージャーニーが効く場面
「サイト全体の体験が、ユーザーの期待とどこかずれている気がする」という感覚があるとき、カスタマージャーニーが役立ちます。
ユーザーが商品を知り、検討し、購入に至るまでの行動と感情を時系列で整理する手法です。単一ページの改善ではなく、広告で抱いた期待と、遷移先のページでの体験に温度差が生じていないかを確かめたい場面に向いています。
【関連記事|A01-01】カスタマージャーニーでユーザー行動を可視化する方法
課題分解フレームが効く場面
「全体の成果が伸び悩んでいるが、どこに原因があるかわからない」という漠然とした状態を整理したいときに使います。
ロジックツリーなどを使って、大きな問題を小さな要素に切り分けていく思考法です。売上を「流入数×CVR×客単価」に分解し、さらにチャネル別に細分化することで、優先的に手をつけるべきボトルネックが見えてきます。
【関連記事|A01-04】Web課題分析を加速する“分析テンプレート”の使い方
検索意図の分析が効く場面
アクセスはあるのに、読まれず終わる。そんなページは、コンテンツの質より先に「検索してきた人の期待」を見直したほうが早いかもしれません。そこで使うのが検索意図の分析です。
ユーザーが特定のキーワードで検索した背景にある「知りたい」「解決したい」という本音を推測し、ページが提供している内容と一致しているかを検証します。滞在時間が短くCVにもつながらないページの原因を探るときに、特に有効です。
【関連記事|A01-03】検索意図を正確に読み解き、記事構造に落とす方法
ファネル分析が効く場面
「カートには入るけれど決済まで至らない」といった、コンバージョン直前の離脱が気になるときに使います。
入り口から購入完了までの各ステップを漏斗に見立て、どこでどれだけ脱落しているかを数字で測る手法です。ECサイトや問い合わせフォームなど、明確なゴールがある導線の改善に向いています。集中的に改修すべき場所を特定するのに直結します。
【関連記事|A01-06】ファネル分析で課題位置を正確に見つける実践メソッド
KPI分解が効く場面
「現場が日々どの数字を追えばいいか決まっていない」という実務の迷いをなくしたい場面で役立ちます。
最終目標(KGI)を達成するために必要な中間指標を数式で結びつける作業です。問い合わせを増やすために、事例ページの閲覧数を先に増やすべきか、フォームの完了率を上げるべきか。こうした現実的なアクションプランを導き出すために使われます。
【関連記事|A01-07】KPIを構造的に分解するための設定フレームワーク
ヒューリスティック分析が効く場面
データが十分にたまっていない新規サイトや、GA4の数字だけでは「なぜ使いにくいのか」を言語化できないときに有効です。
経験豊富な専門家が、UIやUXの原則に照らしてサイトを評価する手法です。「ボタンが押しにくい」「メニューの言葉がわかりにくい」といった基本的な使いやすさの欠陥を、データを待たずにスピーディーに見つけられます。
ユーザー行動観察が効く場面
「離脱率はわかっているのに、ユーザーがなぜその操作をしたのか想像できない」という袋小路に入ったとき、実際のユーザーにサイトを使ってもらう行動観察が有効です。
数字だけでは見えなかった迷い方が、ここでやっと見えてくることがあります。作り手が当然だと思っていた動きが、実際にはかなり伝わっていなかったと気づく場面も少なくありません。
課題分析テンプレートが効く場面
分析のやり方が人によってバラバラだったり、チーム内で課題の定義を揃えたかったりする場面で役立ちます。
決められた項目を埋めていくことで、誰でも一定の精度で課題を抽出できるフォーマットです。型に沿って整理することで情報の抜け漏れを防ぎ、判断の根拠を共有しやすくなります。
【関連記事|A01-02】課題分解を最短で行うための実践フレームワーク大全
分析手法の使い分けマップ
| 分析手法 | 向いている課題 | 見えること | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| ファネル分析 | 特定導線の離脱改善 | 脱落ポイントと離脱率 | EC・フォーム・登録フロー |
| 検索意図分析 | コンテンツの不一致 | ユーザーの欲求と満足度 | SEO・記事・集客ページ |
| KPI分解 | 施策の優先順位付け | 成果に繋がる重要レバー | 日々の運用・アクション決定 |
| 行動観察 | ユーザー心理の理解 | 数字に現れない「迷い」 | 抜本的なUX改善・リニューアル |
自分の状況に合った手法が見えてきたでしょうか。次は、データはあるのに課題が決まらないという実務上の壁をどう乗り越えるかを整理します。
【関連記事|A01-05】課題抽出がうまくいかない理由と改善の着眼点
【5】数字はあるのに課題が決まらない実務の壁
データは手元にある。なのに、結局何を直せばいいのか決まらない。Web課題分析の実務で一番困るのは、この状態です。数字の羅列を眺めるだけでは、改善の確信は得られません。ここでは、現場でよく直面する停滞を突破するための見方を整理します。
