KPI設計とは、最終目標(KGI)を達成するために必要な成功要因を分解し、現場の改善アクションで動かせる中間指標を決める作業です。
「GA4やサーチコンソールの数字は毎日チェックしているけれど、結局どの数字を改善すればいいのかわからない」。そう感じたことはないでしょうか。売上や問い合わせ数といった最終成果だけを見ていても、「サイトのどこを、どう直すか」という判断には結びつきにくいのが実情です。とりあえず有名な指標を並べてみたものの、レポートを作って終わり、施策につながっていない。そんな状態が続いているケースも少なくありません。
この記事では、WebサイトのKPI候補を洗い出し、主要な指標と補助指標に整理して、GA4やサーチコンソールで実際に計測できる形へ落とし込むまでの手順を順に確認していきます。
【1】KPI設計は「数字選び」で終わらない
KPI設計とは、最終目標であるKGI(重要目標達成指標)を達成するために、どこに注力すべきかを特定する作業です。計測できる数字を並べることではなく、現場が「次に何をすべきか」を判断するための基準を決めることを指します。
KPIを決めたのに改善が進まない場合、原因は指標の数ではなく、指標の使い方にあることが少なくありません。まずは、KPIを「見る数字」ではなく「判断するための数字」として整理するところから始めます。
KPI設計はKGIから逆算する作業
KPI設計のスタート地点は、必ず最終成果であるKGIにあります。KGI(Key Goal Indicator)とは、売上高や成約数など、ビジネスが最終的に達成したい成果を示す指標です。Webサイト改善では、問い合わせ数、購入数、会員登録数などがこれにあたります。
このKGIから逆算せずに「とりあえずアクセスを増やそう」と決めてしまうと、数字が伸びても売上につながらないという事態が起こりやすくなります。たとえば問い合わせ数を増やしたいなら、「流入を増やすべきなのか」「ボタンのクリック率を上げるべきなのか」「フォームの離脱を減らすべきなのか」を切り分ける必要があります。その優先順位をつけるために、大きな目標を分解して具体的な指標へ落とし込んでいく工程が必要になります。
KPIは改善判断に使うための数字
KPIとして扱う数字は、目標や前週との差と合わせて見たときに「次に何を確認するか」を決めるための指標です。昨日の訪問者数が1,000人だったという事実だけでは、改善の打ち手は決まりません。それが目標に対して足りているのか、先週と比べてどう変化したのか。その解釈ができて初めて、KPIとしての価値が生まれます。
数字が動いても次の判断につながらないなら、それはKPIというより「確認しているただの数字」に近い状態です。レポートの項目を増やすこと自体が目的にならないよう、その数字が上下したときにサイトのどこを修正し、どの施策を止めるのか。その判断の場面を想像しながら指標を選ぶことが大切です。
動かせない数字はKPIにしにくい
現場の担当者が自分たちの工夫や努力でコントロールできない数字は、KPIには不向きです。たとえば「競合サイトの更新頻度」や「季節による需要の変動」などは、サイトを改善しても直接動かすことができません。自分たちの手が届かない数字をKPIに据えてしまうと、未達成が続いたときに現場が疲弊し、改善活動そのものが停滞してしまいます。
たとえばCTAの位置を変えるなら、見るべき数字はCTAクリック率です。フォーム項目を減らすなら、フォーム完了率や離脱率、エラー発生率を見ます。施策と数字が対応しているほど、改善後の振り返りがしやすくなります。
KPIは「次に何を直すか」まで決める
優れたKPI設計は、異常値を検知したときに「どこを直すべきか」というボトルネックの特定を容易にします。「コンバージョン数が減った」という結果に対し、サイト全体を闇雲に調べるのは非効率です。
「フォームの入力完了率」や「詳細ページの閲覧率」といった指標に分解して設計していれば、どの地点でユーザーが離脱しているのかが絞り込めます。コンバージョン数が落ちたときに、最初からサイト全体を疑わずに済む。流入、導線、フォームのどこから見るべきかが決まっているだけで、原因の切り分けはかなり速くなります。
