KPI設定とは、KGI(事業目標)達成に向けた中間指標を決め、現在値、目標値、期限、確認頻度、見直し条件まで具体化する作業です。単に指標名を選ぶだけではなく、その数字を見たあとに何を確認し、どの改善につなげるのかまで考えておくと、KPIは日々の判断に使いやすくなります。
上司やクライアントからKPI設定を求められたとき、問い合わせ数、SEO流入、CVR、クリック率、フォーム完了率など、KPI候補になる数字はたくさんあります。どれも必要に見えるからこそ、どの数字を優先すればよいのか迷いやすいところです。未達だったときに何を見直すのかまで決まっていないと、レポートは作れても、次の施策がなかなか決まりません。
この記事では、KGI・課題・KSFからKPIを逆算し、候補を絞り込み、目標値や期限、運用方法まで落とし込む流れを解説します。Web改善の目的別のKPI設定例も交えながら、先行指標と結果指標の分け方、他指標への副作用、未達時の見直し方まで見ていきます。
KPIは、管理のためだけに置く数字ではありません。数字を見たあとに、どこを確認するのか、誰が次の判断をするのか。そこまで決めておくことで、KPIは改善を進めるための手がかりになります。

【1】KPI設定の前にKGI・課題・KSFを整理する

KPIを決めるとき、最初から指標名を選ぼうとすると迷いやすくなります。問い合わせ数、CVR、クリック率、フォーム完了率など、候補になる数字はいくつもあるからです。
その前に確認しておきたいのが、KGI・課題・KSF・改善対象です。KPIは、最終目標を達成するために、現場がどこを改善すればよいかを確認する中間指標です。先に目的や課題が曖昧なままだと、数字は並んでいても「それで何を直すのか」が分かりにくくなります。
たとえば「問い合わせ数を増やしたい」という目的があっても、流入が足りないのか、サービスページへの導線が弱いのか、フォームで離脱しているのかによって、見る数字は変わります。CVRやクリック率だけを先に置いてしまうと、施策とのつながりが薄くなることもあります。
KPI設定の前段階では、「最終的に何を達成したいのか」「何が成果を妨げているのか」「成果に効く成功要因は何か」「今回どこを改善対象にするのか」を決めます。そうすることで、KPIを管理用の数字ではなく、改善判断に使う数字となっていきます。
KPI設定では最初にKGIを明確にする
KPIを決める前に、まず確認するのは、前提になるKGIです。KGIとは、事業や施策で最終的に達成したいゴールを数値で表した指標のことです。
Web改善では、事業部や経営企画、クライアントなどからKGIが示されることがあります。たとえば、「月間資料請求数を前年同月比120%にする」「問い合わせ数を月30件から45件に増やす」「記事経由の会員登録数を月100件にする」といった目標です。KGIが曖昧なままKPIを決めると、ページビュー数、クリック率、滞在時間、CVRなどの数字が並んでも、どれを優先すべきか判断しづらくなります。
たとえば、同じ「SEO流入を増やす」という施策でも、KGIが「問い合わせ数」なのか「記事経由の会員登録数」なのかで、KPIの立て方は変わります。問い合わせ数がKGIなら、アクセス数だけでなく、問い合わせにつながるページへの遷移やCV導線のクリックも見ておきたいところです。認知拡大が主目的なら、検索表示回数や新規ユーザー数を重視する場面もあります。
まずは「最終的に増やしたい成果は何か」をひと言で言える状態にします。KGIがはっきりすると、KPIはその成果に近づいているかどうかの中間指標として考えやすくなります。
KPI設定では改善すべき課題を絞り込む
KGIを決めたら、次に見るのは「何が成果を妨げているのか」です。課題とは、KGI達成を妨げている原因やボトルネックを指します。
ここで気をつけたいのは、数字の悪さをそのまま課題にしてしまうことです。「CVRが低い」「流入が少ない」「直帰が多い」といった状態は、あくまで症状です。その裏にある原因を見ないままKPIを置くと、数字は追っているのに施策が決まらない状態になりやすくなります。
たとえば、問い合わせ数が伸びない場合でも、流入が足りないのか、サービスページまで進まれていないのか、フォームで離脱しているのかによって、優先すべき課題は変わります。課題が違えば、KPI候補も施策も変わります。
KPI設定の段階では、すべての課題を一度に追おうとせず、今回の改善で優先する課題を絞ります。課題が絞れると、KPIは「なんとなく見ておく数字」ではなく、「この課題を改善できているかを確かめる数字」として扱えます。
KPI設定ではKSFを特定して成功要因を決める
課題が見えてきたら、KGI達成に必要な成功要因を考えます。KSFとは、Key Success Factorの略で、KGIを達成するために特に欠かせない成功要因のことです。
KGIが最終ゴール、課題が現在のつまずきだとすると、KSFは「成果を出すために外せない条件」です。KPIは、このKSFがうまく機能しているかを確認するために設定します。
たとえば、課題が「記事からサービスページへの遷移が少ないこと」なら、KSFは「記事を読んだユーザーが自然にサービスページへ進める導線を作ること」と考えられます。この場合、KPI候補には記事内リンクのクリック率、サービスページへの遷移数、CTAのクリック数などが入ります。
一方で、課題が「フォーム入力中の離脱」なら、KSFは「ユーザーが迷わずフォームを完了できること」です。この場合は、フォーム完了率、入力エラー率、項目別離脱率などがKPI候補になります。