アクセスはあるのにCVが伸びない
集客は順調なのにコンバージョンが増えない場合、来ているユーザーが求めているものと、ページが提示している解決策がずれている可能性があります。アクセス数が足りないのではなく、流入の質とページの出口が噛み合っていない状態です。
この壁を突破するには、流入キーワードや広告クリエイティブを見直し、ユーザーが抱いている期待とページの内容にずれがないかを確認します。「量」の議論から一度離れて、ターゲット層の熱量という「質」の側面から捉え直すことが必要です。
離脱率は高いのに打ち手が決まらない
「離脱率が高い」という事実だけでは、ページの中身を書き直すべきか、導線を変えるべきかの判断はつきません。ユーザーが「なぜ」そのページを閉じたのかという心理が見えていないからです。
こうした場面では、ヒートマップツールでユーザーの視線の動きを追う、あるいは自分でスマートフォンを持ってサイトを操作してみるのが手っ取り早いです。「ここで専門用語が出てきて読む気が失せた」「次のボタンが広告に隠れて見えなかった」といった、数字の裏側にあるストレスを言語化することで、具体的な改修案が見えてきます。
GA4とGSCがつながらず迷う
GA4で「サイト内の行動」はわかるものの、Googleサーチコンソール(GSC)で見える「検索時の心理」と紐づけられずに迷うケースは多いです。入口と中身のデータが分断されていると、どこを直せばいいかが見えにくくなります。
解決の糸口は、重要ページに絞って「どんな言葉で検索して入り(GSC)、その後どのボタンを押したか(GA4)」をセットで観察する習慣をつけることです。点と点がつながることで、「この悩みを抱えて来た人が、ここでつまずいている」という一本のストーリーとして課題を抽出しやすくなります。
【関連記事|B02】サーチコンソールを“分析の軸”として使いこなすための構造ガイド
表示速度とモバイル表示で取りこぼす
コンテンツの中身ばかりに目が向いて、表示速度やモバイルでの操作性という土台の課題を見落とすことがあります。どんなに良い内容でも、表示に3秒以上かかればユーザーの半数は去るといわれています。
特にB2Bサイトやメディアでは、制作や確認がPC中心になりがちです。ただ、実際のユーザーの多くは移動中のスマートフォンで閲覧しています。文字が小さすぎないか、親指でボタンが押せるか。高度な分析手法を試す前に、ここを確認しておく価値はあります。
営業とCSの声から課題を拾う
アクセス解析の数字に行き詰まったら、顧客と直接接点を持つ営業担当やカスタマーサポートの声に耳を傾けてみてください。ツール上の数字は「何が起きたか」を教えてくれますが、現場の声は「サイトの何が足りなかったか」をかなり率直に教えてくれます。
「料金表が見つけづらいと言われた」「あの説明がわかりにくいと指摘された」といった声は、定量データだけではたどり着けない不足を具体化してくれます。数字だけでは曖昧だった課題が、ここで輪郭を持ち始めることがあります。
数字が悪化した変化点からたどる
課題の所在がわからなくなったときは、「いつから数字が悪くなったのか」という変化点を探ります。急落しているなら、そこには必ず何らかのきっかけがあるはずです。
- サイトの改修を行ったタイミングではないか
- 競合他社が強力なキャンペーンを始めた時期ではないか
- 特定の流入元の設定が変わっていないか
変化の起点が特定できれば、調査すべき範囲はぐっと狭まります。原因不明の停滞に悩んだときこそ、カレンダーと数字を照らし合わせる「過去との比較」が有効です。
施策ありきで課題を後付けしない
「このツールを導入したいから課題を探そう」「このデザインに変えたいから離脱率が高い理由をこじつけよう」という後付け分析は、本質的な改善を遠ざけます。
自分の思い込みを補強するために数字を使うのではなく、数字が示す不都合な事実から目をそらさないこと。それが結果として、最短距離での改善につながります。
実務上の壁を乗り越える視点が揃ったところで、最後はこれらの分析をどのように実際の「着手」へとつなげるか、その優先順位の付け方を整理しましょう。
【6】自社はどこから着手すべきかを見極める
分析の結果が出ても、最初の一歩が決まらなければサイトは変わりません。課題が複数見えてきたとき、どれから手をつけるかで、その後の成果は大きく変わります。ここでは、着手順を決めるための判断基準を整理します。
流入課題か導線課題かを見分ける
最初に判断すべきは、「バケツ自体に穴が開いているのか(導線課題)」、それとも「そもそもバケツに水が注がれていないのか(流入課題)」の切り分けです。
CVRが極端に低い状態で広告費を増やしても、コストが積み上がるだけです。逆に、サイト内の導線が整っていても、ターゲットユーザーが月に数人しか訪れていないなら、まず流入経路の確保が先になります。自社の現状が「数」の不足なのか、「率」の低迷なのかを先に明確にしておくと、リソースの向け先が決まりやすくなります。
影響度と改善可能性で優先順位を決める