認知や信頼もKPI候補になる
WebマーケティングのKPIというと、ついコンバージョン(CV)に近い数字ばかりを追いかけてしまいがちです。ただ、中長期的な成果を狙うのであれば、ユーザーからの認知や信頼の度合いも重要なKPI候補になります。
たとえば、ブランド名で検索される「指名検索数」の推移や、特定コラム記事の「読了率」などは、すぐには売上に直結しなくても、将来の顧客を育てるための指標です。短期のCVだけを追うと、顕在層ユーザーのみが対象となるため、検討前や潜在層のユーザーの変化を見落としやすくなります。認知を広げる役割のサイトなら、指名検索数、記事の読了、再訪なども候補に入れておくと、フェーズに合わせた判断がしやすくなります。
【関連記事|A01】Web課題を“構造で理解する”ための分析フレームワーク入門
【2】KPI設計とKPI設定を混同しない
KPIを決める場面では、「何を見るか」と「どこまで目指すか」が一緒に話されがちです。ただ、この2つを混ぜると、目標値だけが先に決まり、施策の根拠が弱くなります。設計は「どの指標を改善の基準にするか」を決める工程で、設定は「決まった指標をいつまでにどの程度の数字へ持っていくか」を決める工程です。ここを分けて考えないと、現場の施策と数字の評価に食い違いが生じます。
KPI設計は追うべき指標を決める工程
KPI設計は、サイト改善を成功させるための「ポイント」を特定する作業です。PVや滞在時間、クリック率など数多くの指標がある中から、ビジネスの成果に最も直結する数字を絞り込みます。
たとえば、サイトの目的が「質の高い商談を増やすこと」であれば、単なる問い合わせ数ではなく、特定のフォームへの遷移率や資料ダウンロード後の開封率などをKPIとして設計することになります。「何を測れば改善が進むのか」という項目を定義するのが、この工程の役割です。
KPI設定は目標値や期間を決める工程
KPI設定は、設計によって選ばれた指標に対して、具体的な「量」と「時間」を割り当てる作業です。「来月末までに、フォーム完了率を現在の1.2%から2.0%まで引き上げる」といった数値を決めます。
KPI設計ではフォーム完了率を見るのかCTAクリック率を見るのかを決め、KPI設定ではそのフォーム完了率をいつまでに何%へ上げるのかを決める。この順番が逆になると、設計(指標選び)が不十分なまま目標値だけが一人歩きします。
つまり、KPI設計→KPI設定の順ですすめるということです。
先に目標値を置くと施策がズレる
現場で混乱が起きやすいのは、「とにかくコンバージョンを2倍にしてほしい」といった目標値だけが先行するケースです。数字だけが先に決まると、現場は「どのプロセスを直すべきか」が見えないまま、場当たり的な施策を繰り返すことになります。
無理に数字を作ろうとして質の低いユーザーを集めてしまうなど、本質的ではない行動を誘発することもあります。先に合意しておきたいのは、「どの数字を動かせばKGIに近づくのか」です。ここが曖昧なままだと、集客を増やす人、フォームを直す人、記事を増やす人がそれぞれ別の方向に動いてしまいます。
KPI設計が施策と評価をつなぐ
適切なKPI設計は、実行した改善施策が正しかったのかを客観的に判断するための物差しになります。あらかじめ「入力フォームでの離脱を防ぐことが、最終的な成約に寄与する」という設計がなされていれば、たとえ成約数がすぐに変化しなくても、離脱率が改善されていれば「施策は成功だった」と評価できます。
因果関係が整理されていると、チーム内での共通言語が生まれ、改善のPDCAが回りやすくなります。設計があるからこそ、結果の数字に一喜一憂せず、次に打つべき一手を冷静に判断できます。
【3】KGI・KSF・KPIの関係を整理する
KGI、KSF、KPIを混ぜて使うと、会議で話している内容が混乱します。売上の話をしているのか、成功要因の話をしているのか、日々見る指標の話をしているのか。それぞれをきちんんと認識しておくと、KPI設計の後工程がかなり進めやすくなります。それぞれの役割を確認しておきます。