KSFを挟まずにKPIを決めると、「なぜその数字を見るのか」が説明しづらくなります。KGIとKPIの間にKSFを置くことで、最終成果と日々の改善アクションがつながりやすくなります。
KPI設定では改善対象の範囲を決める
KPIを実務で使うには、今回どこを改善対象にするのかまで決めておく必要があります。改善対象が曖昧なままだと、KPI候補を出しても、どのページや導線に対して施策を考えるのかがぼやけてしまうからです。
Web改善では、改善対象として、記事、サービスページ、CTA、内部リンク、フォーム、問い合わせ後の対応などが考えられます。たとえば、記事からサービスページへの遷移に課題があるなら、改善対象は記事内導線やCTA、記事内での訴求内容などです。フォームで離脱しているなら、入力項目、エラー表示、確認画面までの流れなどが対象になります。
この段階で決めるのは、具体的なKPIそのものではありません。まずは、現場が施策を考える対象を「どのページか」「どの導線か」「どの入力工程か」といった単位に分解します。
改善対象が決まると、KPI候補を出すときの迷いが減ります。KGI、課題、KSF、改善対象がそろっていれば、数字を見たあとに確認すべき場所も決めやすくなります。
【深掘り記事|A02-01】KPI設計を正しく行うための実務フレーム
【2】KPI候補を絞り込む判断基準

KGI・課題・KSF・改善対象が見えてきたら、次はKPI候補を出していきます。ここで無理に一つに絞ろうとすると、必要な数字を見落としやすくなります。
問い合わせ数を増やす場合でも、候補になる数字は一つではありません。検索流入数、サービスページ遷移数、CTAクリック率、フォーム到達数、フォーム完了率など、成果に近づくまでの途中にいくつもの確認ポイントがあります。
ただし、候補をすべてKPIにすると、今度は見る数字が多くなりすぎます。レポートにはたくさん数字が並んでいるのに、結局どこから直すのか決まらない。そうならないように、KGIとのつながり、現場で変えられるか、測定定義が明確か、先行指標・結果指標・副作用の関係を見ながら、実際に追う数字を選びます。
KPIツリーでKGIから候補を分解する
KPI候補を出すときは、KGIから下位の要素へ分解して考えます。そのときに使いやすいのがKPIツリーです。KPIツリーとは、最終目標であるKGIを、成果に影響する中間指標や行動指標に分けて見る考え方です。
たとえば、KGIが「月間問い合わせ数」なら、問い合わせ完了までの流れは次のように分けられます。
| 分解する要素 | 見る指標の例 |
|---|---|
| サイトに来ているか | サイト流入数 |
| 検討ページまで進んでいるか | サービスページ閲覧数 |
| 問い合わせ導線に進んでいるか | フォーム到達数 |
| 入力を完了しているか | フォーム完了率 |
| 最終成果につながっているか | 問い合わせ完了数 |
このように分けると、「問い合わせ数が少ない」という大きな問題を、どの段階で止まっているのかに分けて見られます。流入が少ないのか、サービスページまで進まれていないのか、フォームで離脱しているのかによって、見るべきKPI候補は変わります。
KPIツリーを作る目的は、きれいな図を作ることではありません。KGIから逆算して、成果につながる途中の数字を洗い出すことです。
【関連記事|A02】KPIツリーで事業の全体構造を可視化する方法
KPI候補は現場で変えられる指標に絞る
KPI候補を選ぶときは、その数字を見たあとに、現場が何を変えられるかまで考えます。数字は見えていても、担当者が次の確認や施策に移れない指標だと、KPIとしては扱いにくくなります。
たとえば、SEO改善では「検索順位」が気になる数字です。ただし検索順位は、競合サイトの動きや検索エンジン側の変化にも影響されます。現場で施策につなげるなら、検索結果のクリック率、記事別の流入数、サービスページへの遷移数、内部リンクのクリック率など、改善対象に近い数字も見ておきたいところです。
売上や問い合わせ数のような成果指標も必要です。ただ、数字が下がったときに、すぐ打ち手へ分解しづらい場合があります。そのときは、フォーム到達数、CTAクリック率、サービスページ遷移数など、現場が改善でき、効果も確認できる粒度まで落とし込みます。
KPI候補を見るときは、「この数字が悪かったら、担当者は次に何を確認できるか」と考えると判断しやすくなります。数字を見ても具体的な確認や施策に進めない場合は、KPIではなく参考指標として扱うほうが自然です。
【深掘り記事|A02-02】KPI指標を選ぶための実務ガイド
KPI候補は測定定義が明確な指標を選ぶ
KPI候補は、測定定義が明確なものを選びます。測定定義とは、「どの数字を、どの条件で、どの期間、どのツールから取得するか」を決めたものです。
たとえば「クリック率」をKPIにする場合でも、検索結果のクリック率なのか、記事内CTAのクリック率なのか、バナーのクリック率なのかで意味が変わります。「CVR」も、サイト全体のCVRなのか、フォーム到達後の完了率なのか、特定ページ経由のCVRなのかをそろえないと、同じ数字を見ているつもりでも解釈が変わってしまいます。
KPIとして使うなら、少なくとも次の項目は確認しておきたいところです。
| 確認項目 | 決めておきたい内容 |
|---|---|
| 指標名 | 何をKPIとして扱うか |
| 集計対象 | サイト全体か、特定ページか、特定導線か |
| 集計期間 | 日次、週次、月次など、どの期間で見るか |
| 計測方法 | どのツールやレポートで確認するか |