抽出された課題をすべて同時に進めることはできません。着手順を決めるときは、「影響度(インパクト)」と「改善可能性(コストや難易度)」の2軸で整理するのが外しにくいやり方です。
- まず動かす: 少ない工数で大きな成果が見込めるもの(例:入力フォームの致命的なエラー改修)
- 次に動かす: 工数はかかるが、中長期的に効いてくるもの(例:主要カテゴリのコンテンツリライト)
- 後回し: 工数がかかる割に、成果への寄与が限定的なもの(例:ほぼ見られていない下層ページのデザイン微調整)
「やりやすいもの」から始めるのではなく、「成果を動かすレバーとして重いもの」から選ぶ。この順番を意識するだけで、動いた割に何も変わらないという状態を減らせます。
【関連記事|C01】Web課題を“迷わず抽出”できる構造と判断基準の全体ガイド
症状別に深掘りテーマを選び分ける
4章で整理した手法を、今のサイトの状態に合わせて選びます。
- 特定ページでユーザーが消える場合:ヒートマップやユーザー行動観察で「心理」を探る
- サイト全体でコンバージョンが伸び悩む場合:KPI分解で「どこにブレーキがかかっているか」を特定する
- 流入はあるけれどすぐ帰ってしまう場合:検索意図分析で「期待とのズレ」を確認する
症状と手法を正しく対応させることで、分析作業が目的化するのを防ぎ、解決に近いところから掘り始められます。
最初に掘るべき論点を絞り込む
着手テーマが決まったら、「今回の分析で何を白黒つけるのか」という論点を1つか2つに絞ります。「サイト全体を良くする」といった広すぎる問いでは、調査範囲が広がりすぎて結論が出ないまま終わります。
「このランディングページの離脱原因は、価格提示のタイミングにあるのか、信頼性の不足にあるのか」といった具体的な仮説を立て、その検証に必要なデータだけを掘り下げる。絞る勇気が、分析のスピードと精度を同時に上げます。
施策後に確認すべき数字を決める
施策を実行する前に、「どの数字がどう変われば成功か」をあらかじめ決めておきます。これを決めておかないと、施策後に「なんとなく良くなった気がする」という曖昧な評価で終わり、次の判断に活かせません。
「ボタンの色を変える」という施策なら、見るべきはサイト全体の売上ではなく、そのボタンのクリック率です。施策の影響範囲を正しく反映する指標をセットで決めておくことで、分析から改善、評価までの流れが論理的につながります。
PDCAで改善を回し続ける考え方
1回の施策で大きく変わることは稀です。小さな仮説検証を積み重ねることでしか、成果は動きません。
「分析→仮説→実行→検証」を繰り返すことで、自社サイトにおけるユーザーの行動パターンや、効果的な訴求の傾向がナレッジとして溜まっていきます。1回で正解を当てようとするより、数字がどう変わったかを見て次の仮説を足していくほうが、実務では結局進みやすいし、精度も上がっていきます。分析を特別なイベントにせず、数字の変化を「なぜ?」と問い続ける習慣をチームに根付かせること。それが、地味ですが一番続く改善の形です。
編集後記
Web課題分析という言葉を聞くと、どこか冷たくて無機質な作業を想像してしまうかもしれません。私も20年近くこの業界にいますが、画面越しに数字と向き合い続けていると、時々「これって何のための作業だっけ」と止まることがあります。
数字を見ても決めきれないとき、指標を増やすより先に「今回は何を切り分ける分析なのか」を決めたほうが進みます。論点が絞れると、見るべきデータも自然に絞れる。この記事で整理した流れが、そのための起点になればうれしいです。
参照・参考サイト
Google アナリティクス ヘルプ・[GA4] 推奨イベント
https://support.google.com/analytics/answer/9267735?hl=ja
Search Console ヘルプ・検索パフォーマンス レポート(検索結果): 概要と基本設定
https://support.google.com/webmasters/answer/7576553?hl=ja
Search Console ヘルプ・Core Web Vitals レポート
https://support.google.com/webmasters/answer/9205520?hl=ja
Google 検索セントラル・ページ エクスペリエンスと Google 検索結果への影響
https://developers.google.com/search/docs/appearance/page-experience?hl=ja
Google 検索セントラル・Core Web Vitals と Google 検索の検索結果について
https://developers.google.com/search/docs/appearance/core-web-vitals?hl=ja
Google AdSense ヘルプ・モバイルページの読み込みを速くする
https://support.google.com/adsense/answer/7450973?hl=ja


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