KGIは最終的に達成したい成果
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、ビジネスやプロジェクトが最終的に到達すべき成果を指します。Webサイト運営であれば、売上高、成約数、会員登録数などがこれにあたります。
KGIが曖昧だと、その下の階層にあるすべての指標が方向性を見失います。「何を成し遂げればこのプロジェクトは成功といえるのか」を、誰が見ても同じ解釈になる定量的な数字で定義することが、すべての設計の起点になります。
以前かかわったプロジェクトでも、KPIは上から降りてきましたが、KGIはスルーされていることがありました。KGIを現場の全員が知っておくことはその先の施策を考える上でも重要になります。
KSFは成果を左右する成功要因
KSF(Key Success Factor:重要成功要因)は、KGIを達成するために「何がキーになるのかという部分です。KGIが「結果」であるのに対し、KSFは「その結果を引き起こすための条件」を指します。
たとえば、KGIが「ECサイトの売上最大化」であれば、KSFは「新規顧客の獲得」かもしれませんし、「既存客のリピート率向上や一人当たりの単価増加」かもしれません。数字を追う前に、「どこに注力すれば成果に近づくか」という戦略的なポイントを言語化しておくことで、KPIの候補が絞り込みやすくなります。
KPIは成功要因を追う中間指標
KPIは、KSFが実際に進んでいるかを確認するための数字です。KSFが「新規顧客の獲得」であれば、自然検索流入数、広告クリック率、資料請求数などがKPI候補になります。
KPIは、現場が日々の活動の中で「今の動きで目標に近づけているか」を確認するための指標です。KGIという遠い成果に対して、今の状態がどこにあるかを教えてくれます。
KPIツリーで成果までの道筋を描く
これら3つの要素の関係性を可視化するツールが「KPIツリー」です。KGIを頂点に置き、それを達成するためのKSFをぶら下げ、さらに具体的なKPIへと枝分かれさせていく樹形図を作成します。
KPIツリーを作る利点は、個別のKPIが最終的なKGIにどう貢献しているかが見えやすくなる点にあります。現場の担当者が「自分の担当する数字を動かすことが、どう成果につながるのか」を確認しやすくなり、チーム全体の判断がそろいやすくなります。
【関連記事|A02】KPIツリーで事業の全体構造を可視化する方法
KPIツリーは四則演算でつなぐ
KPIツリーを作成する際の鉄則は、各指標を掛け算や足し算などの四則演算でつなぐことです。
たとえばWebサイト改善なら、問い合わせ数は「セッション数 × CTAクリック率 × フォーム完了率」のように分解できます。こうしてロジカルにつなぐことで、問い合わせ数が減ったときに、流入不足なのか、導線の問題なのか、フォーム離脱なのかを切り分けやすくなります。「どの数字が何%改善すれば、KGIがどう動くか」をシミュレーションできるようになると、改善の優先順位を感覚ではなく数字で判断できます。
KPIとOKRは使う目的が違う
KPIと並んでよく使われる指標管理に「OKR(Objectives and Key Results)」がありますが、これらは目的が異なります。
KPIは、既存のプロセスを確実に遂行し、目標を管理するための運用管理に重点を置いています。一方、OKRは組織が挑戦したい大きな方向性と、その達成度を共有するための目標管理の枠組みです。Webサイト改善では、日々の改善管理にKPIを使い、大きな方針や挑戦的なテーマや担当者一人一人の目標などをOKRで補うといった使い分けも考えられます。
以下の表に、それぞれの違いを整理しました。
| 指標 | 名称 | 役割 | Webサイト改善 での例 |
|---|---|---|---|
| KGI | 重要目標達成指標 | 最終的な目的地(結果) | 月間成約数 100件 |