| 除外条件 | 社内アクセス、重複、対象外ページなどをどう扱うか |
また、KPIは数値指標だけに限りません。満足度、使いやすさ、納得感のような定性的な課題も、アンケートの評価スコア、自由記述の分類、ユーザーテストの評価項目などに落とし込めば、改善判断に使えます。
ただし、「わかりやすさを上げる」「満足度を高める」のような表現だけでは、KPIとしては曖昧です。KPI候補にするなら、「資料請求前アンケートの理解度評価」「フォーム完了後の満足度スコア」など、測れる形まで具体化しておきます。
KPI候補は先行指標・結果指標・副作用で判断する
KPI候補を絞るときは、先行指標、結果指標、副作用の3つを見ます。先行指標とは、成果が出る前に変化を確認しやすい指標です。結果指標とは、最終成果に近い指標を指します。
たとえば、問い合わせ完了数は結果指標です。一方で、サービスページへの遷移数、CTAクリック率、フォーム到達数などは、問い合わせが増える前に変化を見やすい先行指標です。
結果指標だけを見ていると、成果が出なかったあとにしか気づけません。反対に、先行指標だけを見ると、クリック数や遷移数は増えているのに、問い合わせにはつながっていない状態を見落とすことがあります。途中の変化と最終成果を分けて見ることで、改善がどこまで進んでいるのかを判断できます。
もう一つ見ておきたいのが、副作用です。たとえば、CTAクリック率だけを上げようとして強い文言に寄せすぎると、クリック後の期待と実際の内容が合わず、フォーム完了率が下がるかもしれません。SEO流入だけを増やすと、潜在層向けの流入が増えて、問い合わせや資料請求につながりにくくなることもあります。
KPI候補を採用する前に、「その数字を伸ばすことで、他の大事な数字に悪い影響が出ないか」も確認します。単体でよく見える数字ではなく、KGIに向かって無理なく改善できているかを見られる数字を選ぶことが、KPI設定では欠かせません。
【3】KPIを目標値・期限まで具体化する

KPI候補を絞ったら、次はその数字をどの水準まで改善するのかを決めます。
「フォーム完了率をKPIにする」「SEO流入をKPIにする」と決めただけでは、まだ実務で判断できる状態とはいえません。今の数字がどのくらいで、どこまで上げたいのか。いつの時点で成果を見るのか。そこまで決めておかないと、施策を実行したあとに評価が曖昧になります。
この章では、KPIを日々の判断に使える形にするために、現在値、目標値、期限をどう置くかを見ていきます。
KPI設定では現在値を基準にする
目標値を考える前に、まず見ておきたいのが現在値です。現在値とは、KPIとして追う指標が、現時点でどの水準にあるかを示す基準値です。
現在値を見ないまま目標値を決めると、目標が高すぎたり、逆に低すぎたりします。たとえば、現在のフォーム完了率が20%なのか60%なのかで、次に目指す水準は大きく変わります。検索流入数も、月500件のサイトと月5万件のサイトでは、改善の打ち手や期待できる変化が同じではありません。
現在値を見るときは、直近の数字だけで判断しないほうが安全です。キャンペーン、季節要因、広告配信、サイト改修などの影響で、一時的に数字が上下している場合があるからです。週次や月次など、改善サイクルに合わせて一定期間の推移も確認します。
| 確認すること | 見る理由 |
|---|---|
| 現在の数値 | 目標値を決める基準にするため |
| 過去の推移 | 一時的な変動か、継続的な傾向かを判断するため |
| 施策履歴 | 数字の変化と施策の関係を見やすくするため |
| 外部要因 | 季節性、広告配信、サイト改修などの影響を確認するため |
現在値は、単なるスタート地点ではありません。過去の推移とあわせて見ることで、目標値が現実的かどうかを判断する判断基準になります。
KPIの目標値はKGI達成に必要な差分から決める
KPIの目標値は、なんとなく「前年比120%」や「できれば10%改善」と置くのではなく、KGI達成に必要な差分から考えます。KPIの目標値とは、最終目標であるKGIに近づくために、対象の指標をどの水準まで改善するかを示す数字です。
たとえば、KGIが「月間問い合わせ数を30件から45件に増やすこと」なら、必要な差分は月15件です。その差分を埋めるには、流入数を増やすのか、サービスページへの遷移率を上げるのか、フォーム完了率を改善するのかを見ていきます。
フォーム到達数が十分にあるのに完了率が低いなら、KPIの目標値はフォーム完了率を中心に置くほうが自然です。反対に、フォーム完了率は大きく悪くないのに到達数が少ないなら、サービスページ遷移数やCTAクリック率の改善が優先されます。
目標値を決めるときは、次の順番で見ると判断しやすくなります。
- KGIの現在値と目標値の差分を確認する
- 差分がどのプロセスで生まれているかを見る
- 改善対象となるKPIを決める
- そのKPIをどの水準まで上げればKGIに近づくかを考える
- 現場の施策量や過去実績と比べて無理がないか確認する
目標値は、高ければよいわけではありません。高すぎる目標値は、未達が続いたときに振り返りづらくなります。低すぎる目標値は、改善の優先度が上がらず、チームの判断材料として弱くなります。
KGIに必要な差分と、現場で実行できる施策量。その両方を見ながら、目標値を置いていきます。
【深掘り記事|C01-06】課題の優先順位を“正しく”決める判断軸とスコアリング手法
KPIの期限は改善サイクルに合わせて決める
KPIには、目標値だけでなく期限も必要です。KPIの期限とは、設定した目標値をいつまでに達成するかを示す期間のことです。
