輪郭があらわれるとき

essay03_輪郭があらわれるとき エッセイ

絵を描く人と、デザインをする人。
どちらも「形」をつくるけれど、目の向きが違う。

画家は、自分の中にあるものを外に出そうとする。
思いのままに、線や色を重ねる。
デザイナーはその逆で、誰かに伝わるように形を整える。
見る人の気持ちを想像しながら、線を引く。

言葉の世界も、それに少し似ている。
詩人や小説家は画家に近い。
心の奥深くまで潜り、ことばで描こうとする。
ライターはデザイナーに近い。
読む人の理解を考えて、言葉を並べる。

どちらが正しいわけでもない。
でも、いい文章はそのあいだに生まれる気がする。
感情だけでは伝わらない。構造だけでは心が動かない。
内と外のちょうど真ん中に、伝わる言葉の輪郭がある。

地頭のいい人の話を聞くと、
その“捉え方”の正確さにいつも感心する。
まっすぐに本質を見て、
それを誰もがわかる言葉に置き換える。

たとえば、ひとつの比喩を出すだけで、
抽象的な話が景色へと変わる。
むずかしい話なのに、なぜかすっと理解できる。
説明ではなく、見せてくれるような話し方。

だから聞いているうちに、
頭の中の点がつながっていく。
「あっ、そういうことか」と、自然に腹の底に落ちる。

文章を書くというのも、それに似ている。
最初は、伝えたいことが雲のようにぼんやりしている。
一つずつ言葉にして、霧を少しずつ剥ぐように
余計なものを取り除いていく。

そうして最後に残ったコトバが、
ほんとうに言いたかったことなのかもしれない。
それが誰かの中でも形になって、
理解へと変わっていく。

書くことは、描くことでもあり、整えることでもある。
心の中のあいまいな線を、少しずつ外の世界に写していく。

そしていつか、
その線の向こうに、
誰かの景色があらわれる。

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