| KSF | 重要成功要因 | 成功のための鍵(戦略) | フォームへの到達率向上 |
| KPI | 重要業績評価指標 | 中間プロセスの計測(行動) | 記事下バナーのクリック率 |
| OKR | 目標と主要な結果 | 挑戦的な目標と達成水準 | (目標)業界で信頼される比較検討サイトを目指す/(主な結果)指名検索数、被リンク獲得数、重要記事の読了率の向上 |
【4】Web改善でKPIを設計する手順
ここからは、実際にKPI候補を探る手順に入ります。最初にKGIが決まり、そこから流入・行動・CVに分解し、最後にGA4やサーチコンソールで測れる指標だけを残す。この順番で進めると、設計の抜け漏れが出にくくなります。
まずWebサイトのKGIを決める
すべての設計の基点はKGIです。サイトの目的が「商品の購入」なのか「問い合わせの獲得」なのか、あるいは「認知の拡大」なのかを明確にします。ここがブレると、その後のプロセス全体が形骸化します。まずは、そのサイトがビジネスにおいて果たすべき最終的な役割を、定量的かつ期限付きの数字で定義するところから始めます。
基本的にここは経営企画や事業部などから降りてくることが多い部分になります。
流入・行動・CVに分解する
次に、ユーザーがサイトを訪れてからゴールに到達するまでのプロセスを「流入(どこから来るか)」「行動(サイト内で何をするか)」「CV(成果)」の3段階に分解します。
- 流入: 自然検索、広告、SNSなどのチャネル別セッション
- 行動: 特定ページの閲覧、サイト内回遊、クリック
- CV: フォーム到達、完了、サンクスページ閲覧
このようにファネルの形で分解することで、どこにボトルネックが隠れているかを探りやすくなります。
3CやSWOTでKSFを見つける
サイトの構造を分解したら、3C分析(市場・競合・自社)などのフレームワークを活用して、成果を左右するKSFを見つけます。3C分析を使うなら、市場では「ユーザーが何を比較しているか」、競合では「どの導線でCVを取っているか」、自社では「強く訴求できる価値は何か」を確認します。
たとえば競合が料金比較ページからCVを取っていて、自社にはサービス説明記事しかない場合、KSFは「比較検討中のユーザーに必要な情報を出すこと」になります。このKSFをKPIに落とすなら、比較ページの閲覧数やCTAクリック率が候補になります。
GA4やGSCで測れる指標を出す
追いたい指標が見えてきたら、GA4(Googleアナリティクス4)やGSC(Googleサーチコンソール)で実際に計測可能な指標に置き換えます。
- 検索意図のズレを確認したい: GSCの平均掲載順位やCTR(クリック率)
- 記事の読まれ方を確認したい: GA4のエンゲージメント時間やスクロール数
- フォームの使い勝手を見たい: GA4のフォーム完了率やエラー発生数(※送信完了やエラー表示をイベントとして計測できる設定が必要)
計測ツールのどの項目を見ればいいのかを紐付けることで、実務が動き出します。
【関連記事|B01】GA4で“何を見るべきか”を構造から理解する分析フレーム
そのKPIを本当に測れるかどうか確認する
KPIを決めたあとで「その数字、実は取れていません」と分かると、設計が一気に止まります。フォーム完了率を見るなら、送信完了イベントが取れているか。CTAクリック率を見るなら、クリックイベントが発火しているか。ブラウザのセキュリティ設定やCookieの制限、タグの設置状況によっても計測値はズレます。先に確認しておきたいところです。
特にGA4に最初からはいっていないような数値を取りたい場合は先に設定を済ませておかないと、設定後の数値しか取れず前後比較などができなくなってしまうので注意が必要です。
主要KPIと補助指標を分ける
すべての数字を均等に追おうとすると、結局何が重要かわからなくなります。最も重要で改善行動に直結する主要KPIは、チームが日常的に判断できる数まで絞り込むのが現実的です。その数字が動いた理由を深掘りするための補助指標は別に用意しておくと、数字が増えすぎても判断がぶれにくくなります。