期限がないKPIは、確認のタイミングが曖昧になります。「そのうち改善するはず」という見方になり、数字が変わっていなくても判断を先送りしやすくなります。反対に、期限が短すぎると、施策の効果が出る前に失敗と判断してしまうこともあります。
たとえば、フォームの入力項目を見直す改善なら、比較的短い期間でも完了率や離脱率の変化を確認できる場合があります。一方で、SEO記事を追加して検索流入を増やす施策では、公開直後しばらくは検索表示回数や流入数に十分な変化が出ないこともあります。同じWeb改善でも、施策の種類によって見るべき期間は変わります。
| 改善内容 | 期限の考え方 |
|---|---|
| フォーム改善 | 変更後の短期推移を見て、入力完了率や離脱の変化を確認する |
| CTAや導線改善 | クリック率や遷移数の変化を一定期間で見る |
| SEO改善 | 検索表示回数、クリック数、流入数の変化を中長期で見る |
| コンテンツ回遊改善 | 内部リンククリック、次ページ遷移、閲覧ページ数の変化を見る |
期限は、早く成果を出すために急かすものではありません。いつの数字を見て判断するのかを、関係者の間でそろえるための基準です。施策の性質に合った期限を置いておくと、数字の変化を落ち着いて見られます。
KPI設定ではSMARTで目標値を確認する
現在値、目標値、期限まで決めたら、最後にSMARTの観点で確認します。SMARTとは、目標が具体的で、測定でき、達成可能で、KGIに関連し、期限があるかを確認する考え方です。
会議では納得できた目標でも、実際に運用し始めると曖昧さが出ることがあります。「CVRを改善する」「SEOを強化する」「問い合わせを増やす」といった表現は方向性としては伝わりますが、そのままでは達成できたかどうかを判断できません。
SMARTで見ると、KPIが実務で使える状態になっているかを確認しやすくなります。
| SMARTの要素 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|
| Specific:具体的か | 問い合わせを増やす | サービスページ経由の月間問い合わせ数を増やす |
| Measurable:測定できるか | フォームを使いやすくする | フォーム完了率を現在値から改善する |
| Achievable:達成可能か | 1か月で問い合わせ数を10倍にする | 過去実績と施策量を踏まえて改善幅を決める |
| Relevant:KGIに関連するか | 見やすい数字だからPVを追う | KGIに近いフォーム到達数や完了率を追う |
| Time-bound:期限があるか | できるだけ早く改善する | 次回の月次確認までに対象指標の変化を見る |
SMARTで確認する目的は、きれいな目標文を作ることではありません。KPIを見たときに、チームが同じ基準で「進んでいるのか」「見直しが必要なのか」を確認できるようにするためです。
指標名、現在値、目標値、期限がそろっていると、数字を見たあとの会話が変わります。単に「上がった」「下がった」で終わらず、目標に対してどこまで進んでいるのか、次に何を確認するのかを話しやすくなります。
【4】Web改善の目的別にKPI設定例を整理する

Web改善のKPIは、目的によって見る数字が変わります。問い合わせ数を増やしたいのか、SEO流入を伸ばしたいのか、フォーム離脱を減らしたいのか、記事回遊を増やしたいのか。同じサイト改善でも、成果までの道筋が違えば、KPIにする数字も変わります。
ここで見たいのは、指標名の正解ではありません。「その数字を見たあとに、どの改善判断ができるか」です。目的と課題が違えば、同じ指標でも主KPIになる場合と、補助指標として見る場合があります。
目的別に考えるときは、KGI、主KPI、補助指標(中間KPI)、副作用を分けておくと判断しやすくなります。
| Web改善の目的 | KGI | 主KPIの例 | 補助指標の例 | 注意すべき副作用 |
|---|---|---|---|---|
| 問い合わせ数を増やす | 月間問い合わせ数 | サービスページ遷移数、CTAクリック数、フォーム到達数、フォーム完了率 | 流入経路別CVR、商談化率、有効問い合わせ率 | 問い合わせ数だけ増えて、質が下がる |
| SEO流入を伸ばす | 自然検索経由の成果数 | 表示回数、クリック率、自然検索流入数、検索経由CV数 | 検索クエリ、記事別流入、サービスページ遷移数 | 流入は増えてもCVにつながらない |
| フォーム離脱を減らす | フォーム完了数 | フォーム完了率、フォーム離脱率、入力開始数 | エラー率、項目別離脱、入力時間 | 簡略化しすぎて必要情報が不足する |
| 記事回遊を増やす | 記事経由のCV・遷移数 | 内部リンククリック率、関連記事クリック数、次ページ遷移数 | 滞在時間、閲覧ページ数、導線別クリック | 回遊は増えても目的ページへ進まない |
表の指標は、すべてのサイトにそのまま当てはまるものではありません。自社サイトのKGIや課題に合わせて、どの数字を主KPIにするか、どの数字を補助的に見るかを考えるための例として見てください。
問い合わせ数を増やすKPI設定
問い合わせ数を増やしたい場合、まず見たいのは問い合わせ完了までの流れです。問い合わせ数はKGIとして置きやすい一方で、未達の原因は一つとは限りません。流入が足りないこともあれば、サービスページへの遷移、CTA、フォーム、問い合わせ後の質に原因があることもあります。
たとえば、サービスページへの訪問は多いのに問い合わせが少ないなら、CTAクリック率やフォーム到達数がKPI候補になります。訴求を変えて検証する場合は、訴求別のCTAクリック率やフォーム到達率も見ておきます。フォーム到達数は多いのに完了数が少ないなら、フォーム完了率や入力途中の離脱率を見たほうが原因に近づけます。
問い合わせ数をKGIにする場合は、途中のどこで止まっているのかを分けて確認します。
| 確認すること | KPI候補の例 |
|---|---|
| 流入が足りているか | サイト流入数、自然検索流入数、広告流入数 |
| 検討ページまで進まれているか | サービスページ遷移数、サービスページ閲覧数 |
| 問い合わせ導線が使われているか | CTAクリック率、フォーム到達数 |
| フォームで離脱していないか | フォーム完了率、フォーム離脱率 |
| 問い合わせの質に問題がないか | 商談化率、有効問い合わせ率 |
問い合わせ数だけを見ていると、未達時に「もっと集客する」「導線を強くする」といった大きな話になりがちです。途中のKPIを置いておくと、どの部分から見直すかを決めやすくなります。
ただし、問い合わせ数を増やすことだけに寄せると、検討度の低い問い合わせや対象外の相談が増えることもあります。問い合わせの質も見たい場合は、商談化率や有効問い合わせ率を補助指標として確認します。
SEO流入を伸ばすKPI設定
SEO流入は、増えたかどうかだけを見ると判断を誤りやすい指標です。自然検索からの訪問が増えても、問い合わせや資料請求につながっていなければ、KGIへの貢献は弱くなります。
検索結果には表示されているのにクリックされていないなら、タイトルやメタディスクリプションの見直しが候補になります。そもそも表示回数が少ないなら、狙うキーワード、記事テーマ、コンテンツの不足を確認します。訪問後にサービスページへ進まれていないなら、記事内導線やCTA、訴求の見直しが必要かもしれません。
SEO流入を目的にする場合は、検索結果での見え方と、訪問後の行動を分けて見ます。
| 確認すること | KPI候補の例 |
|---|---|
| 検索結果に表示されているか | 表示回数、検索順位 |
| 検索結果からクリックされているか | クリック数、クリック率 |
| 自然検索から訪問されているか | 自然検索流入数、記事別流入数 |
| 訪問後に目的ページへ進んでいるか | サービスページ遷移数、CTAクリック数 |
| 成果につながっているか | 検索経由CV数、検索経由CVR |
SEO流入をKPIにするときは、流入の量だけで判断しないことが欠かせません。検索意図の浅いユーザーや検討度の低いユーザーが増えると、流入は伸びてもCVRが下がることがあります。
そのため、自然検索流入数に加えて、検索クエリ、記事別のCV数、サービスページへの遷移数も見ておきます。増えているのが単なるアクセスなのか、成果に近い流入なのか。そこまで分けて見ると、次の改善が決めやすくなります。
フォーム離脱を減らすKPI設定
フォームまで到達しているユーザーは、問い合わせや申し込みに近いところまで進んでいます。だからこそ、入力中の迷いや負担がそのまま成果に影響しやすい部分です。
フォーム到達数はあるのに完了数が伸びない場合、入力項目が多い、必須項目が分かりにくい、エラー表示が伝わりにくい、確認画面までの流れが長いといった原因が考えられます。この場合、フォーム完了率だけでなく、入力開始率、項目別離脱率、エラー発生率もKPI候補になります。
フォーム離脱を減らす場合は、到達から送信完了までのどこで止まっているのかを見ます。
| 確認すること | KPI候補の例 |
|---|---|
| フォームまで到達しているか | フォーム到達数 |
| 入力が始まっているか | 入力開始数、入力開始率 |
| 入力途中で止まっていないか | 項目別離脱率、入力時間 |
| エラーでつまずいていないか | エラー発生率、再入力率 |
| 送信まで完了しているか | フォーム完了率、フォーム完了数 |
フォーム改善では、単に項目数を減らせばよいとは限りません。必要な情報まで削ると、問い合わせ後の対応や商談化に支障が出ることがあります。反対に、必要以上に詳しく聞きすぎると、ユーザーは途中で入力をやめやすくなります。
KPI設定では、フォーム完了率を中心に見つつ、エラー率や項目別離脱、入力時間などもあわせて確認します。完了数を増やすだけでなく、ユーザーが迷わず送信できているかを見るためです。
記事回遊を増やすKPI設定
記事回遊では、読まれたあとにユーザーがどこへ進んだかを見ます。記事は読まれること自体も意味がありますが、関連情報、比較検討ページ、サービスページ、問い合わせ導線へ進んでもらう役割もあります。
記事への流入はあるのに成果につながらない場合、本文内の内部リンクが読者の関心と合っていない可能性があります。関連記事へのリンクはクリックされているのにサービスページへ進まれていない場合は、回遊は増えていても成果導線が弱い状態かもしれません。
記事回遊を目的にする場合は、次のページへの進み方を分けて確認します。
| 確認すること | KPI候補の例 |
|---|---|
| 記事内の導線が使われているか | 内部リンククリック率、CTAクリック率 |
| 関連記事へ進んでいるか | 関連記事クリック数、次ページ遷移数 |
| 検討ページへ進んでいるか | サービスページ遷移数、比較ページ遷移数 |
| 回遊後に成果へ近づいているか | 記事経由CV数、記事経由CVR |
| 読者の関心と導線が合っているか | 導線別クリック、閲覧ページ数、滞在時間 |