先行指標と遅行指標を組み合わせる
「売上」のような結果として現れる遅行指標だけでなく、その前兆となる先行指標を組み合わせるのがコツです。問い合わせ数が増えるまで待つと、判断が遅れます。その前段階の資料請求数やフォーム到達数を見ておけば、CVが落ちる前に導線や訴求を見直せます。
KPIにしない指標も決めておく
毎月のレポートに20項目も並ぶと、結局どの数字で判断するのかがぼやけます。今月はフォーム完了率を主要KPIにするなら、平均滞在時間やPVは補助的に見る程度に留める。そう決めておくほうが、会議で話が散らばりにくくなります。追わない指標まで決めておくことも、設計の一部です。
SMARTでKPIの質を確認する
選んだKPIが適切かどうかは、「SMART」の法則でセルフチェックします。
- Specific: 具体的か
- Measurable: 測定可能か
- Achievable: 達成可能か
- Relevant: KGIに関連しているか
- Time-bound: 期限があるか
特に注意したいのは、「何を数えるのか」が人によってズレる指標です。同じ「問い合わせ」でも、フォーム送信だけなのか、電話も含めるのかで数字は変わります。KPIにする前に、定義は現場で共有しておきます。
改善行動につながるKPIを残す
最後のフィルターは「その数字が変わったとき、具体的に何を直すかが決まっているか」です。CTAクリック率が低ければ「CTAの位置や訴求文、前後の導線を見直す」、フォーム完了率が低ければ「入力項目の数やエラー表示の分かりやすさを確認する」。改善アクションとセットになっている指標だけを、最終的なKPIとして残します。
KPI候補を出したら、次のチェックリストで採用可否を確認してみてください。主要KPIにする指標ほど、これらを高い水準で満たしている必要があります。
| チェック項目 | 内容 | 判断基準 |
|---|---|---|
| KGI関連性 | 最終目標の達成に貢献するか | その数字が上がればKGIも上がるか |
| 改善可能性 | 現場の施策で動かせる数字か | 自社の施策で変化を期待できるか |
| 測定可能性 | 正確に計測できるか | GA4などで計測手法が確立されているか |
| 先行指標 | 未来の予測に役立つか | 遅行指標より早い段階で変化を察知できるか |
| SMART適合 | 指標の定義が明確か | 誰が見ても解釈が同じになるか |
【5】サイト別にKPI設計の例を見る
KPI設計の具体的な内容は、Webサイトの役割やビジネスモデルによって大きく異なります。「PV」や「CVR」をすべてのサイトで同じ重要度で追うのではなく、自社サイトがユーザーの意思決定プロセスのどこを担っているかに合わせて、指標を選んでいく必要があります。
問い合わせサイトはCV前の「壁」を見る
問い合わせサイトでよくあるのは、問い合わせ数だけを見て「集客が足りない」と判断してしまうケースです。実際には、フォームまでは来ているのに入力途中で離脱している場合もあります。
そのため、「問い合わせフォームへの遷移率」や「フォームの入力完了率」を主要KPIに設定します。フォームまでは来ているのに完了率が低いなら、入力項目が多すぎる、エラー表示が不親切といった具体的な課題が見えてきます。サイトの問題が「集客」にあるのか「フォーム」にあるのかを切り分けることが、設計の肝になります。
SEOメディアは流入後の「読後行動」を見る
SEOを軸としたオウンドメディアでは、アクセスが増えてもユーザーが記事を読んでそのまま離脱してしまっては、ビジネス上の成果にはつながりません。流入数だけでなく、その後の行動をKPIに設計します。
GSCでは、狙った検索クエリでクリックされているかを確認します。GA4では、記事を読んだあとにCTAをクリックしているか、関連ページへ進んでいるかを見ます。「特定の重要記事への回遊率」と「CTAボタンのクリック率」を組み合わせることで、流入の質と読後行動を同時に把握できます。