記事回遊のKPIでは、記事ごとの役割を分けて考えます。認知向けの記事なら関連記事への遷移を重視し、比較・検討向けの記事ならサービスページや問い合わせ導線への遷移を重視します。
ただし、回遊率やページビュー数だけを追うと、「たくさん読まれているように見えるが、目的ページには進んでいない」という状態を見落とすことがあります。記事回遊のKPIは、読者を無理に移動させるための数字ではありません。読者が次に知りたい情報へ進めているか、サイト側が届けたいページへ自然につなげられているかを判断するための数字です。
【5】KPI設定を継続運用に乗せる

KPIは、指標や目標値を決めただけでは動きません。定期的に数字を見て、変化があったときに原因を確認し、次の施策を話せる状態にしておく必要があります。
せっかくKPIを決めても、確認頻度や担当者が曖昧なままだと、「数字は更新されているけれど、誰が何を判断するのか分からない」という状態になりがちです。レポートを見るだけで終わってしまうと、KPIは改善のための数字ではなく、報告用の数字になってしまいます。
KPIを継続して使うには、確認頻度、担当者、確認範囲、共有方法、レポートする数字をあらかじめ決めておきます。ここまで決まっていると、未達や変化があったときにも、次にどこを見るかを話しやすくなります。
KPI設定では確認頻度を先に決める
KPIを運用するうえで、まず決めておきたいのが確認頻度です。確認頻度とは、日次、週次、月次など、どのタイミングで数字を見て判断するかのルールです。
確認頻度が決まっていないと、気になったときだけ数字を見る状態になりやすくなります。反対に、毎日見ても判断しづらい数字を日次で追うと、細かな上下に振り回されてしまうことがあります。
たとえば、広告のクリック率やフォーム到達数のように短期で変化を見やすい指標は、日次や週次で確認しやすい場合があります。一方で、SEO流入や記事経由の成果は、公開直後に判断しづらいこともあるため、週次の変化を見ながら月次で判断するほうが合う場面もあります。
| 確認頻度 | 向いている指標の例 | 主な見方 |
|---|---|---|
| 日次 | 広告クリック、フォーム到達、キャンペーン反応 | 急な異常や計測不備を確認する |
| 週次 | CTAクリック率、ページ遷移、フォーム完了率 | 施策後の変化や改善傾向を見る |
| 月次 | SEO流入、問い合わせ数、商談化率 | KGIとのつながりや全体傾向を見る |
すべての数字を同じ頻度で見る必要はありません。数字の変化が出る速さと、チームが判断できるタイミングを合わせておくと、確認作業が負担になりにくくなります。
KPI設定では担当者と確認範囲を決める
KPIを見続けるには、誰がどの範囲を確認するのかも決めておきます。担当者と確認範囲が曖昧なままだと、数字の異変に気づいても、誰が原因を調べるのか、誰が施策を考えるのかが止まりやすくなります。
たとえば、SEO流入のKPIを追う場合、記事担当者が検索クエリやクリック率を見るのか、サイト改善担当者がサービスページへの遷移を見るのか、営業側が問い合わせ後の商談化を見るのかで、確認する範囲は変わります。同じKPIでも、関わる部門によって見るべき数字は少しずつ違います。
担当者を決めるときは、「責任を負う人」を決めるだけでは足りません。最初に数字を確認し、必要に応じて次の確認を始める人を決めておくほうが、実務では動きやすくなります。KPI未達は、必ずしも担当者個人の問題ではありません。流入、導線、フォーム、営業対応など、複数の要因が絡むことが多いからです。
運用時に迷わないように、次の項目を決めておきます。
| 決める項目 | 内容 |
|---|---|
| 定期確認する担当者 | 誰がKPIを確認するか |
| 数字の取得元 | どのツールや画面で確認するか |
| 確認範囲 | 異常値が出たときにどこまで見るか |
| 相談するメンバー | 施策を検討するときに誰を巻き込むか |
| 報告先とタイミング | 誰に、いつ共有するか |
担当者と確認範囲が決まっていると、数字が悪かったときに「誰かが見るだろう」で止まりにくくなります。KPIは責任追及のためではなく、改善の会話を始めるための材料として扱うほうが続けやすくなります。
KPI管理ではダッシュボードで数字を共有し会話する
KPI管理では、ダッシュボードを使って数字を共有できる状態にしておくと、チームで同じ前提を持ちやすくなります。
ダッシュボードとは、KPIや関連指標を一覧で確認できる画面やレポートのことです。GA4やSearch Consoleの数字を、Looker Studioなどでまとめて確認するケースもあります。
ただし、ダッシュボードの目的は、数字をきれいに並べることではありません。数字を見ながら、課題、仮説、施策について話せる状態を作ることです。
たとえば、フォーム完了率が下がっているときに、フォーム到達数、入力開始数、完了数、エラー発生数を並べて見られれば、どの段階で止まっているのかを話しやすくなります。SEO流入が伸びているのに問い合わせが増えていない場合も、記事別流入やサービスページ遷移数を一緒に見ることで、流入の質や導線の課題を確認できます。
ダッシュボードを見るときは、会議や確認作業の順番も決めておくと進めやすくなります。
- KGIに近い結果指標を見る
- 変化が大きいKPIを確認する
- 関連する補助指標で原因を探る
- 次に試す施策や確認事項を決める
ダッシュボードは、報告資料を整えるためだけのものではありません。KPIを見たあとに、チームが同じ数字を見ながら「どこに課題がありそうか」「次に何を試すか」を話すための土台になります。
【関連記事|B01】GA4で“何を見るべきか”を構造から理解する分析フレーム
KPI設定ではレポートする数値を絞る
KPIを運用するときは、レポートする数値を絞ることも必要です。見られる数字をすべて並べると情報量は増えますが、意思決定に使う数字が埋もれてしまいます。
Web改善では、GA4、Search Console、広告管理画面、ヒートマップ、フォーム分析など、確認できる数字が多くあります。けれど、毎回すべての数字をレポートに入れると、読む側は「結局どの数字を見ればいいのか」が分かりにくくなります。
KPIレポートでは、数字を次の3つに分けて考えると見やすくなります。
| 区分 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 主KPI | 改善判断の中心にする数字 | フォーム完了率、サービスページ遷移数 |
| 補助指標(中間KPI) | 原因を確認するための数字 | CTAクリック率、流入経路別CVR |
| 参考指標 | 背景として必要なときに見る数字 | 全体PV、平均滞在時間、検索順位 |
主KPIは、会議やレポートの中心に置く数字です。補助指標は、主KPIが変化した理由を考えるために使います。参考指標は、必要な場面では役立ちますが、毎回の判断材料として前面に出しすぎると、見るべき数字がぼやけます。
数字を減らすことも、KPI運用の一部です。毎回の会議で見る数字が絞れていれば、「今回はどこが動いたのか」「なぜ変わったのか」「次に何を確認するのか」を話しやすくなります。
【6】KPI未達時に見直すべきポイント

KPIが目標に届かなかったときは、未達という結果だけで判断しないようにします。数字が悪かったからといって、すぐに「施策が失敗だった」と決めると、見直す場所を間違えることがあります。
KPIが未達になる理由は一つではありません。課題の見立てが違っていた場合もあれば、施策の内容が合っていなかった場合もあります。効果を見る期間が短すぎた、そもそもKPIとして追う数字が合っていなかった、ということもあります。
まずは、どの段階までは想定どおりで、どこから想定と違っていたのかを見ます。そのうえで、課題、仮説、施策、KPIの置き方を順番に確認していきます。
KPI未達時は指標の変化から課題を切り分ける
KPIが未達だったときは、関連する指標を見ながら、どの段階で止まっているのかを切り分けます。KPIが目標に届いていなくても、すべての数字が悪いとは限りません。
たとえば、問い合わせ数が目標に届かなかった場合でも、検索流入は増えているかもしれません。サービスページへの遷移も増えているのに、フォーム到達やフォーム完了で落ちている場合もあります。反対に、フォーム完了率は悪くないのに、そもそもサービスページへの訪問が少ないこともあります。
このとき、いきなり全体を見直すと、原因がぼやけます。KGIに近い結果指標から順にさかのぼり、どの数字までは想定どおりだったのか、どの数字から想定と違っていたのかを見ます。
| 確認する指標 | 見えること |
|---|---|
| 問い合わせ完了数 | 最終成果が目標に届いたか |
| フォーム完了率 | フォームで離脱が起きていないか |
| フォーム到達数 | 問い合わせ導線まで進まれているか |
| CTAクリック率 | 行動を促す導線が機能しているか |
| サービスページ遷移数 | 検討ページまで進まれているか |
| 流入数 | そもそも十分な訪問があるか |
このように分けると、未達の理由を「問い合わせが少ない」で止めずに見られます。「流入はあるがサービスページへ進まれていない」「フォーム到達までは増えているが完了率が低い」といった形で、確認すべき場所が絞られていきます。
KPI未達時に最初にやることは、すぐ対策を決めることではありません。どの数字が想定どおりで、どの数字が想定と違っていたのかを分けることです。
KPI未達時は仮説と施策を見直す
指標の変化を見たら、次に当初の仮説と施策を見直します。KPIは施策の結果を見るための数字ですが、未達だったときは「数字が悪かった」だけで終わらせず、仮説が合っていたかまで確認します。
たとえば、記事からサービスページへの遷移数を増やすために内部リンクを追加したとします。それでも遷移数が増えなかった場合、単にリンクの数が足りなかったとは限りません。リンクの位置が読者の関心と合っていない、リンク文言から次の行動を想像しにくい、記事の検索意図とサービスページの内容が離れている、といった可能性もあります。
フォーム完了率を改善する施策でも同じです。入力項目を減らしても完了率が変わらない場合、原因は項目数ではなく、エラー表示、必須項目の分かりにくさ、送信前の不安、スマホでの操作性にあるかもしれません。
KPI未達時は、次の順番で確認すると見直しやすくなります。
- 当初の課題設定は合っていたか
- その課題に対する仮説は妥当だったか
- 実施した施策は仮説に対応していたか
- 施策は十分な範囲と期間で実行されたか
- 計測条件や比較期間に違いがないか確認する
未達のたびにKPIそのものを変えると、数字の推移を追いにくくなります。まずは、課題、仮説、施策、確認期間のどこを見直すべきかを確認します。そのうえで、KPIが改善判断に使えていない場合だけ、指標の見直しを検討します。
KPI設定は固定期間と見直し条件を分けて考える
KPIは、一定期間は同じ指標で見続ける必要があります。毎月のように追う数字が変わると、施策の効果を比較しにくくなるからです。