ECサイトは売上の構成要素を分解する
ECサイトの場合、KGIである売上を構成する要素が多いため、購入に至るまでのステップを細かく分解したKPI設計が求められます。「売れたかどうか」だけでなく、新規購入、客単価、リピートのサイクルが健全に回っているかを確認する必要があります。
「カート投入率」「購入完了率」に加え、「平均注文単価」や「リピート率」を分けて見ていくのが一般的です。売上が落ちた原因が「カゴ落ち」にあるのか「リピート客の減少」にあるのかを切り分けることで、打つべき施策が変わってきます。
サイトの「役割」で主要KPIは変わる
このように、サイトの目的によって見るべき数字の優先順位は入れ替わります。共通して言えるのは、自分たちがコントロールできる「行動」に紐付いた指標をメインに据えるということです。
自社サイトが、ユーザーに「まずは知ってもらう場所(認知)」なのか、「比較検討してもらう場所(理解)」なのか、「その場で決断してもらう場所(獲得)」なのか。その役割を確認するだけで、レポートに並べるべき数字はかなり絞られます。
改善フェーズで優先KPIを変える
KPIを見直すタイミングは、サイトの状態が変わったときです。たとえば流入は増えているのに問い合わせが増えないなら、次に見るべき数字は検索順位ではなく、CTAクリック率やフォーム完了率です。「今は何を最優先で解決すべき時期か」をチームで合意しながら、KPIを柔軟に切り替えていくことが、形骸化を防ぐことにつながります。(ただし、流入の質がかわっていないかどうかの確認は必要です)
- 立ち上げ期: まずは計測環境を整え、インデックス状況や検索結果での表示回数、初期の流入が発生しているかを確認します。
- 流入獲得期: コンテンツを増やしながら、自然検索流入数や重要クエリの掲載順位の推移を注視します。
- CV改善期: 一定のアクセスが集まってきたら、CTAクリック率やフォーム完了率など、CV前のボトルネックを示す指標へ重点を移します。
以下に、サイト種別ごとのKPI設計例をまとめました。
| サイト種別 | KGI(最終目標) | 主要KPI | 補助指標 | 確認ツール |
|---|---|---|---|---|
| 問い合わせサイト | 問い合わせ数 | フォーム完了率 | フォーム遷移率・エラー発生数 | GA4 |
| SEOメディア | 資料請求・成約 | CTAクリック率 | 自然検索流入数・エンゲージメント時間 | GA4 / GSC |
| ECサイト | 売上高 | 購入完了率 | カゴ落ち率・客単価・リピート率 | GA4 / CRM |
| 採用サイト | 応募者数 | 募集要項閲覧率 | 1訪問あたりの閲覧ページ数・離脱率 | GA4 |
【6】KPI設計を次の改善に進める
KPIは、決めただけでは改善に使えません。設計した指標をKPIツリーに整理し、目標値と担当を決め、定期的に振り返るところまで進めて初めて運用に乗ります。
KPIツリーで指標の関係を見える化する
設計した各指標をバラバラに管理するのではなく、KPIツリーとして構造化しておきます。KGIを頂点にして、それを構成する要素をツリー状に並べることで、「どの指標がどこに影響を与えているか」が見えやすくなります。
「記事のCTRを上げることが、最終的にどう成約に貢献するのか」。そのつながりが一目でわかると、施策の優先順位をつけるときの迷いが減り、チーム全員が同じ根拠で動けるようになります。
主要KPIを選ぶ判断基準を確認する
ツリーを作ると追うべき数字がいくつも出てきますが、その中からリソースを集中させる主要KPIを選び抜く必要があります。
判断基準は、KGIへの近さ、改善のしやすさ、計測のしやすさ、そして運用が回るかどうかです。候補を出したあとに、今のサイトにとって最もボトルネックになっている場所はどこか、という視点で絞り込みます。詳しい選び方については、別の記事「KPI指標の選び方」で整理しています。
【深掘り記事|A02-02】KPI指標を選ぶための実務ガイド