たとえば、今月はCTAクリック率、来月は滞在時間、翌月はPVを中心に見るような運用では、どの改善がKGIに近づいたのか判断しづらくなります。数字を追っているように見えても、判断の基準が毎回変わってしまいます。
一方で、一度決めたKPIをずっと変えないのも危険です。課題の見立てが変わったり、サイト構造が変わったり、事業上の優先度が変わったりすれば、追うべき数字も変わることがあります。
そのため、KPI設定では「いつまでは同じ指標で見るか」と「どんな場合に見直すか」を分けておきます。
| 項目 | 決めておきたい内容 |
|---|---|
| 固定期間 | 施策効果を見るために、どの期間は同じKPIで追うか |
| 定期見直し | 月次、四半期など、どのタイミングで妥当性を確認するか |
| 見直し条件 | KGI、課題、サイト構造、計測定義などが変わった場合にどう判断するか |
| 変更時の記録 | いつ、なぜKPIを変えたのかを残す |
SEO改善では、短期間で判断しづらい指標もあります。反対に、フォーム改善やCTA改善は、比較的早く変化を確認できる場合があります。KPIを固定する期間は、施策の性質に合わせて決めます。
KPIを固定するのは、途中で変えてはいけないという意味ではありません。一定期間は同じ基準で見て、必要なタイミングで理由を持って見直すためです。
KPI設定が形骸化する落とし穴を避ける
KPIが形骸化するのは、数字を見ているのに、改善の判断につながっていないときです。レポートは作っているのに施策が決まらない。会議で数字を確認して終わる。未達の理由が毎回あいまいなままになる。こうした状態が続くと、KPIは実務で使われにくくなります。
形骸化しやすいKPIには、いくつかの共通点があります。
| 形骸化しやすい状態 | 見直したいこと |
|---|---|
| 指標名だけ決まっている | 現在値、目標値、期限、担当者まで決まっているか |
| 数字は見ているが施策が決まらない | 未達時に確認する補助指標があるか |
| 目標値の根拠が曖昧 | KGI達成に必要な差分から決めているか |
| レポート項目が多すぎる | 主KPIと参考指標を分けているか |
| 未達の理由が毎回同じになる | 課題、仮説、施策のどこを見直すか決まっているか |
KPIは、管理表を埋めるためのものではありません。チームが同じ数字を見ながら、課題を見つけ、仮説を立て、次の施策を判断するために使うものです。
KPIが機能しているかどうかは、「毎月数字を見ているか」だけでは判断できません。数字を見たあとに、次の確認や施策が決まっているか。未達時に、どこから見直すかを話せているか。そこまで進んでいれば、KPIは実務で使える指標として機能しています。
KPI設定は、一度作って終わりではありません。KGI、課題、KSF、改善対象をもとに設定し、運用しながら仮説や施策を見直していくことで、現場で使える数字になっていきます。
【関連記事|C01】Web課題を“迷わず抽出”できる構造と判断基準の全体ガイド
編集後記
KPIの話をしていると、つい「どの指標を置くのか」が話題になりがちです。けれど実務では、指標名そのものよりも、その数字を見たあとに改善が進むかどうかです。
私自身、サイト運営やWeb改善の現場で、数字はそろっているのに、会議の最後に「結局、次は何を直すのか」が決まらない場面を見てきました。逆に、追っている数字は少なくても、未達時に見る順番や担当範囲が決まっているチームは、原因の切り分けが早く、施策の話にも進みやすいです。
KPIは、正しい数字をきれいに並べるためだけのものではありません。数字を見たあとに、誰が、どこを確認し、何を変えるのか。その流れを先に決めておくことで、改善の話が感覚ではなく論理的に具体的になります。
数字は、ときに言い訳にもなりますし、逆に次の一手を決める根拠にもなります。どうせKPIを置くなら、報告のための数字で終わらせず、現場で動くための手がかりとして使える形にしておきたいところです。
参照・参考サイト
独立行政法人中小企業基盤整備機構・小規模事業者支援のための業務必携
https://www.smrj.go.jp/supporter/training/fbrion0000004bro-att/R3fy_shoukibo-gyoumuhikkei.pdf
文部科学省 Researcher+・IDPを基本とする育成フロー
https://www.researcherplus.mext.go.jp/good_practice_report/idp-2/
Google Search Console ヘルプ・表示回数、掲載順位、クリック数とは
https://support.google.com/webmasters/answer/7042828?hl=ja
Google アナリティクス ヘルプ・キーイベントについて
https://support.google.com/analytics/answer/9267568?hl=ja
Google アナリティクス ヘルプ・アナリティクスのセッションについて
https://support.google.com/analytics/answer/9191807?hl=ja
Google アナリティクス ヘルプ・アナリティクスのデータを Looker Studio で可視化する
https://support.google.com/analytics/answer/9849873?hl=ja


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