KPI設定で目標値と担当を決める
追うべき指標が決まったら、次は「KPI設定」へと進みます。「いつまでに」「どの数字を」達成するのか、具体的な目標値を割り振っていきます。
目標値は、現場の担当者が「工夫すれば届きそうだ」と思える現実的なラインに設定します。また、指標ごとに「誰がその数字の責任を持つのか」を決めておくことで、改善活動が「誰かがやるだろう」という曖昧な状態になるのを防げます。
週次・月次でKPIを形骸化させない
KPIが最も陥りやすい罠は、レポートを作るためだけの数字になることです。これを防ぐには、定期的に数字を振り返り、施策を修正するルーティンを作ります。
- 週次: 異常値がないか、施策の初速はどうかをクイックに確認する
- 月次: 目標に対する進捗を評価し、翌月の重点施策を決める
振り返りでは、責任者探しよりも確認する順番を決めておくほうが役立ちます。「流入が減ったのか」「CTAが押されていないのか」「フォームで止まったのか」。この順番で見ていけば、次に試す施策を決めやすくなります。
KPI設計から課題抽出へつなげる
KPIが悪化したら、まず「どの工程で落ちたのか」を確認します。CVRが下がったなら、流入の質、CTAクリック、フォーム到達、フォーム完了の順に見ていくと、原因を切り分けやすくなります。
GA4でユーザーの動きを追い、GSCで流入クエリの変化を読み解く。KPI設計という土台があるからこそ、こうした分析が意味を持ちます。原因を論理的に切り分けられるようになると、次の改善施策を根拠を持って選びやすくなります。
【深掘り記事|A02-03】KPI設定を精度高く行うためのステップ設計
【関連記事|C01】Web課題を“迷わず抽出”できる構造と判断基準の全体ガイド
編集後記
KPI設計の話をすると、「指標が多すぎて何を見ればいいかわからない」という声をよく聞きます。データが増えた分だけ、判断が難しくなっている。そんな状況が、GA4移行前後あたりから特に増えた印象があります。
個人的に感じているのは、KPI設計でつまずく原因の多くは、指標の選び方より先に「KGIが現場に共有されていない」ことにあるということです。KPIだけが降りてきて、なぜその数字を追うのかの文脈がない。そうなると、数字を動かすことが目的になりやすく、サイトの本質的な改善からズレていきます。
Webサイトの改善に長く関わってきて思うのは、KPI設計はチームの「共通言語」を作る作業だということです。何を見るかが揃っていると、会議での議論が「数字の読み合い」から「次の施策の判断」に変わります。その変化は、思っているより早く現れます。
この記事が、そのきっかけのひとつになれば幸いです。
参照・参考サイト
Google Search Console ヘルプ・表示回数、掲載順位、クリック数とは
https://support.google.com/webmasters/answer/7042828?hl=ja
Google アナリティクス ヘルプ・エンゲージメント: 定義
https://support.google.com/analytics/answer/9355853?hl=ja
Salesforce・KSFとは?KGI・KPIとの関係と具体例、設定方法を解説
https://www.salesforce.com/jp/blog/jp-what-is-key-success-factor/
Google re:Work・目標の設定
https://rework.withgoogle.com/intl/jp/subjects/goal-setting
マネーフォワード クラウド・KPIツリーとは?KGIとの違いや作り方、具体例、活用方法を解説
https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/71943/
GLOBIS知見録・成功する目標設定5つのポイント「SMARTの法則」とは?
https://globis.jp/article/659/


コメント